【警察の実力2016】(21) パトカーから拳銃まで…装備品の知られざる“お値段”

日々の警察活動は、マンパワーのみならず、民間企業の製品によっても支えられている。パトカーを始め、警察の装備品を見る機会は多いが、その価格が明らかになることは少ない。

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年間予算3.7兆円の大半が人件費に消えるとはいえ、装備品等、警察の周辺市場には多くの民間企業が関わっている。その対象は、ハードからソフトまで実に多岐に亘る。また、名を連ねる企業も、国内外の巨大企業から中小のローカル企業まで様々だ(右図)。先ず、警察の装備で真っ先に思い浮かぶであろうパトカーや白バイには、大手自動車とバイクメーカーがズラリ。ヘリコプターや船舶といった大きな“お買い物”も、また然りだ。同じく、警察が繁華街等に設置する防犯カメラも、『パナソニック』を始めとする大手電機メーカー製だ。片や、拳銃等火器で登場する企業は、輸入を得意とする商社に加えて、マニアしか知らないような国内外の専門メーカーばかりとなっている。そして、地元ゼネコンが請け負うことの多い警察署の建設工事を始め、制服・手錠・警棒等は、その都道府県警のお膝元にある中小のローカル企業が活躍する。よく利用する地元のガソリンスタンドが、最寄り警察署のパトカーの給油を一手に引き受けている…なんてこともある。サービス業の代表格としては、2006年からスタートした駐車違反取り締まりの民間委託(駐車監視員)。その多くは、警備会社が請け負っている。“買い物”の内容に応じて、財布が2つに分けられているのも警察の特徴だ。警察車両等の“大物は警察庁(国費)。一方、制服や手錠等は都道府県(県費)が購入するのが基本だ。続いて、個々の装備品を詳しく見てみよう。

今年3月、警視庁のパトカーに新たな“顔”がお目見えした。『日産自動車』のスーパーカー『フェアレディZ』の最新バージョン『NISMO(ニスモ)』だ。高速隊等に3台が配備され、交通取り締まりや警視庁のイベントに当たる。ツーシーターの為、捕まえた違反者を後部座席に乗せることさえできないが、排気量3700㏄を誇るこの車に追尾されれば、逃げる気力も湧かないだろう。気になるお値段は1台当たり約585万円と、こちらもスーパーだ。Z以外にも、全国の警察で活躍するスーパーカーは存在する。同じく日産からは、埼玉県警等に配備される『スカイラインGT-R』。警視庁におけるZの前任は、『マツダ』の『RX-8』だった。また、『ホンダ』は『NSX』を栃木県警に寄贈している。但し、スーパーカーの警察車両は何れもレアな存在。国費購入されることもあるが、その多くは各地方警察が自前で購入したものだからだ。国費で購入されるパトカーの自動車メーカーは、スーパーカーとは打って変わり、一時期を除いて『トヨタ自動車』の独壇場となっている。その車種は『クラウン』。自動警邏隊等に配備され、多い年で数百台が発注される為、街中で最も目にするパトカーの代名詞的存在となっている。警察庁は、昨年度だけで380台を購入。1台当たりの価格は約290万円だ。大量購入の為、相場よりも割安となっている。現行型は、2010年から配備されている200系クラウンだが、トヨタは今年4月、210系のパトカー生産を発表した。新型が街中に溢れる日は近いかもしれない。この“クラウン1強”であるパトカー市場に2012年、突如として割って入ったのが、『富士重工業(スバル)』の『レガシィ』だ。パトカーの発注書には細かい仕様書が付いており、様々な制限がかけられている。例えば、トランクの大きさやシートの素材、そして排気量等だ。クラウンには“パトカーグレード”というモデルがある為に問題はないが、他のメーカーには大きな参入障壁となっていた。その仕様書が変更となり、レガシィが躍り出たという訳だ。ターボエンジンを積んだパトカーとして話題を呼んだが、それも束の間。2014年10月発売の現行モデルでは納入実績が無い。「ターボエンジンが不可になったこと」(警察関係者)等、再び仕様書が変更されたことが要因だ。続いて、捜査用覆面パトカーの変わり種と言えば、『スズキ』の『キザシ』だ。「民間市場で売れず、大幅値引きをして警察に大量に売り込んだ。その結果、“キザシ=警察”のイメージが定着し、『覆面の意味が無い』と揶揄されている」とは自動車業界関係者の弁だ。

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一方、パトカーと並ぶ警察車両の代表格である白バイは、嘗ては“ナナハン”(排気量750㏄)が主流だったが、近年は1000㏄以上のバイクが席巻中だ。白バイにおけるクラウンに当たる存在は、ホンダの『CB1300P』。警察庁は、昨年度だけで350台を発注している(1台当たり約140万円)。逆に、配備数は未だ少ないものの、一般ライダーにも人気が高いのは、『ヤマハ発動機』の『FJR1300P』だ。警察には、汎用的なパトカーだけでなく、特殊な状況を想定した車両も多い。その多くは、市販車を改造したものだ。この内、テレビニュース等で目にすることも多いのが護送車だ。警察庁は昨年度、中型67台を購入。これは、旅館等でよく使われる日産のマイクロバス『シビリアン』をベースにしており、1台当たり約680万円だ。そんな特殊車両よりも高額な“乗り物”がある。ヘリコプターと船舶だ。ヘリコプターのほうは海外勢が強く、警視庁が2014年に購入した機体『おおとり5号』も、フランスの『ユーロコプター』(現在の『エアバスヘリコプターズ』)製。その価格は約11億7500万円に上る。続いて、近海警備を主とする警察が保有する船舶は、全長8~23mに限られている。価格は12m級の場合、『コマツ』製エンジンを含めて約5300万円(『田中造船』製)だ。逆に、安価な乗り物と言えば、交番でお馴染みの自転車。『ブリヂストン』製のもので1台4万円程度だ。最後に、警察官の“三種の神器”とされる拳銃・手錠・警察手帳の内、国費で賄われる拳銃を見てみよう。嘗て、警察御用達と言えば『ニューナンブM60』(『ミネベア』製)だったが、その後継が『S&W』の『M360J』(通称“SAKURA”)だ。S&WのM360拳銃を日本の警察向けに改造し、一部の部品をミネベアが作っているとされる。価格は非公表だが、1丁当たり数万円と推測されている。パトカーや装備品等は、全て入札を通じて購入される為、決して常識外れの価格という訳ではない。だが、発注量が多く、安定した美味しいビジネスであることは間違いないと言える。

■「必要は発明の母」…“自作”装備も大活躍
警察官が使う装備は、全てが支給品で賄われる訳ではない。「制服に付ける小物入れ等、100円ショップで購入する警察官も多い。特に、女性警察官のアイデアには感心する」と現役警察官。そんなアイデア装備を顕彰するのが、警察庁の『警察装備資機材開発改善コンクール』。2012年の最高賞は、宮崎県警の『ガラスクラッシヤー改良型警棒』だ。交通事故での救出活動等、車のドアガラスを破る事案は多い。だが、従来のガラスクラッシャー付き警棒は、底蓋に埋め込まれたピンを引き出して、ドアガラスを“突き破る”仕様だった。ところが、ある事案の際、突き破ったガラスで腕を切る怪我が発生。そこで生まれたのが、この改良型。山型加工で全方向にクラッシャー機能を持たせ、ピンを引き出す手間も無く、横からの“振る”動作で安全に使える優れものだ。 =おわり

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重石岳史・田島靖久・宮原啓彰/フリーライター 秋山謙一郎が担当しました。

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前職の新聞記者時代、最初に名刺交換した相手は警察官でした。多くの新人記者は先ず地方支局へ配属され、“サツ回り”と呼ばれる警察担当を経験します。私の場合、最初に広島県へ赴任し、担当する警察署の副署長に挨拶しました。これが相当の“堅物”で、碌な会話もできずに、初日から暗澹たる気分になったのを覚えています。しかしその後、堅物だけでなく、様々な警察官に出会いました。例えば、元セールスマンで口達者な生活安全課長や、新聞は英字紙しか読まない変わり種の刑事もいました。巨大組織の中に生きる警察官も、個性や感情を持った人間です。そんな彼らの一面が、今回の特集で少しでも伝われば幸いです。(本誌 重石岳史)

蝉が鳴き始めるこの時季になると、いつも思い出します。駆け出しの新聞記者時代、初任地で遭遇した首長の汚職事件。昼間、高校野球の取材を終え、毎晩、捜査の進展を探る為に、警察幹部宅の夜回りを繰り返しました。しかし、相手は百戦錬磨。逮捕間近とされた微妙な時期にいくら質問をぶつけても、禅問答が延々と続くのです。昼間は日の光を目一杯浴び、夜中は幹事社として発生事件の連絡でほぼ眠れず、心身共にクタクタになりました。ところが、一月ほど経ち、微妙に物言いが変わったり、違う反応が返ってくることに気付きました。最後までズバリの情報は取れませんでしたが、あの日々を通して取材とは何かを学びました。今でも私の原点です。 (本誌編集長 田中博)


キャプチャ  2016年7月30日号掲載

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テーマ : 警察
ジャンル : 政治・経済

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