【経済の現場2016・農業再生】(04) 所得アップ、工夫次第

20161209 02
北海道帯広市から車で北上すること約1時間。一面の銀世界となった士幌町の『山岸牧場』では、最先端の人工知能(AI)を活用した次世代の酪農経営が行われている。飼育する乳牛の内、200頭の首に専用端末がかけられている。餌を食べる動きや、休息といった活動情報を、24時間いつでも収集する。大きさは手の平ほど。身に着けて使う“牛のウェアラブル端末”だ。サービスを提供するのは、ITべンチャー企業の『ファームノート』(同市)。牛の活動情報を、外部のデータセンターである“クラウド”に集め、AIが分析する。AIが「牛が発情している」と判断すれば、牧場スタッフのスマートフォンに通知される。タイミング良く人工授精を行うことができる利点がある。牛は、妊娠して子牛を産むことで牛乳が出る。繁殖成績が良いか悪いかは酪農経営を左右するだけに、経営者の山岸拓さん(34)は「牛の“発情”の見逃しが減り、生産性が上がった」と話す。日本の農業は効率の悪さが指摘されてきたが、こうした弱点を克服しようという取り組みが進む。

午前2時の那覇空港。新鮮な魚介類や果物等を積んだ貨物便が到着すると、ターミナルは俄かに慌ただしくなる。隣接する貨物ビルの冷蔵室では、青森のサンマやホタテ、鹿児島のハマチ等が国際便のコンテナに仕分けされる。数時間後には、香港やシンガポールの飲食店・小売店に届けられる。『ANAホールディングス』傘下の『ANAカーゴ』と『ヤマト運輸』が取り組む『国際クール宅急便』だ。船便より運送コストは高くなるが、アジアの富裕層の間で鮮度の高さが評判を呼んだ。今年上半期の取扱量は、前年同期と比べて約3倍という。ANAカーゴの担当部長・桑田保広さん(52)は、「優れた品質に“鮮度”という付加価値を付ければ、高くても買い手は付く」と話す。政府が纏めた『農業競争力強化プログラム』を貫くテーマは、「農家の所得を如何に上げるか?」にある。付加価値を高め、海外の需要を上手く取り込むことが重要になる。福井県鯖江市のコメ農家・牧野仙以知さん(59)は、食品加工会社『マイセンファインフード』も経営し、玄米パン等を製造・販売している。加工用米は、そのまま売れば1㎏当たり120円程度だが、玄米パンにすれば1斤700円になる。牧野さんは、「最初は『誰が買うんだ?』と言われたが、売れ行きは良く、品薄状態だ」と語る。農林水産省によると、2011年の国内消費向けの農林水産物は、輸入も含めて10.5兆円だが、消費者が小売店や外食等で支払った食べ物関連の消費は、7倍超の76.3兆円に達する。農家自ら農産物を加工して付加価値を付け、販売する農業の“6次産業化”は、農家の所得向上の切り札として期待されている。牧野さんは、「起業家マインドを持てば、農家の所得は上がる」と確信する。日本の農業を成長産業に転換する道程は険しい。それでも、やり方次第で“稼げる”産業になる。 =おわり

               ◇

小川直樹・蔵本早織・松本健太朗・黒木健太朗が担当しました。


⦿読売新聞 2016年12月5日付掲載⦿
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