【霞が関2016秋】(21) 所得税改革置き去りか…唐突なパート優遇案

財務省が数年がかりで準備してきた所得税の抜本改革は、なし崩し的に棚上げされる懸念が日増しに強まっている。政府・与党は、来年度税制改正でパート主婦優遇を拡充する案を示すが、元々の改革の理念と逆行しかねない。「納税者の利害が絡み合う所得税を見直すならば、春先から年末までじっくり時間をかけた国民的な議論が必要ではなかろうか」――。今夏、財務省幹部たちにそう尋ねると、必ず「A案・B案・C案と3つの選択肢を示し、十分議論してきた訳だから問題ない」という答えが返ってきた。選択肢を示したのは、『政府税制調査会』(安倍晋三首相の諮問機関)が昨年11月に纏めた報告書。専業主婦世帯の所得税を軽くする配偶者控除を無くす場合の選択肢を3つ並べた。「支持する委員が多かった」(財務省主税局幹部)というC案が、専業主婦であろうと共働きであろうと、結婚世帯を税で支援する“夫婦控除”という新たなアイデアだった。今や少数派の専業主婦優遇を終わらせる配偶者控除の見直しは、時代に合わなくなった所得税をゼロから改革する第一歩の役割を帯びていた。配偶者控除に続く課題は幅広い。例えば、雇用関係でなく、事業契約を結ぶ形で企業の仕事を継続して請け負う人と会社員を、税制上、如何に公平に扱うか。高齢者を優遇する仕組みは、どこまで適当か。財務省は、政府税調の報告書で今の税制に対する問題意識を示し、徹底的な改革に取りかかろうとしていた。

ところが、政府・与党の来年度税制の論議が始まるか始まらないかという先月初めの段階で、夫婦控除の構想は早々、撤回に追い込まれた。専業主婦の反発を恐れる与党や首相官邸が、慎重姿勢を崩さなかった為だ。政府税調が議論を積み重ねて辿り着いた夫婦控除に代わる案を、直ぐに編み出せる訳はない。とはいえ、政府の看板政策である働き方改革と配偶者控除の見直しを絡めて宣伝した手前、何らかの代替案は欠かせない。窮余の策として浮かんだのが、配偶者控除を実質的に拡充する手だ。現在、夫が配偶者控除を受けるには、妻の年収が103万円以下であることが条件。妻がパートに出ても、夫の配偶者控除を意識して就労を抑える場合があり、“103万円の壁”と呼ばれる。政府・与党が最終調整しているのは、103万円という年収の条件を150万円に引き上げる案だ。確かに、壁を引き上げれば、夫の税金を変えないよう配慮しているパート主婦が働ける時間は増える。しかし、「専業主婦という古い家族像を前提にした数字合わせ」という批判は免れない。しかも、“150万円の壁”を新設すると、フルタイム勤務でなく、月12万円程度に収まるパート労働を促すかのようだ。就労の形態に中立という所得税改革の基本と相容れず、改革のストーリーはぼやける。配偶者控除を拡充するというアイデアは、政府税調の3案とは異なり、「しっかり議論した」という財務省の説明は既に論拠を失った。「家族観に関わる税制の変更が唐突に出てきた」と感じる人は多い。宮沢洋一会長ら自民党税制調査会幹部は、“所得税の抜本改革”を尚も唱えるが、与党税制改正大綱が決まる来月8日まで残された時間は短い。 (上杉素直) =おわり


⦿日本経済新聞電子版 2016年11月29日付掲載⦿
スポンサーサイト

テーマ : 政治のニュース
ジャンル : ニュース

轮廓

George Clooney

Author:George Clooney

最新文章
档案
分类
计数器
排名

FC2Blog Ranking

广告
搜索
RSS链接
链接
QR码
QR