実録・“ヤクザの子”として生まれて――暴排条例施行下で生活するヤクザの子供たち

暴排条例施行以降、ヤクザに対する締め付けは強まるばかりだ。その影響は家族にも及び、親がヤクザというだけで不利益を被るケースも多いという。今、ヤクザの家族はどんな状況に置かれているのか。2人の当事者を直撃した。 (取材・文/フリージャーナリスト 鈴木智彦)

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ヤクザも人の親である。その息子・娘だって人の子だ。両者の間にある特殊な事情は、“父親がヤクザ”という点だけである。親は親、子は子であり、過去、愚連隊の有名人の息子が検事になったり、ヤクザの息子が教師になったりした例は、枚挙に暇が無い。最近の警察は「二親等の血族に現役暴力団員がいると合格できない」としているらしいが、どうみても差別に他ならない。とはいっても、現実は理想論で動かない。正確に記すならケースバイケースである。暴力の信奉者らしく、親であるヤクザが学校に乗り込み、当人にその自覚は無くても、教師を恫喝する例だってある。ヤクザの自己申告は極めて自身に都合よく湾曲していて、マスコミは実例を確かめずに、ヤクザとその家族の人権を、まるで鬼の首を取ったかのように叫びがちだ。左翼とヤクザは、“敵の敵は味方”という論理によって融合し易い。極端な例を全てと思うのは危険だろう。

最初に取り上げるのは、西日本に住むヤクザの息子である。19歳になった今は、強盗致傷で少年院に収容されている。この青年と知り合ったのは中学生の頃だった。「人間、馬鹿が最高。好きな漫画は“浦安鉄筋家族”。夏休みになったら、海パン一丁で学校に行きたい」。子供らしさが存分に残った笑顔は、本当にどこにでもいる中学生といった風情だった。高校受験を控えた頃、彼と“ヤクザの子供として生まれ、生きること”について語り合ったことがある。煙草を吸い、酒を飲みながらの取材になったのは、父親であるヤクザ組織幹部から「学校でやるくらいならうちの中だけでやれ」と叱られ、家庭の教育方針に口を挟めなかったからだ。「特段、どうということはないですよ。周りも知っているし、先生もわかっている。刺青を見てもどうも思わない。苛められたことも無いし、うちのお父さんがヤクザだなんて威張り散らしたら馬鹿です」。目の前の酒と煙草を除けば、言っていることは大層真面だった。が、話しているうちに、ヤクザの常識が彼の中にそのまま根付いていることに気付かされた。「やられたらやり返さなきゃ舐められる」。その後、彼は地元の工業高校に入学し、1年余りで中退した。退学後も、彼とは時々会った。実父である父親に会う度に、彼が今、何をしているか尋ね、食事の際は同席してもらうよう頼んだ。母親は看護師で、堅い仕事である。ヤクザの姉さんチックな華美さは無く、腰も低いし、社会性もある。ただ、籍は抜いてある。暴排条例以降、行政がヤクザの家族に対して補助や手当を出せなくなったからだという。息子は、そんな両親の気苦労を知らないというより、意識していないようだった。「アニメの仕事に就きたいんです。主題歌とか好きなので」。相変わらず呑気な夢を語っていた。「ならば、東京に来たらウチに泊まってくれ」と申し出ても、彼は一向に上京しなかった。そして、彼との交流は寸断された。先程、“強盗致傷”と書いたが、これは俗にいう“カツアゲ”のことだ。街を歩いているオヤジに因縁を付け、殴ってカネを奪って捕まった。ヤンキー・不良漫画でよくあるこの行為は、今の世の中で決して許されない悪行であり、その代償は大きい。「俺が若い頃なら、こんなもん事件にもならなかった」。父親の感覚を“暴力に毒されている異常者”と断じるのは、正直、適切なのか悩む。逮捕されたことを知って、こちらはもっと面食らった。両親は、明らかに普通の教育をしているとしか思えなかったし、大人しく素直で、優しい子供というイメージしか無かったからだ。ただ、思い返せば引っかかることは多々あった。「クラスメイトが喧嘩をふっかけてくるなんて無いです。そんな馬鹿はいないですよ」。さらっと流してしまった台詞の中に、ヤクザの息子だけが持つ優越感が存在していたのに、先入観と見かけで欺かれたのだ。父親は「アイツにヤクザをやる根性など無い」と一刀両断するが、その見立てには頷けない。息子の言動は、一般的なガキの頃のヤンチャな思い出を遥かに超越している。

次に取り上げるヤクザの娘は、関西にある某都市の指定暴力団幹部の娘である。30歳を越えているが、彼女も中学生時代からの仲で、取材を契機に家族ぐるみで付き合いをしている希有な例だ。彼女の子供時代は、ぎりぎりヤクザと堅気の牧歌的状況が残っていて、暴排条例等で家族が不利益な扱いを受けることは無かったという。それでも彼女を選んだのは、気安い仲という理由の他に、結婚して子供を産み、離婚して実家に出戻ってきているからだ。子供――ヤクザの孫は、親分の家から小学校に通っている。2世代に亘ってヤクザの家族を実体験している。「『ヤクザの娘や…』とは言われる。『だから何?』しかない。そんなこと言い出したら、親の仕事は彼是ある。泥棒の息子もいれば、詐欺師の娘だっておる」。彼女の言い分も、極めて真っ当である。「うちのパパのこと、よう知っとるやろ? ヤクザの子供やからどうこうある訳ないの、アンタが一番知っとるやろ?」。離婚してからは、近所の歯科医で働いているという。「親の紹介で仕事するほどアホちゃう。マスコミはほんまアホや。極道の妻いうても普通やのに、あの映画のせいで、娘の私までいらんこと言われるようになったわ」。実際、彼女の父親はパッと見、ヤクザには思えない物腰だ。漫画に出てくるコテコテの大阪ヤクザを想像していると面食らうだろう。「先生にパパの仕事は…“会社役員”言うてた。わかっていると思うけど、実際、当時はヤクザも会社経営していたし、モンスターペアレンツのようなことは無いよ」。ならば、彼女の娘はどうなのか? 「今時の学校…この辺じゃそんなことで彼是ないわ。暴排条例? ヤクザを笠に着ているから言われるんちゃう? 抑々、ヤクザの子供やったら、ヤクザのいいことも悪いことも皆わかってんねん。ヤクザに夢持つのは堅気の子やし、パパの事務所の子(若い衆)は娘に彼是してくれるけど、『ヤクザはヤクザや』とわかっとるわ」。そう言いながら、彼女の元亭主は父親の若い衆だ。ヤクザの嫌な部分をわかっていながら、彼女はヤクザと結婚し、子供を産んだ。「愛した男が極道だった」という極妻の台詞が脳裏に浮かぶ。“朱に染まれば赤くなる”という部分は無いのだろうか。「それはわからん。誰だって『自分はノーマル』思っているんちゃうん? 同じ境遇で同じ体験をしても、『ヤクザの子供は差別される』とか『大変な目に遭う』と決め付けていればそう感じるし、何ともないと思っていればそうちゃうの?」。この手の記事は、先ず結論ありきで取材が進む。「ヤクザの家族も差別されている」という企画意図なら、それに合った実例を嵌め込むのが定番である。逆張りをした訳ではないが、実在しているので嘘は書けない。但し、全て本音で喋っているかについては疑問である。

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■「暴排以前は子供にとってもいい時代だった」…ヤクザになったヤクザの息子が語る
現在は飲食店経営で、親がヤクザだったという元暴力団員のU氏(49)が、当時を振り返り、語ってくれた。「自分が実の父親に初めて会ったのは、3~4歳くらいの時だったと思います。親父が刑務所に入っていたからです(笑)。親父の出所後、一緒に生活を始めるのですが、まぁ面白い人でしたよ。『皿に水入れて駐車場まで持って来い』とか、今思えば完全にシャブですからね(笑)。そんなこんなで、中学生に上がる時でしたかね。両親が離婚して、母親が再婚したんです。その相手もヤクザだった。ですが、自分には優しく、ラジコンやら当時は結構高価だった物も買ってもらっていましたね。この時期ぐらいから私もドンドン不良になっていくんですが、いきなり親父に『ちょっと兄弟の事務所に遊びに行こう』と言われて、完全に騙されましたよ(笑)。そのまま部屋住み突入です。オヤジ(組長)から『ウチで鍛えるから』とね。今思えば、『このままだと碌な人間にならない』と思った末の愛情だったと感じます。現在は堅気ですが、色々な親分や兄弟分に出会えて、親父には感謝しています。まぁ、俺らの時代は“ヤクザの息子”ってだけで利点も多かったんじゃないかなと思います」。 (聞き手/本誌編集部)


キャプチャ  2016年12月号掲載

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