【真珠湾攻撃・75年後の和解】(上) 日米が紡ぐ平和の絆

旧日本軍によるハワイの真珠湾攻撃から、明日で75年。安倍晋三首相は今月下旬、現役の首相として初めて、慰霊の為に真珠湾を訪問する。敵として対峙し、戦後は一転、同盟国として強固な関係を築いてきた日米両国が、新たな未来を紡ぐ節目となる。平和への歩みを積み重ねてきた日本とアメリカ。その狭間で歩んできた人々の思いを、3回に亘って伝える。

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「戦後70年談話にも込めたが、日米の“真の和解”と、今後の日米関係を考える機会にしたい」――。真珠湾訪問を発表した直後の一昨日夜、安倍は自民党幹事長・二階俊博らとの会食で、高揚した様子で語った。「戦後の総決算をしたい」。周囲に繰り返し語ってきた安倍の決意が滲む。青く大きな空が広がった5日(日本時間6日)のホノルル。第2次世界大戦を戦った日系2世の元兵士ら50人以上が記念行事に集まり、首相訪問の話題で盛り上がった。「75年の節目に相応しい決断だ」。日系3世であるハワイ州知事のデヴィッド・イゲ(59)も、その輪の中にいた。「犠牲者を悼み、過去に折り合いをつけ、平和を願う」が信条だ。安倍に「ハワイを訪ねてほしい」と何度か率直にお願いしてきた。夢の実現が近付いた今、イゲは「偉大な和解の時が来る」と期待を寄せる。真珠湾は、日米の相互理解と絆を深める場となり得る。その為の取り組みは、既に始まっている。

ハワイ州オアフ島。5日早朝(日本時間6日)、自宅で眠っていた小池良児(59)は、電話で叩き起こされた。「安倍首相が真珠湾に行くと決まったよ!」。東京から、知人が驚いたように伝えてきた。真珠湾に浮かぶフォード島の『太平洋航空博物館パールハーバー』で、日米双方の歴史に基づく“真珠湾攻撃の語り部”の役割を担って7年。「この新しい一歩を待っていた。日米の和解を更に進める活動がやり易くなる」。小池は素直に喜んだ。東京生まれの小池は27年前、家族と共にハワイに移住した。永住権を取得し、ウェディングプランナーとして働いていた。「真珠湾攻撃は知っていたけど、興味も知識も無かった」。だが、趣味である模型飛行機のイベントで訪れたのを機に同館を手伝い、関心が膨らんだ。「日米で語り方・感じ方が違う」。日々、来館者と接するうちに、そう実感した。アメリカ人にとって真珠湾は、戦争を仕掛けた日本を糾弾する“歴史の象徴”だ。日本の宣戦布告の遅れを“卑劣な行為”と考える人が多い。仕事中、「何故、ここにいる?」と年配のアメリカ人男性に食ってかかられたこともある。一方、日本人にとっての真珠湾は、歴史の中で“戦争を始めた”という罪悪感を持つ出来事の1つだと思う。日本からハワイには年間約150万人も訪れるが、真珠湾訪問を躊躇う人は少なくない。小池は勉強を重ね、「双方の歴史観の違いを正否で考えるのではなく、並列で捉えるべきだ」との結論に至った。「宣戦布告は翻訳作業が遅れた為で、態と遅らせた訳ではない。日本でも、戦争回避を訴える軍人らはいた。日米其々の視点を踏まえて考えてほしい」。小池は、来館者にそう呼びかける。小池を支える重要なパートナーが、退役軍人で同館を手伝うゲイリー・マイヤーズ(78)だ。戦史に詳しく、日本への関心も高い。「アメリカで戦争を知る世代の対日観を変えるのは難しいが、日米の次世代なら双方の歴史をバランス良く学んでもらえると思う」と語る。2人は来年、真珠湾攻撃に加わった爆撃機の搭乗者の所属基地があった大分県宇佐市とホノルルとの間で、若者が平和を学ぶ教育プログラムを始める予定だ。

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小池と同じ思いの日本人が、ハワイにもう1人いる。真珠湾にある『戦艦ミズーリ記念館』で、日本語ガイドの纏め役を務める長谷部正寿(67)。日系3世である妻の出生地で暮らすことになった1999年、同館で職を得た。歴史は苦手で、英語の説明文をそのまま日本語にして説明していた。だが、「『日本は卑怯な攻撃をした』といったアメリカの一方的な主観が強過ぎる」と感じ、日米両方の歴史観を伝えながら事実を説明するようになった。ミズーリが沖縄で特攻機に襲撃されたことから、同館は鹿児島県の『知覧特攻平和会館』と交流し、館内で特攻展を続けている。「アメリカの歴史を語る戦艦で、日本の歴史も学べる」。アメリカ人の来館者からは、「涙が出て、思わず隣にいた日本人を抱き締めた」といった反響が相次ぐ。真珠湾では近年、戦争と平和を日米で考える動きが活発化している。被曝して白血病で亡くなった広島の少女の折り鶴の展示や、真珠湾攻撃を指揮した山本五十六の故郷・新潟県長岡市での花火の打ち上げ…。こうした流れは、「悲劇は忘れず、過去に折り合いをつけ、平和を願う」というイゲの信条に沿うものだ。反米感情が高まる中で、アメリカ兵として戦った父を持つイゲが、真珠湾を“和解の場”と捉え、日米の相互理解に基づく平和を望む気持ちは人一倍強い。真珠湾がこれから国指すのは、日米を軸に、地域を超えた平和の象徴となることだ。小池や長谷部は日本人として、その流れを支えていくことになる。「首相は寧ろ、この機会を考えていたのではないでしょうか」と小池は言う。振り返れば夏頃から、博物館に“日本人の視察”が増えていた。「バラク・オバマ大統領の広島訪問もあった。まさに、両国相互の和解のタイミングなんだという気がする」。 《敬称略》


⦿読売新聞 2016年12月7日付掲載⦿

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