【働く力再興】第1部・安住の根を絶つ(05) 「改革は推進」、労使に打算…同床異夢、政治で超えろ

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安倍晋三首相(61)は、働き方改革を“最大のチャレンジ”と位置付ける。雇用・労働市場を巡る問題は、企業と労働者の思惑がすれ違い、政治は違いを解きほぐすのに苦慮する。今年度纏める政府の実行計画は、日本経済の活力を呼び覚ます設計図になるだろうか。「正社員と同じ賃金を払う必要はあるか?」「訴訟が頻発したら困る」――。先月下旬、富山県の経営者の会合で、同じ仕事に同じ賃金を払う“同一労働同一賃金”が話題になった。政府が導入を決めてから3ヵ月。改革の具体像が見えない。戸惑いと苛立ちが透ける。働き方改革を否定する声は無いが、一皮剥くと政労使の立ち位置の違いが浮かぶ。「同一賃金の実現で“非正規”という言葉を一掃する」。首相の発言を素直に喜べないのが、経営者らで作る経済団体だ。事実上の非正規の賃上げとなれば、企業の持ち出しは増える。若し、「正社員の賃下げで非正規に報いろ」と会社に言われたら…。正社員の生活を守る労働組合も気を揉む。組合員が損するなら、反対に回るのが得策かもしれない。労使の足並みが反対で揃うようだと、首相の意欲は空回りに終わる。

「経済対策に働き方改革を盛り込んだのは評価できる」。先月前半、財務省の浅川雅嗣財務官(58)と向き合った欧米の大手金融機関トップは、唐突にこう語りかけた。改革断行なら、人口減でも日本は“買い”。改革膠着なら“売り”。日本の改革姿勢に目を凝らす。改革が進めば経済は活性化する。海外が見極めたいのは、日本の実行力だ。雇用や労働市場の改革は、多くの国で企業と労働者の思惑のズレを招き、政府は与野党の対立に四苦八苦してきた。安倍政権の成果も僅かだ。労働時間でなく、成果に応じて賃金を払う“脱時間給制度”は、導入を表明して2年以上経つが実現に至っていない。雇用規制を特区で緩和する仕組みもできていない。最低賃金の引き上げ等、実現したのは財政面での手当てが目立つ。『早稲田大学ファイナンス総合研究所』の野口悠紀雄顧問(75)は、「産業構造の変化に応じ、働き方も変わる。規制改革で成長分野を切り開き、人材を一気に振り向けなければならない」と説く。金融とITが融合した“フィンテック”や、人工知能(AI)を使った技術革新等、人とお金を集中すべき分野はある。「人々が人生を豊かに生き、同時に企業の生産性も上がっていく。日本がその中で輝く」。首相は一昨日、改革案を練る官僚に改革実現後の日本の姿を示した。時代の変化に適合したルールを整え、不備があれば果断に修正する。企業と労働者を強くする改革が遅れれば、日本経済は衰退に向かう。

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「産業構造の転換に柔軟に対応できるシステムの検討が必要だ」――。旧『日経連』が1995年に発表した報告書に、こんな一節がある。高度成長が曲がり角を迎え、多様な働き方と成長分野への人の移動が不可欠と指摘したもの。成長持続に向けた有能な人材の確保は、21年前から課題として認識されていた訳だ。雇用の改革はすんなりいかない。小泉純一郎政権は、規制緩和で派遣労働の活性化を狙ったが、「非正規労働者の増加で格差を広げた」と批判を浴びた。その後は、安倍晋三首相が「負け組と勝ち組を固定しない」として是正に乗り出す等、政策の軸足は弱者救済に移っていく。国が困っている人に手を差し伸べる策は必要だ。同時に、企業を強くする競争ルールも整備すべきだ。人の移動を促す雇用ルールや、時間でなく成果を重視した賃金等、政労使で練り上げるべき課題は多い。そうした取り組みが個々の労働者の能力を最大限引き出し、所得増ややり甲斐に繋がっていく。世界最速ペースで人が減る日本に、伸びしろは乏しい。長時間労働と年功序列に代わる新たな成功方程式を捻り出す時だ。 =おわり

               ◇

大滝康弘・長谷川岳志・山本公啓・中野貴司・藤野逸郎・鈴木健二朗・高野壮一・湯浅兼輔・福山絵里子・佐野敦子・小川和広・中村亮・三木理恵子・福本裕貴が担当しました。


⦿日本経済新聞 2016年9月4日付掲載⦿

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