巨大テーマパークの搾取地獄…『東京ディズニーリゾート』vs『ユニバーサルスタジオジャパン』、ブラックなのはどっち?

不景気なんてどこ吹く風! 巨大テーマパークは秋も冬もハロウィンにクリスマスと、ドル箱イベント続きで大盛況。アメリカの大手テレビ会社に牛耳られ、入場料の値上げを図る『ユニバーサルスタジオジャパン』と、相変わらず従業員を酷使し続ける『東京ディズニーリゾート』。よりブラックなのはどっちだ! (取材・文/フリージャーナリスト 小石川シンイチ)

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2001年に大阪市に開業したアメリカ映画のテーマパーク『ユニバーサルスタジオジャパン(以下、USJ)』は今月3日、今年度上半期(4~9月)の入場者数が前年同期比7%増の約700万人となり、上半期としては過去最高を更新したことを発表した。上半期の収益増は6年連続。更に、今年は開業15周年に肖ったイベントが人気を集めており、今年3月に登場した映画『ジュラシックパーク』をテーマにした新しいジェットコースターや、夏休みに導入した『週刊少年ジャンプ』の世界を楽しめるアトラクション等が、集客増に貢献した。今後も、開催中のハロウィンのイベントやクリスマスとドル箱イベントが続く上に、日本のアニメ等を題材にした“クールジャパン”系のイベントが今冬以降に控えている。今年度の年間入場者数も、昨年度の約1390万人を超え、過去最高を更新する可能性もあるという。この勢いで、9月にはUSJの運営会社である『ユーエスジェイ』(大阪市)が、東京証券取引所への再上場を検討していることが明らかになったのだ。早ければ今秋にも申請し、審査が順調なら、今年度内にも上場可能だという。「USJの再上場は、時価総額が数千億円規模の大型案件。USJにとっては、テーマパークへの投資を加速させる為の資金調達手段を広げるのが上場する一番の目的ですが、停滞気味の株式市場では期待の銘柄になりそうです」(アナリスト)。抑々、2007年に『東証マザーズ』に上場したUSJだが、業績を立て直す狙いで、“ハゲタカファンド”と言われる『ゴールドマンサックス証券』系ファンド等の傘下に入り、2009年に上場廃止。その後は、ファンド主導で再建を進めていた。

その後、2014年7月、450億円の資金を投じた人気映画『ハリーポッター』エリア開業が大きな転機となり、昨年3月期は営業利益が390億円と、2年連続の過去最高を記録した。「すると、ユニバーサル映画を傘下に抱えるアメリカのケーブルテレビ大手“コムキャスト”がUSJ復活に着目し、再上場による出口戦略の検討に入っていたゴールドマンサックス証券系ファンドから、昨年11月にユーエスジェイ株の51%を約1840億円で取得したのです。ゴールドマンサックス証券系ファンドは、2009年に買収した際の金額は約1112億円だったので、この売却でボロ儲けした格好です」(同)。コムキャストの買収後、それまでの拡大戦略は大きく転換。コムキャストが送り込み、新しく就任したジャン・ルイ・ボニエCEO(最高経営責任者)は、USJの沖縄進出を見送る方針を発表。当初、日本政府や地元の支援を受ける形で、2020年にも沖縄県北部の国営海洋博公園に、総額600億円規模を投じてテーマパークを新設する計画だったのだ。大阪に次ぐ第2の拠点として、年間600万人の集客を想定しており、2014年の沖縄県知事選では与党側がUSJの誘致を掲げ、争点の1つにもなったほどだった。「今年6月に上海に開業したディズニーリゾートに対抗する形で、USJの同系列で、USJの2倍の規模となる“ユニバーサルスタジオ北京”が2019年に開業予定です。そうなると、USJの来場者増を牽引してきたアジア客の争奪戦は激しくなりますから、『日本国内では大阪に経営資源を集中させ、リピート客を増加させる』という目的があります。抑々、沖縄進出はUSJ側というよりも、自民党側の期待度が高い案件でした」(同)。ジャン・ルイ・ボニエCEOは大阪への集中投資を掲げ、「今後4年で、入場者を今の1400万人から200万~300万人増やしたい」と記者会見で発言し、数百億円規模の投資が必要となる大型アトラクションについても、「順次、準備している」と強調した。また、2020年までには、『任天堂』と提携したアトラクションもオープン予定だ。このアトラクションは400億円規模とされる。今回の再上場で、ゴールドマンサックス証券系ファンドはUSJの経営から完全に離れると見られ、よりコムキャストの大阪への集中投資路線が明確になっていきそうだ。

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USJは入場者も増加中だが、客単価も上昇中だ。「先ず、現実的な問題として、湾岸の工場地帯に造られたUSJは、これ以上広げる余地が無く、キャパシティーが限界に達しようとしています。2020年オープン予定の任天堂との提携のアトラクションも現在、USJの本社ビルがある事務エリアに拡張する計画で、事実上、これ以上増やせないのです。ここから売上を増やすには、客単価を上げていくしかありません」(経営ジャーナリスト)。現在は7400円の入場料が、近い将来、1万円になるかもしれない――。こんな仰天のプランをぶち上げるのは、USJのV字回復の仕掛け人であるチーフマーケティングオフィサーの森岡毅氏だ。同氏の著書『USJを劇的に変えた、たった1つの考え方』(KADOKAWA)には、チケット価格の値上げについての次のような記述がある。「米国や欧州などの他の先進国と比較すると、日本のテーマパークは世界標準の約半分で安売りされていることは明白。日本のテーマパークの品質は世界で一番高いにもかかわらず、土地建設費・人件費などのコストが世界で一番高いにもかかわらず、入場料だけが世界で一番安いのはあまりにもおかしい。他国のテーマパークが倍近いチケット価格で集客できている事実から、“チケット価格”に客単価向上の大幅な伸び代がある」「なぜ日本だけがこんなにテーマパークが安いのかと言えば、業界のガリバーである東京ディズニーランドが長年安くやっていたからです。そのせいで業界価格の天井が低いのです」「私はUSJが尖兵となって業界を世界標準に近づけるべきと考えるようになりました」。世界標準とは、当時のUSJの入場料5800円の2倍、つまり1万1600円になるということ。事実、ここ数年、USJは値上げに次ぐ値上げなのだ。

「2011年1月から6200円だった入場料は、段階的に6年連続で値上げし、今年2月には7400円になっています。更に、これに合わせたように東京ディズニーリゾート(以下、TDR)も値上げしています。共に、2011年は6200円だったのが、今年には7400円に値上げしているのです。まさか価格カルテルではないでしょうが…」(前出の経営ジャーナリスト)。そんなTDRの経営はどうか。『東京ディズニーシー』開園15周年を記念した期間限定ショー『クリスタルウィッシュジャーニー』等の季節イベントは好評だという。しかし、入場料値上げを嫌ってか、入場者数が伸び悩んでいるのだ。TDRを運営する『オリエンタルランド』の今年3月期連結純利益は、前期比3%増の740億円で、5期連続で最高益を記録している。だが、これは入園料の値上げとパーク内の飲食の値上げで客単価が上昇しただけで、入園者数は4期ぶりに減少した。「最近は入園料の高さから、日本人カップルやファミリー層が減り、その代わりにアジアからの団体客が売上を支えています。しかし、アジアからの団体客は大燥ぎする上に、マナーが悪い。ブラックな環境で疲弊し切ったキャスト(従業員)も見て見ぬふりをするので、日本人が益々敬遠するという悪循環に陥っています」(同)。更に、筆者が聞くところによれば、TDRに対するゲスト(客)の評判は今夏、開業以来最悪と言ってもいいほど落ちていたという。夏のディズニーは元々、暑さ・人の多さ・サービスの悪さの三重苦でゲストの不満が高まるのだが、今年はあらゆるレストランで行列ができており、食事も真面に取れない“ランチ難民”が続出。これまでにもランチ時の行列はあったが、今夏はランチタイム後も延々行列が続いていた。しかも、人気店の席が取れないというレベルではない。座席数が多く、ガイドブック等で「ここなら大人数でも座れる!」と紹介されている店でも、全く座席が取れない。更に、カウンターサービスのお店でも席が取れず、その結果、床に座って食べるゲストが続出。軽食が取れる筈のワゴンサービスにも、長蛇の列ができていた。『オリエンタルランドグループ』従業員の話によると、「レストラン版ファストパスである“プライオリティシーティング(座席優先案内システム)”というシステムが、パーク内の混雑を一層誘発している」という。

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「プライオリティシーティングの拡大で、座席が取れなかったゲストが、プライオリティシーティングのいらないカウンターサービスのお店やワゴンサービスに殺到しているのです」(同)。プライオリティシーティングは、予め時間を指定してレストランを予約し、その時間に来店したら、席が空き次第、優先的に案内される仕組みだが、混雑日は予約も取り辛いというのが実情だ。「更に問題なのは、カウンターサービスのお店や、ワゴンサービスのお店のレジやワゴンも、キャスト(従業員)の不足から、十分に稼働ができていないのです。食事済のテーブルも片付けられませんし、益々悪循環になります。これまでは、春・秋と期間を区切って募集していたTDRのキャストも、人材難で常に募集中です。それでも、ブラック待遇を理由にベテランは次々と辞めますし、新しいアルバイトも集まらないのです」(同)。ブラック視される理由は、TDRを運営するオリエンタルランドが、“日本一のおもてなし”をキャストに要望しておきながら、最低時給(東京都労働局:932円/今年)並みの低賃金で扱き使うからだ。「キャストの時給ランクは5段階になっていますが、飲食の場合、新人で入って来て暫くは900円。多くは2ヵ月後、1000円にアップします。その後、時給が上昇するのは1020円。大抵のキャストは、この1020円で頭打ちです。何年働いても1020円なのです。この点について私たちが要望したこともあって、今春に新たな従業員制度が導入されましたが、それでも10~20円アップされるだけなのです。過去最高益の筈のTDRのキャストへの時給が1020~1040円とは…」(同)。しかも、ベテランのキャストほど1~2人で接客するワゴンサービスに回される。そこでは、夏の直射日光の下、長蛇の列によってイライラ度が最高潮に達しているゲストの接客を延々と続けなくてはならない。トイレも行けないところか、体調も崩しかねない。

「しかし、休むと他のキャストにも迷惑がかかるので、休み難い。更に、体調を崩しても『体調管理も貴方の仕事』と、他のキャストからは冷たい言葉が投げかけられるだけなのです」(同)。これで時給が1020円では、ベテランが次々辞めてしまうのも無理はない。新しく配置される新人スタッフは不慣れでミスを連発。更にゲストのイライラが高まるという訳だ。そして秋になると、キャストにとっては地獄のようにハードなハロウィンイベントに突入する。この悪循環は益々エスカレートしていくだろう。従業員たちは「新従業員制度では、半年に一度、時給が見直されることになっています。この10~11月がその時期に当たるので、ここでキャストの時給がアップされれば…」と期待するが、果たして改善されるのだろうか? 何とTDR側は、この期に及んでも尚、キャストの時給を抑え込むことしか考えておらず、前述のように「時給アップ対象は極一部、しかも時給にして10円から20円に止まるのではないか?」と言われているのだ。オリエンタルランドが今月3日に発表した今年4~9月の東京ディズニーランドと東京ディズニーシーの合計入園者数は、前年同期比0.3%減の1432万9000人。4~9月としては3年連続のマイナスとなり、過去最高だった2013年4~9月(1535万9000人)と比べると、約100万人減少しているのだ。頼みのアジアからの団体客も、円高傾向になって、これまでのような集客は期待できない。今後10年間で5000億円規模の投資を行っていくというが、更にアメリカの『ウォルト・ディズニー・カンパニー』からの要望もある。「ディズニーは、これまで“ルーカスフィルム”が製作し、“20世紀フォックス”が配給してきた映画“スターウォーズ”の権利を約4941億円で買収。現在、毎年のように同シリーズを公開しています。しかし、女性向けにファン層を拡大しようとして広告費を大々的に投入しているものの、大失敗中。それでも、日本のTDRに『スターウォーズのエリアを作れないか?』と打診しているようで、アトラクション投資の予算については『幾らあっても足りない』というのが実情なんです」(アナリスト)。USJ対ディズニー、ハロウィンを巡るテーマパーク秋の陣の勝負は、“夢の国”という仮装の下は、両社共に銭ゲバの痛み分け…ということになるのかもしれない。


キャプチャ  2016年12月号掲載

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