【薬のホント・健康食品のウソ】(14) 食品添加物は危険なのか?…“本当の悪者”は別にいる!

食品添加物は嫌われ者だが、本当に危険なのか? 実際は、悪い食品を誤魔化すのではなく、安全性向上等の役割も果たしている。本当に危険なのは、添加物を悪者扱いして儲ける輩である。 (取材・文/科学ジャーナリスト 松永和紀)

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『生活協同組合』で昔から行われてきた“実験”がある。漬物やお菓子等に食酢を入れて着色料を溶かし出し、白い毛糸を入れる。毛糸が染まったら合成着色料、染まらなかったら天然着色料。「怖いですねぇ、こんなに染まるんですよ。合成着色料は石油が原料で、発癌性や催奇形性の疑いがあり…」。組合員を集めた学習会で行うと、視覚に訴える効果は抜群だった。天然か人工合成かで化学物質の有害性は判断できない。天然物でも極めてリスクの高いものがあるのは、フグや毒きのこを考えれば直ぐにわかる。毛糸染めで食品としての安全性が判明する筈もなく、こけおどしもいいところ。こんな手法で、生協は「私たちの扱う食品はそこらの商店とは違う。安全、健康」と謳ってきた。だが、多くの生協は変わってきた。食品中に、天然由来のリスクの高い物質や微生物がある場合も少なくない。対処する為に、「食品添加物を使ったほうが寧ろ安全を守れる場合もある」ということが理解されるようになってきた。例えば、ハムやソーセージの製造に発色剤として用いられる亜硝酸塩。体内でアミン類という物質と反応し、ニトロソ化合物という発癌物質を生成すると言われ、1970年代に多くの生協が発色剤不使用のハム&ソーセージを開発した。商店やスーパーマーケットとの差別化には、とても効き目のある商材だった。しかし、「野菜に多く含まれる硝酸が体内で亜硝酸になっているとみられ、それに比べると発色剤としての使用量は少なく、リスクの懸念は無い」というのが科学者の意見の大勢。発色剤は色を良くし、肉の臭みを取ると共に、ボツリヌス菌の増殖を抑えるとされている。

こうしたことがわかり、多くの生協は、発色剤を用いたハム&ソーセージも販売するようになった。現在の売れ行きは発色剤を用いたほうがよいと聞くが、昔からの組合員は納得しない。「生協は当初の精神を失い、悪いものでも売れればよいとなってしまった」と嘆き、組織幹部を突き上げる現象が、今も各地の生協で繰り広げられている。筆者は幾つかの生協の広報誌で連載しており、講演もよく頼まれる。その際には必ずと言ってよいほど、「発色剤の問題に触れてほしい」と頼まれる。生協は、組合員の「添加物は悪いに決まっている」という思い込みと、科学的な安全管理の間で苦しんでいる。考えてみれば、食品添加物批判の歴史は、常に「危ないから、無添加の我が社の○○を!」というセールストークとセットだった。日本では昔、水銀が防腐剤として使われたり、亜硫酸銅等の鉱物が着色料として用いられたりした時代があり、1947年に食品衛生法ができて、食品添加物としての規制が始まった。当初は水銀や鉱物等、非常に有害な物質の使用を取り締まることに力点が置かれ、審査は甘く、使用が始まった後に発癌性等が明らかとなり、禁止されたものも出た。例えば、チクロやズルチン等の甘味料、豆腐の殺菌料のAF2等だ。こうした経緯から、「添加物は体に悪い」という世間の印象は強固になった。事件を経たからこそ、現在の食品添加物の審査は非常に厳しい。右上表のような試験で問題ないことが確認され、内閣府食品安全委員会の専門家の審査を通り、明確なメリットのあるものだけが使用を認められる。その厳しさが一般消費者には知られていない。食品添加物は、消費者のメリットもあるからこそ使われる。食品のリスクの中で何といっても深刻なのは、微生物の増殖による食中毒。日本で発生している食中毒の9割は微生物が原因で、死者が出る場合もある。保存料は微生物の増殖を抑え、品質の劣化や食中毒を防止するのに役立つ。なのに、保存料は嫌われ、コンビニエンスストアは態々“保存料不使用”を謳う。保存料の代わりに抗菌性の高い食品添加物を複数使うという“トリック”が駆使されているのだが、多くの消費者は気付かない。野菜は、土壌にもいる腸管出血性大腸菌等に汚染されている可能性があり、サラダ用の洗浄野菜は、殺菌料で処理されていなければ、怖くて食べられたものではない。殺菌料は、食品衛生法により「使用した後に水で洗い流し、野菜に残留させてはならない」と決まっているので、食べる時には懸念はない。だが、「危ない殺菌料を使っており、栄養素も全部無くなっているから、食べないほうがいい」という誹謗中傷が絶えない。

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【南鳥島に注目せよ!】(29) 産学一体で進んでいる開発技術の確立

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レアアース泥の発見者であり、海底資源研究の第一人者でもある東京大学の加藤教授。彼は現在、『レアアース泥開発推進コンソーシアム』の座長を務めている。これは、レアアースの安定供給だけでなく、新たなレアアース需要の開拓による国内産業の活性化も目的として、2014年11月に設立されたもの。コンソーシアムとは、ある目的の達成の為に協力し合う組織や人等の共同事業体だ。ハイテク分野に強みを持つ日本の産業にとって、レアアースは必要不可欠なもの。調達リスクの無い国内でのレアアース生産は、日本の製造業にとって“福音”以外のなにものでもない。これを現実とする為に、多数の企業・大学・研究機関・行政機関が参画。開発の実現に向けた様々な取り組みが、産学一体で進められている。その構成だが、高濃度レアアース泥の分布を海面近くから探査する技術や、採泥中の海底環境の変化をモニターする技術等の確立を目指すのが“探査・モニタリング・環境”部会。これには、『深田サルベージ建設』・『商船三井』・『日本郵船』の3社が参加している。そして、海底における採泥や揚泥の技術を比較検討しているのが“採泥・揚泥”部会。現在は、加圧式エアリフト方式による揚泥技術の開発を進めている。加圧式エアリフト方式については、左図を見て頂くとわかり易いだろう。

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初年度から『三井海洋開発』・『東亜建設工業』・深田サルベージ建設・商船三井・『スターライト工業』の5社が参加していたが、現在では『日本海洋掘削』等民間4社に加えて、官界からも『海洋研究開発機構』・『海上・港湾・航空技術研究所』が新たに参画。揚泥実験やシミュレーション等、南鳥島周辺海域での揚泥実験に向けた準備が着々と進められている。そして、泥から効率的にレアアース濃集鉱物を選鉱する技術や、既存技術を用いた製錬手法の実証等を担当しているのが“選鉱・製錬”部会だ。民間からは、『三徳』・『IHI』・『信越化学工業』・『三井金属鉱業』の4社が参加している。実験によって、レアアースが濃集しているアパタイトを効率よく抽出できる上に、揚泥量そのものも大きく減らすことができる手法が既に考案されている。そして最後に、レアアース回収後に残る泥を低コストで処理する技術や、その再資源化技術を探索している“泥”部会。東亜建設工業・『太平洋セメント』・IHIの3社が参加しており、リユース、リサイクル、リデュースという“3R”の視点から研究開発が進められている。課題である泥に残る水分量の多さは、港湾土木分野の既存技術を応用してクリア。泥を焼成してブロック状に成型したリサイクル資材等、幅広く有効活用できる技術を考案しており、今後も模索が続けられる。このように、様々な知見やノウハウを有する企業が積極的に参加し、レアアース泥の開発技術確立に向けて一致団結。各部会が今も急ピッチで研究を進めている。


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【南鳥島に注目せよ!】(28) 商業化を目指す諸外国の取り組み

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ここまでは主に、日本における海洋資源の開発プロジェクトを紹介してきた。レアアース泥・海底熱水鉱床・メタンハイドレート等、いずれの開発プロジェクトも商業化に手が届くところまできている。では、海外はどうか? 新たな開発プロジェクトが次々に立ち上がる等、日本に負けず劣らずの大盛り上がり。公海上での海底熱水鉱床の探査権を『国際海底機構(ISA)』から取得した国も、2011年に中国とロシア、2012年に韓国とフランス、2014年にインドとドイツと、毎年のように増え続けている。2013年以降は、EUが支援する海洋資源の開発プロジェクトが相次いでスタート。例えばその1つが、“深海鉱物資源開発のための革新的ソリューション事業”こと『Blue Miningプロジェクト』だ。深海という極限環境に適用できる技術の開発を行う為に、オランダ、ドイツ、イギリス等から19の企業と研究機関が参加。コンソーシアムを組成して、実行にあたっている。開発のターゲットとするのは海底熱水鉱床とマンガン団塊で、2018年1月末までの4年間の為に1500万ユーロの予算を計上。

FS調査(※プロジェクトの実現可能性調査)の青写真作成を目標とする等、探査・生産技術開発に注力したプロジェクトと言えるだろう。そしてもう1つが、深海の鉱物資源開発における環境影響の低減技術の開発を目的とする『MIDASプロジェクト』。先のBlue Miningと密接に関わり合うプロジェクトで、海底熱水鉱床とマンガン団塊だけでなく、コバルトリッチクラストやレアアース泥も対象としている。ロシアを含むヨーロッパ11ヵ国から、32の研究機関・企業・社会科学&法律関係企業・NGO等が参加。2013年11月から3年計画で進められたプロジェクトに、1200万ユーロの予算が投入された。海底資源の開発において環境保全が如何に重要かは、この金額からも推し量れる。お隣の韓国でも、海洋資源の開発をにらんだ動きが活性化している。1983年にマンガン団塊の調査を開始する等、海洋資源の存在に早くから目をつけていた韓国。2001年には、ISAとの間で探査契約も締結している。その後も海底熱水鉱床やコバルトリッチクラスト等、公海上での探査対象を拡大。調査を行う海域も拡大傾向で、海底熱水鉱床についてはインド洋公海域で調査が実施されている。2002年からは、フィジーやトンガで海底熱水鉱床の調査を開始。両政府から探査鉱区も取得済みで、2009年にはトンガでの海底熱水鉱床開発の為に『海底熱水鉱床技術開発機構』が設立された。政府主導ではあるが、民間企業5社が出資する等、商業化を見据えた動きもかなり進んでいる。日本でも環境保全、探査・生産の両面から開発プロジェクトが推進された結果、技術が確立されて民間主導のプロジェクトに移行するまで、あと少しのところまで来ている。あとは焦らず静かに、商業化達成との吉報が届くのを待ちたい。


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【南鳥島に注目せよ!】(27) BSRの上にあるメタンハイドレート

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前回、ほんのさわりだけ解説した地震探査法によるメタンハイドレートの探査。音波を利用した方法なので、単純に“音波探査”とも呼ばれている。これが具体的にどのようなものかを、今回はもう少し詳しく解説させて頂こう。先ずは左図左側をご覧頂きたい。海上の船から、エアガンと呼ばれる音波の発生装置や、ストリーマーケーブルと呼ばれる音波をキャッチする装置が延びているのがわかるだろう。最初に、エアガンが地震波と呼ばれる微弱な音波――つまり“振動”を発振。この地震波は、海中から海底、そして海底面下の地層の中にも伝わっていく。地震波がどこかで反射して海中に戻ってくるのだが、海底面で反射する場合もあれば、その下にある地層の“境界”で反射する場合もある。海底にある地層の構造によって、地震波の伝わり方や、反射する層が変わってくるのだ。

再び海中へと戻ってきた音波は、海面の近くにあるストリーマーケーブルによって受振され、データとして記録される。これによって、海底の地層がどのように重なっているかという“構造”が間接的に判明する。これが地震探査法の概要である。そして、海底の地層に石油・天然ガス・メタンハイドレート等が眠っている場合には、特有の反射記録を示す。これが、メタンハイドレートが存在を示す“BSR(海底疑似反射面)”と呼ばれるものだ。地震探査法から浮かび上がった、海底面とほぼ平行に記録される“線”の存在。通常の地層の重なり方では説明できないもので、これの正体が何であるのか、当初は誰にもわからなかったという。メタンハイドレートが存在するのは、“低温高圧”という条件をクリアする場所のみ。これに合致するのが、水深が500mよりも深い海域の、海底面から400~500mの深さに存在するメタンハイドレート安定領域である。そして、BSRの周辺地層とメタンハイドレート安定領域は、ぴたりと一致する。BSRよりも上にメタンハイドレートが存在し、BSRより下には存在しないという地層構造が、地震探査法のデータに“線”を浮かび上がらせていたのである。その後の掘削調査でも、BSRが認められる海域でのメタンハイドレート回収に成功。仮説が実証されたことで、現在では“BSRがある=メタンハイドレートがある”という考え方が定着している。因みに、2001年度にスタートした日本でのメタンハイドレート開発計画は、現在、第3フェーズに突入。第2フェーズではガスの生産実験が行われ、2013年3月には海上における約6日間連続のガス生産に成功している。2018年度までに商業化の実現に向けた技術整備を進め、その後に民間主導による商業化プロジェクトの開始を目指すという青写真。開発は我々の想像以上に進んでいる。


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【南鳥島に注目せよ!】(26) 資源量と埋蔵量は似て非なるもの

20171011 07
早期の開発に向けた調査や実験が着々と進められている我が国の海洋資源。ターゲットとする資源によって調査の内容は異なるが、共通する部分もある。資源が“どこ”に“どれだけ”存在するかの調査が最優先だという点だ。これが判明しなければ、何も前には進まない。例えば、メタンハイドレートの場合だと、この探査には地震探査法が用いられている。詳しくは次回解説するが、地震波と呼ばれる音波を人工的に発生させて、これを海底の地層に向けて発振。海底で反射して戻ってきた地震波を受振器で捉えることで、海底面下の構造を調べるというものだ。これによって判明するのが、“海底疑似反射面(BSR)”と呼ばれる特殊な反射面。海底面とほぼ平行に現れるのが特徴で、このBSRが見つかるのは、メタンハイドレートが存在する上での必要条件と言える。要するに、BSRが確認された場所にメタンハイドレートがある可能性が高いということだ。ここで右図を見て頂こう。これは、産学官が連携して進めているメタンハイドレート開発プロジェクトで判明した日本周辺のBSR分布図である。

日本のあちこちでBSRが確認されているが、詳細調査により、海域の一部に濃集帯が確認されているのが東部南海トラフ海域。濃いブルーに塗られている和歌山県~静岡県にかけての海域で、BSR分布面積は5000㎢。ここに眠るメタンの原始資源量は、液化天然ガス(LNG)換算で何と約8億4000万トンと推測されている。ここで必ず理解しておきたいのが、“資源量”と“埋蔵量”の違いだ。イメージ的には似ているかもしれないが、実際は全く違う。例えば、自分の持っている無農薬の畑で100㎏分の野菜が収穫できたとしよう。しかし、よく見ると半分以上で虫食いが発生しており、売り物にならなくてがっかり。商品として販売できたのは、全体の4割にあたる40㎏分だけだった。このケースを資源に当て嵌めると、単純に収穫できた100㎏が“資源量”で、商品として販売できた40㎏が“埋蔵量”にあたる。つまり、資源量とは、存在が見込まれる総量を単純にカウントしたものに過ぎない。技術的に採掘可能であるかどうかや、経済的に回収可能かどうかが考慮されていない段階での量なのである。ところが、未だ生産方法が確立されていないメタンハイドレートは、資源量から実際にどれだけの割合でメタンが回収できるかという回収率が算出できない。そして、資源量と埋蔵量は“資源量×回収率=埋蔵量”という関係にあるので、メタンハイドレートの埋蔵量は、現時点では出したくても出せないのだ。あとは、埋蔵量が不変ではなく刻々と変化するのも、覚えておきたいポイント。新たに資源が発見されるという理由の他に、技術開発による回収率の向上によっても増加する。石油が中々枯渇しないのには、こういう秘密があったのである。


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【南鳥島に注目せよ!】(25) 惜しみなく投入される最新鋭の機器

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これまでもお伝えしてきたように、海洋資源の開発では、船上や深海中で様々な調査が行われる。生産効率の追求は勿論、環境保全や開発の安全性向上を考える上でも、綿密な調査は欠かせないもの。データが無くて困ることはあっても、多過ぎて困ることはない。その為に惜しみなく投入されているのが、最新機能を搭載した船舶や調査機器。『石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)』の“旗艦”である『白嶺』も、八面六臂の活躍を見せている。本連載に何度も登場する白嶺は、海洋資源の探査や開発を加速する為に、JOGMECが『三菱重工業』に発注したもの。下関造船所で建造され、2012年1月末にJOGMECへと引き渡された。それまでは『第2白嶺丸』が長期に亘り活躍してきたが、船の大きさや構造上の制約から、20m以上の深部ボーリング探査ができないことや、長時間の掘削を可能とする自動定点保持機能を有していないこと、環境や生態系保全の為の詳細な調査ができないこと等、能力的な限界が生じていた。

しかし、国家予算から300億円近くが投入された白嶺はモノが違う。船としての基本性能の高さも然ることながら、海底の地形に影響されずに最大水深2000m、最大掘削長400mのボーリングを可能とする船上設置型掘削装置や、詳細な海底地形図の作成を可能とするマルチビーム音響測深機、海底面近くの地質構造が把握できるナロービーム表層断面探査機等、最新鋭の調査機器をフル装備。『日本船舶海洋工学会』が主催する『シップオブザイヤー』で、2012年に技術特別賞を受賞してもいる。あとは、海底の精細なデータが取れる三次元物理探査船『資源』や、『海洋研究開発機構』が保有する世界初のライザー式科学掘削船『ちきゅう』も、今後の海洋資源開発に欠かせない存在。有人深海探査船『しんかい6500』や、海上保安庁の自立型潛水調査機器『ごんどう』等、深海に潜って活躍する機器の活躍も見逃せない。レアアース泥・石油・天然ガスの開発に投入されそうなところでは、“生産浮体”と呼ばれる船舶も大きな役割を果たす。採取された資源を貯蔵するだけでなく、そこで働く労働者や機器等も収容する、開発地における“母船”となるものだ。そして調査機器も、海底の堆積物や海水をそのままの状態で採取できるマルチプルコアラー、分析する為の海水を採取するロゼットサンプラー(採水装置)、海流等の長期観測に使われる超音波ドップラー流速計、海水中を沈降する粒子を集める装置であるセジメントトラップ等、多種多様。こういった機器による表舞台に出てこない地道な調査が、海洋資源の開発を支えている。


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【有機EL&半導体バブル】(12) 有機EL装置・素材は液晶需要の恩恵も

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有機ELと半導体の投資が活発化しており、現在の株式市場のテーマの1つとなっている。特に、製造装置や素材で日本勢が存在感を示している。現在は液晶が主流のディスプレイだが、スマートフォン向け中小型等では有機ELも台頭しつつある。有機ELの新型スマホへの搭載を見据えた投資が活発な上、液晶では中国で国策に乗った大型パネル工場投資の案件が進行中だ。この為、ディスプレイ製造装置メーカーが恩恵を受けている。液晶と有機ELの構造には共通点もある。液晶分子や有機ELの発光材料の動きを制御する“バックプレーン”という部材は、両者でほぼ同じものである。『アルバック』はバックプレーンの製造装置を手がけている為、液晶と有機EL両方の投資増の恩恵を享受している。また同社は、有機EL特有の構造である発光層等の蒸着工程で使われる装置も展開している。更に、“クライオポンプ”という部品では有機EL向け用途で、事実上の世界基準とも言えるデファクトスタンダードの地位を確保している模様だ。一方、有機EL製造装置がメインになっている銘柄としては、自動車やディスプレイを含む各他産業分野向けに生産設備を供給している『平田機工』が挙げられる。同社は早くから有機ELの知見を積み重ねてきた。様々な装置を提供することが可能だが、現在は特に付加価値の高い“蒸着装置”に注力している。この装置は『キヤノントッキ』が提供する有機EL製造ラインに組み込まれて販売され、急速な伸びを見せている。

素材・部品の関連では、韓国に拠点を持ち、ディスプレイ用光学フィルムや有機EL向けタッチセンサー等を展開している『住友化学』が注目される。有機EL搭載の新型スマホ向けでは、光学フィルムを中心に業容を拡大する可能性が高いようだ。『日本写真印刷』も注目される。同社のタッチセンサーは現在、主にスマホではなく、タブレット端末に供給されている。同社のタッチセンサーは、液品に付ける外付けタイプ。しかし、スマホの液晶ディスプレイでは、“インセル型”という液晶に内蔵する形式が勢力を伸ばしている。インセル型はパネルの薄型軽量化が可能な為だ。ただ、有機EL搭載スマホではインセル型が技術的に困難となる為、同社の外付け型が飛躍する可能性がある。事実、同社は設備投資・人員増強を進めたスマホ向け需要取り込みの準備が最終段階を迎えている模様だ。スマホの高容量化、データセンター向け需要の増加、自動車の電装化等、複数の成長要因を持つ半導体。半導体各社は、大容量化の為に、1枚の基板に如何に細かい線幅で回路を描くかという“微細化投資”を続ける。また、NANDフラッシュの積層化(※基板を積み重ねて回路を増やすこと)等、新たな技術に関連した投資も活発である。旺盛な投資意欲を背景に、半導体製造装置大手の『東京エレクトロン』や『SCREENホールディングス』等は好調な需要を享受している。チップの切断用装置等を手がける『ディスコ』は、装置の他にブレード(※切断する刃)等の消耗品も手がける。消耗品は、装置が稼働すれば安定的に需要が発生する。装置販売のみに頼らないビジネスモデルの為、業績安定感は高そうだ。高水準な受注の継続性に関する警戒感等は出始めているものの、当面の間、半導体製造装置は株式市場の中心的テーマとなりそうだ。また、時期は不透明だが、ハイテク産業の育成を急ぐ中国での国策的な投資案件も出てくる可能性があり、中期的に注目される。材料分野での注目はシリコンウエハーか。シリコンウエハーは、特にリーマンショック後に大きく値下がりし、メーカーの投資意欲は低下している。一方で、ウエハーの出荷面積は過去最高水準に達しており、足元は深刻な需給逼迫状態となっている。この為、今年初めに主力の直径300㎜品を中心に値戻しがあったが、依然として増産投資に回す価格水準には届かない。ウエハーメーカーが増産投資に動く為には、更に大幅な値戻しが実現する必要がある模様だ。ウエハー世界大手の『信越化学工業』・『SUMCO』は今後、値戻しによる採算改善を享受する可能性がある。また、モニターウエハーの再生事業を行っている『RS Technologies』も稼働が好調だ。モニターウエハー とは、製品用ウエハーと共に半導体製造ラインに投入される。抜き取られた後、ラインの稼働状況やウエハーの出来栄えの評価に使われる。モニターウエハーを洗浄等で再生すれば、新たなモニターウエハーを買わずに済み、コストダウンに繋がる。再生事業を手がける同社は、ウエハー関連の中堅企業として注目できそうだ。 (『三菱UFJモルガンスタンレー証券』投資アナリスト 松丸修) =おわり


キャプチャ  2017年6月13日号掲載

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【南鳥島に注目せよ!】(24) 急がれるエネルギー自給率の向上

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メディアでもよく取り上げられている“自給率”というテーマ。大体の場合は、日本における自給率の低さを懸念したり、警鐘を鳴らすような内容である。食料自給率等は、まさにその典型だろう。日本人に供給されているカロリーの内、国産食品によるものが占める割合を表したのが、“カロリーべース食料自給率”と呼ばれるもの。1965年には73%だったものが、食生活の変化もあって、現在では40%以下にまで落ち込んでしまった。とはいえ、この数字、エネルギー自給率の低さに比べれば可愛いもの。1次エネルギーにおける日本の自給率は、東日本大震災の影響で原発がストップした2012年には、何と6.0%にまで低下している。その内訳は、水力15%、天然ガス0.7%、原子力0.6%、原油0.1%、太陽光や水力等の再生可能エネルギー3.1%だ。『経済協力開発機構(OECD)』に加盟する国の内、1次エネルギー自給率が日本よりも低かったのは、人口が60万人以下であるルクセンブルクのみ。これはもう、断トツの最下位と言って差し支えないだろう。国土が狭く、陸上の資源に乏しいのは事実だが、陸地面積が日本よりも狭いイギリスが60.7%、遥かに狭い韓国でも18.0%なのだから、そこに理由を求めるのは苦しい。

何らかの理由でエネルギー資源の輸入に問題が生じた場合、このままではひとたまりもない。この脆弱性を如何に修正するかは、今後に向けての大きな課題と言える。とはいえ、ここまでただ手を拱いていた訳ではない。エネルギーの供給を石油だけに頼る状況からは、上手く脱却できたと言えそうだ。原油は、輸入先がどうしても中東に偏ってしまう。サウジアラビアやUAEで大規模な紛争でも起きれば、エネルギーの安定供給は大ピンチ。“シェール革命”に成功する前のアメリカでも、中東原油への依存はかなり問題視されていた。しかし、天然ガスや石炭の比率を上げることで、リスクはかなり軽減された。天然ガスはオーストラリア、カタール、マレーシア等が主な輸入先で、石炭はオーストラリアとインドネシアからの輸入が主体と、上手く分散できている。あとは、原子力に頼れなくなったエネルギー自給率を如何に向上させるかだ。お手本とすべきは、やはりアメリカのシェール革命だろう。地下深くにあるシェール層の掘削を可能とする技術革新が、アメリカを一気に産油国へと変えた。ならば、近海に豊富な海洋資源を持つ日本にも、それに近いことができる筈だ。日本の人口は減少を始めたが、世界の人口は未だ増加を続けており、エネルギーの消費量も右肩上がり。新興国の急成長もあり、エネルギー資源の価格が更に高騰するケースは十分に考えられる。エネルギーの安定供給に支障が出たら一大事だ。そういった観点からも、エネルギー自給率の向上に繋がる海洋資源の開発は急務。是非、日本にも“革命”が起きてほしいものだ。


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【薬のホント・健康食品のウソ】(08) 全商品効果無し!? トクホの実力を徹底検証!

特定保健用食品(トクホ)の健康効果を消費者に伝えるグラフは、過剰演出なものばかり。効果が物凄く大きいと錯覚してしまう。扨て、トクホは本当に効くのか? 健康食品の効果を徹底検証した。

20170926 07
健康診断の度に血圧・血糖・コレステロールの数値が気になる生活習慣病予備軍の東京都内50代サラリーマン。出社すると、オフィスの自動販売機でトクホの茶系飲料を購入するのが習慣だ。「割高だけど、これで健康になってお腹が引っ込むなら…」と、昼食代をケチった分を購入費に充てている。トクホとは特定保健用食品のこと。国の審査に合格した食品は、トクホとして機能性を表示できる。冒頭の中年サラリーマンは、ケルセチン配糖体茶系飲料『伊右衛門特茶』等を愛飲している。でも、気になる数値は改善しないし、腹は凹まないし、体重も減らない。これ、本当に効いているのだろうか――。伊右衛門特茶は、「脂肪分解酵素を活性化させるケルセチン配糖体の働きにより、体脂肪を減らすのを助ける」と謳っている。メーカーによる商品紹介ウェブサイトには、効果を実証する試験の結果として、腹部全脂肪面積の変化量の推移を示す折れ線グラフが掲載され、「8週目から腹部全脂肪面積の低減が認められました」と書かれてある。ケルセチン配糖体を配合しないプラセボ対照飲料との変化量の差も大きく見える。何だか凄そうだ。しかし、である。健康食品の在り方に懐疑的な群馬大学の高橋久仁子名誉教授は、「体重は僅かだが増えていた」という意外な事実を根拠論文から読み取った。腹部全脂肪面積が減ったのなら当然、消費者は「体重も減った」と期待してしまう。この事実はサイト上からは見つけられなかった。冒頭のサラリーマンは、ウーロン茶重合ポリフェノール(OTPP)飲料である『黒烏龍茶』も偶に飲む。こちらは効くのだろうか? 黒烏龍茶は発売当初、「食後の血中中性脂肪の上昇を抑える」とだけ謳っていたが、その後に「体に脂肪がつきにくい」という文言が加わって、目下の売りになっている。

メーカーの商品紹介サイトには「脂肪の排出量を増やしてくれる」とあり、OTPPを多く含んだ飲料を飲んだ実験群は、対照群と比べて脂肪の排出量が約2倍に増えたことが強調されている。このグラフからは読み取れないが、被験者は脂質量が非常に多い食事を取っている。同じ効果についてのデータなのに、グラフの作り方で印象が随分変わるものだ。では、トクホ茶の筆頭格である高濃度茶カテキン飲料『ヘルシア緑茶』はどうか? 「茶カテキンを豊富に含んでいるので、体脂肪が気になる方に適している」と謳っているものだ。メーカーの商品紹介サイトには「おなかの脂肪が低減!」とあり、腹部全脂肪面積の変化量を示すグラフが掲載されている。茶系飲料と共にトクホ飲料のメジャーポジションに立つのが、トクホで最もよく使われている難消化性デキストリン(難デキ)を使ったトクホコーラだ。ブドウ糖の結合数が少ない「分子量が小さい澱粉」(高橋氏)がデキストリンであり、難消化性部分を分離して精製したものが難デキである。「脂肪の吸収を抑える」という難デキの効果は、根拠論文によると、難デキを摂取した実験群と摂取しなかった対照群の糞便中の脂質量の比較で実証している。しかし、この数値が「実用的に意味ある差なのか疑問」と高橋氏は疑問を呈する。「これっぽっちの“効果”で、乱れた食事がチャラになる筈がない」。トクホ飲料の効果データを検証すると、総じて効果を大きく見せるグラフがあって、マーケティング的演出たっぷり。但し、メーカーは嘘は吐いていない。トクホは、医薬品ではなく食品である。従って、「効果は小さくて当然」と高橋氏。問題は、「許可する側もそのことは重々承知しているが、その効果の小ささが消費者に十分に伝えられていないこと」(同)にある。2015年、“ミニトクホ”とも呼ばれる機能性表示食品という新たなカテゴリーが誕生した。機能性表示食品の『恵ガセリ菌SP株ヨーグルト』は、「内臓脂肪を減らす」という機能をアピールし、メーカーの商品紹介サイトでは、内臓脂肪面積の減少を示すグラフを載せている。ただ、体脂肪率を見ると、実験群・対照群共に増加している。論文では、「体脂肪率は、腹部脂肪や内臓脂肪とはあまり関連せず、摂取カルシウム量が多いと体脂肪率が低下するという報告がある。本試験では、試験食品以外の乳製品の摂取を制限した。摂取カルシウム量が低かったので体脂肪率が増加したのではないか」と分析している。何にせよ、消費者は「内臓脂肪が減るなら、当然、体脂肪率も減る」と思うだろう。購入を検討する際の判断材料として、メーカーは体脂肪率が増加した点も周知に努めたほうが親切だ。消費者が国の制度下にある健康食品に信頼を寄せ、メーカーが作成したグラフから過剰に期待し、結局期待外れに終わっても、どうやらこれは自己責任らしい。だが、消費者が効果を詳細に検証する為に、根拠論文を入手して読み解くのは簡単ではない。本誌編集部は今回、各メーカーへ商品の情報や試験データの提供を依頼したが、用意するメーカー側も、データを読む編集部側もぐったり。これを消費者個人に押し付けるというならば、トクホも機能性表示食品も難儀な代物である。

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【有機EL&半導体バブル】(11) 『ルネサス』が“身の丈”のAIチップを開発中

20170925 16
車載マイコン世界大手の『ルネサスエレクトロニクス』が、今年4月上旬、東京都内で開発者向けの年次会議を開催し、AI(人工知能)戦略を明らかにした。ITの大きなトレンドは、IoT(モノのインターネット)・AI・クラウド・クルマ(自動運転車)・5G(次世代無線通信)だ。日本の半導体・部品メーカーの多くはIoTへ向かっているが、AIを推進している企業は殆どいない。半導体メーカーでAI戦略を明らかにしたのはルネサスが初めて。5Gについては触れなかったが、それ以外には全て関与しており、世界の勝ち組と同様、トレンドをしっかりと捉えたビジネスを推進している。会議で見せたAIのチップ戦略は、身の丈に合った戦略だ。AIは、“学習”と“推論”の2つの機能を持つコンピューターシステムだ。例えば、多くの車種や人間の写真を記憶させて、「このパターンならば車、あのパターンならば人間」と“学習”する。“学習”に基づき、実際に認識した画像を「車なのか、人なのか、それ以外の物体か」を判断するのが“推論”だ。『インテル』や『エヌビディア』は、演算の得意な半導体チップで“学習”と“推論”双方を展開する戦略だ。処理能力は高いが、消費電力も大きく、チップのコストも高い。一方、ルネサスのチップは、比較的演算が少ない“推論”に特化している。

同社のチップは、“学習”に必要な演算よりも制御が得意だからだ。演算をフルに活用しなければならない“学習”はクラウドコンピューティングに任せて、自らが得意な分野にのみ注力する。これによって、“推論”に特化したチップを安価で提供できる。自分の得意な分野に集中することは、身の丈に合った戦略と言える。この戦略は、世界の勝ち組であるインテル・『サムスン電子』・『テキサスインスツルメンツ(TI)』・『TSMC』等が取ってきている戦略だ。彼らは、実現が不透明な事業に“社運”を賭けたりしない。嘗て、『シャープ』が堺工業団地で社運を賭け、総額1兆円の液晶設資を行った。当時、インテルや『IBM』に取材したところ、「当社では1兆円もの投資を1社で行うことはあり得ない」との答えが返ってきた。シャープがその後、没落したことは記憶に新しい。『日立製作所』・『三菱電機』・『NEC』のシステムLSI部門を母体とするルネサスは、不採算部門の継続等から経営不振が続いた。しかし、リストラを経て、2013年1~3月期に初めて営業黒字を計上した後、17四半期連続の営業黒字を計上した(※左上図)。一時期、経営者人選のトラブルが続いたが、昨年6月に呉文精氏が社長兼CEOに就任。成長戦略へと切り替えた。呉社長は就任直後、アメリカの『インターシル』を約3200億円で買収した。インターシルは、他の半導体ICへの電源を供給するするパワーマネジメントICを得意としている。ルネサスは、パワーマネジメントICを自身の得意なマイコン等とセットでユーザーに提供でき、活用法も提案する。ユーザーはルネサスの提案するチップセットを使って、独自の使い道を開発できる訳だ。ユーザーはルネサスから離れなくなる。この戦略は、インテル・TI・『アナログデバイセズ』・『ザイリンクス』・エヌビディア等、世界の勝ち組と類似している。自分たちの不足分を買収して補い、自社の強みを益々強くできる。5月、嘗てルネサスに救済の手を差し伸べた『産業革新機構』が、保有殊式を2割放出した。再建が完了したことが背景にあるという。今後は、世界の勝ち組と同様な身の丈に合った戦略を取る限り、着実に成長路線に乗るだろう。しかし、成長戦略の手綱を緩めれば、元の木阿弥になってしまう恐れはある。 (国際技術ジャーナリスト 津田健二)


キャプチャ  2017年6月13日号掲載

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