【薬のホント・健康食品のウソ】(15) 育児情報はググらない…デキるパパ・ママのリテラシー

巷に溢れる“眉唾”の情報の中でも兎角多いのが、育児に纏わるもの。インターネット・ママ友・親族等、怪しい情報の供給源は尽きない。何をどう見分けるべきか?

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今年3月、蜂蜜を市販のジュースに混ぜたものを離乳食として飲んだ生後6ヵ月の赤ちゃんが、乳児ボツリヌス症で死亡するという痛ましい事故が起こり、子供を持つ親の間に憤りと動揺が広がった。蜂蜜が1歳未満の乳児に禁忌であるという事実は、実は広くは知られていなかったのである。インターネット上のレシピ交換サイト『クックパッド』には、蜂蜜を使った離乳食のレシピが多数掲載されている。この事故により、運営側は急遽、このキーワードで検索した場合、「蜂蜜は1歳以下に与えないでください」という注意書きが表示されるようにした。巷に溢れる“トンデモ健康情報”の中でも、殊更“物量”が多いのが、妊娠・出産・育児に関わる情報である。「もっと母乳を出すには」「子供のアレルギーを防ぐためには」「離乳食の食べさせ方」「急な病気やけがへの対応」「予防接種」――等について、様々な怪しげな通説や俗説が存在する。育児は医療と異なり、「うちの子はこれで上手くいった」等の経験則による主観が独り歩きし易い。更に、「母乳等に関しては、厳密な意味で専門家がいない。開業助産師や自治体派遣の保健師等の中にも、科学的でない指導を行う人があまりにも多い」(小児科医の森戸やすみ氏)という。抑々、専門家でない人間が実しやかに自説を述べたものであることが、育児関連の情報にはままあるのだ。不確かな情報が溢れる中、親は何を頼ればいいのか? 先ず心掛けたいのは、困ったことや知りたいことが出てきた時に“ググらない”こと。インターネット上に掲載されている育児情報は、かなりの部分に主観が入っており、科学的根拠に基づかないものが多いと警戒すべきである。公共機関のサイト等から、信頼できるサイトに飛んで、サイト内を検索するのが望ましい。

蜂蜜で問題になった離乳食については、厚生労働省の『授乳・離乳の支援ガイド』、又は『世界保健機関(WHO)』の『補完食』が先ず当たるべき“原典”。これによると、1歳未満の乳児に与えることが明確に禁止されているのは、蜂蜜、それと飲料として飲む牛乳だ。牛乳は、乳児の体の機能が未熟なうちに与えると鉄欠乏症になることがある。但し、離乳食の食材として加熱して使う分には問題が無い。子供は細菌への抵抗力が弱い為、火を通していない卵や肉は避ける。加えて、歯が生えていない為、誤嚥や窒息の原因になるという意味で危険な形状の食物を避ける、刺激物を避ける――等といった謂わば常識的な点を守ればよく、注意すべきポイントは実はかなり絞られる。アレルギーについては、原因物質であるナッツや卵等を「離乳食の開始を遅らせることで食べさせない」ことが発症を予防するという通説があるが、これは間違い。授乳中の母親が食べることを控えたり、離乳食として与えるものから除去してもアレルギーが減らないことは、10年以上前から世界中のアレルギー専門家の間では常識だ。また、家族に既往歴があったり、既にアナフィラキシーショック等の重篤なアレルギー症状が確認されているといったことが無ければ、原因物質を食べさせるとアレルギー発症率が下がるということが、イギリスの研究グループによる2015年の論文で明らかになっている。万が一の事態に対応できるよう、病院が開いている平日の昼間に、最初は1口ずつ食べさせて様子を見て、大丈夫だったら少しずつ量を増やしていく方法で慣らしていけばよい。過度にアレルギーを恐れて対象食品を食べさせないのは、却って逆効果だ。予防接種についてはどうか? 子供は生後2ヵ月から多種類のワクチンを打つ。1回に何種類も同時接種したり、接種後に副反応による発熱等があったりする。そのせいか、「ワクチンを打つ必要はない」「同じ病気に罹った人にうつしてもらったほうがいい」といった俗説が後を絶たない。昨今の“ワクチン懐疑派”が生まれた背景には、先遣国でワクチンの普及によって重篤な病気が根絶され、その病気が身近でなくなったこともあろう。例えば、日本では2013年から自治体が接種費用を負担する公費接種が始まったヒブ(※ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)ワクチン。導入前には、年間600人が細菌性髄膜炎という重篤な病気を発症していた。発症した人の約7割が0歳児で、命に関わり、治癒しても後遺症が残る危険な病気である。この公費接種が始まった後は、発症がほぼゼロになった。だが、同時にワクチンの重要性についての一般の知識も薄れてしまった。公的な正しい情報を伝える側の情報発信の分かり難さも、育児情報に嘘が蔓延る原因だ。前出の厚生労働省の離乳食の手引きは、かなりわかり難い文体だ。その上、サイトの奥深くに埋もれている為、発掘するのに困難を伴う。ワクチンを打たないことによる弊害をわかり易く説明する公的なサイトも少ない。なお、今回問題になった蜂蜜について、メーカーには商品への警告表示を行う義務は無い。育児や子供の健康に纏わる正しい情報がきちんと行き届き、悲しい事故の再発を防ぐ為には、親側の情報リテラシーの向上も然ることながら、情報発信側にもう少し真面な形で一般に広く正しい情報を伝える努力が必要だ。

■覚えておきたい! 信頼できる育児お助けサイト
①厚生労働省…授乳・離乳の支援ガイド(離乳編)
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0314-17c.pdf
②世界保健機関…補完食
http://whqlibdoc.who.int/hq/2000/WHO_NHD_00.1_jpn.pdf
③NPO法人『VPDを知って、子どもを守ろうの会』…KNOW★VPD!
http://www.know-vpd.jp/
④日本医師会…白クマ先生の子ども診療所
http://www.med.or.jp/clinic/


キャプチャ  2017年6月17日号掲載

テーマ : 医療・健康
ジャンル : ニュース

【南鳥島に注目せよ!】(30) レアアース泥の採泥&揚泥プロセス

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東京大学の加藤教授が座長を務める『レアアース泥開発推進コンソーシアム』の活動は、2016年10月で2期目を終えて、第3期目に突入した。多業種連携は勿論、多学問領域の連携や産学官自の連携等で知見やノウハウを結集。前回で紹介した以外には、あの『トヨタ自動車』もコンソーシアム参加企業に名を連ねている。4つの部会が其々担当する分野において最適解を模索しており、どのように海底での採泥や揚泥を行うかも、概ね定まりつつある。探査・モニタリング部会による海底探査によって、南鳥島の周辺海域におけるレアアース泥の分布は、2015年の段階でほぼ全て明らかになっている。現在は5000ppm以上という超高濃度層にターゲットを絞った海底探査が進められており、有人潜水探査船『しんかい6500』を使ったサブボトムプロファイラ(地層探査装置)による探査も実施。海底面から2~3m下の地層に、超高濃度層とみられる音響反射面が確認できたという。つまり、採泥や揚泥を行う候補地は、かなり絞り込めている。あとは、その場所で“どのように”効率よく作業を行うかだ。ではここで、右に掲載したイメージ図をご覧頂こう。これは、レアアース泥開発システムの全体像を図解したものである。

海底には水中バックホウがずらり。これらは、水中ステーションを介して遠隔操作される。掘削作業中の位置情報をトランスポンダ等から得ることで、スムーズな作業が可能だ。先ずは、海底面の表層を担当するバックホウが、高濃度レアアース泥層の手前まで掘削。次に、レアアース泥の採取に適した“集泥へッド”を装着したバックホウが、レアアース泥の採泥を行う。バックホウによって採泥したレアアース泥を、海底に設置したハイドロサイクロン(※液体中にある物質のを分離・分級・濃縮等を行う装置)によって、アパタイトを含んだ粒の粗い成分だけに分離。これを、海上のレアアース泥採掘船団から揚泥する訳である。分離によって更に高濃度となったレアアース泥は、海底に打ち込まれた全長6000mの太いパイプを通って、“加圧式エアリフト方式”にて揚泥される。その後、揚泥したレアアース泥は船上で脱水されて、“脱水ケーキ”と呼ばれる状態となり、選鉱・製錬を行う陸上の工場に海上輸送されることになる。あとは、作業支援や電力供給を行う作業支援台船や、採掘船団からの海上輸送を担当する輸送船、一連の工程で出た残渣の泥を埋め立て地に運ぶリクレーマ船等も、海上での工程に欠かせない。以上が、採泥や揚泥がどのように行われるかの概要だ。既存の機器や手法を最大限に利用した、できるだけ低コストで採泥や揚泥が行えるシステム構築が意識されているのが、実証実験に向けた試行錯誤の段階でもよくわかる。南鳥島の周辺海域にレアアース泥採掘船団が姿を現す日が、今から待ち遠しい。


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テーマ : 環境・資源・エネルギー
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【薬のホント・健康食品のウソ】(14) 食品添加物は危険なのか?…“本当の悪者”は別にいる!

食品添加物は嫌われ者だが、本当に危険なのか? 実際は、悪い食品を誤魔化すのではなく、安全性向上等の役割も果たしている。本当に危険なのは、添加物を悪者扱いして儲ける輩である。 (取材・文/科学ジャーナリスト 松永和紀)

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『生活協同組合』で昔から行われてきた“実験”がある。漬物やお菓子等に食酢を入れて着色料を溶かし出し、白い毛糸を入れる。毛糸が染まったら合成着色料、染まらなかったら天然着色料。「怖いですねぇ、こんなに染まるんですよ。合成着色料は石油が原料で、発癌性や催奇形性の疑いがあり…」。組合員を集めた学習会で行うと、視覚に訴える効果は抜群だった。天然か人工合成かで化学物質の有害性は判断できない。天然物でも極めてリスクの高いものがあるのは、フグや毒きのこを考えれば直ぐにわかる。毛糸染めで食品としての安全性が判明する筈もなく、こけおどしもいいところ。こんな手法で、生協は「私たちの扱う食品はそこらの商店とは違う。安全、健康」と謳ってきた。だが、多くの生協は変わってきた。食品中に、天然由来のリスクの高い物質や微生物がある場合も少なくない。対処する為に、「食品添加物を使ったほうが寧ろ安全を守れる場合もある」ということが理解されるようになってきた。例えば、ハムやソーセージの製造に発色剤として用いられる亜硝酸塩。体内でアミン類という物質と反応し、ニトロソ化合物という発癌物質を生成すると言われ、1970年代に多くの生協が発色剤不使用のハム&ソーセージを開発した。商店やスーパーマーケットとの差別化には、とても効き目のある商材だった。しかし、「野菜に多く含まれる硝酸が体内で亜硝酸になっているとみられ、それに比べると発色剤としての使用量は少なく、リスクの懸念は無い」というのが科学者の意見の大勢。発色剤は色を良くし、肉の臭みを取ると共に、ボツリヌス菌の増殖を抑えるとされている。

こうしたことがわかり、多くの生協は、発色剤を用いたハム&ソーセージも販売するようになった。現在の売れ行きは発色剤を用いたほうがよいと聞くが、昔からの組合員は納得しない。「生協は当初の精神を失い、悪いものでも売れればよいとなってしまった」と嘆き、組織幹部を突き上げる現象が、今も各地の生協で繰り広げられている。筆者は幾つかの生協の広報誌で連載しており、講演もよく頼まれる。その際には必ずと言ってよいほど、「発色剤の問題に触れてほしい」と頼まれる。生協は、組合員の「添加物は悪いに決まっている」という思い込みと、科学的な安全管理の間で苦しんでいる。考えてみれば、食品添加物批判の歴史は、常に「危ないから、無添加の我が社の○○を!」というセールストークとセットだった。日本では昔、水銀が防腐剤として使われたり、亜硫酸銅等の鉱物が着色料として用いられたりした時代があり、1947年に食品衛生法ができて、食品添加物としての規制が始まった。当初は水銀や鉱物等、非常に有害な物質の使用を取り締まることに力点が置かれ、審査は甘く、使用が始まった後に発癌性等が明らかとなり、禁止されたものも出た。例えば、チクロやズルチン等の甘味料、豆腐の殺菌料のAF2等だ。こうした経緯から、「添加物は体に悪い」という世間の印象は強固になった。事件を経たからこそ、現在の食品添加物の審査は非常に厳しい。右上表のような試験で問題ないことが確認され、内閣府食品安全委員会の専門家の審査を通り、明確なメリットのあるものだけが使用を認められる。その厳しさが一般消費者には知られていない。食品添加物は、消費者のメリットもあるからこそ使われる。食品のリスクの中で何といっても深刻なのは、微生物の増殖による食中毒。日本で発生している食中毒の9割は微生物が原因で、死者が出る場合もある。保存料は微生物の増殖を抑え、品質の劣化や食中毒を防止するのに役立つ。なのに、保存料は嫌われ、コンビニエンスストアは態々“保存料不使用”を謳う。保存料の代わりに抗菌性の高い食品添加物を複数使うという“トリック”が駆使されているのだが、多くの消費者は気付かない。野菜は、土壌にもいる腸管出血性大腸菌等に汚染されている可能性があり、サラダ用の洗浄野菜は、殺菌料で処理されていなければ、怖くて食べられたものではない。殺菌料は、食品衛生法により「使用した後に水で洗い流し、野菜に残留させてはならない」と決まっているので、食べる時には懸念はない。だが、「危ない殺菌料を使っており、栄養素も全部無くなっているから、食べないほうがいい」という誹謗中傷が絶えない。

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ジャンル : ニュース

【南鳥島に注目せよ!】(29) 産学一体で進んでいる開発技術の確立

20171101 07
レアアース泥の発見者であり、海底資源研究の第一人者でもある東京大学の加藤教授。彼は現在、『レアアース泥開発推進コンソーシアム』の座長を務めている。これは、レアアースの安定供給だけでなく、新たなレアアース需要の開拓による国内産業の活性化も目的として、2014年11月に設立されたもの。コンソーシアムとは、ある目的の達成の為に協力し合う組織や人等の共同事業体だ。ハイテク分野に強みを持つ日本の産業にとって、レアアースは必要不可欠なもの。調達リスクの無い国内でのレアアース生産は、日本の製造業にとって“福音”以外のなにものでもない。これを現実とする為に、多数の企業・大学・研究機関・行政機関が参画。開発の実現に向けた様々な取り組みが、産学一体で進められている。その構成だが、高濃度レアアース泥の分布を海面近くから探査する技術や、採泥中の海底環境の変化をモニターする技術等の確立を目指すのが“探査・モニタリング・環境”部会。これには、『深田サルベージ建設』・『商船三井』・『日本郵船』の3社が参加している。そして、海底における採泥や揚泥の技術を比較検討しているのが“採泥・揚泥”部会。現在は、加圧式エアリフト方式による揚泥技術の開発を進めている。加圧式エアリフト方式については、左図を見て頂くとわかり易いだろう。

20171101 08
初年度から『三井海洋開発』・『東亜建設工業』・深田サルベージ建設・商船三井・『スターライト工業』の5社が参加していたが、現在では『日本海洋掘削』等民間4社に加えて、官界からも『海洋研究開発機構』・『海上・港湾・航空技術研究所』が新たに参画。揚泥実験やシミュレーション等、南鳥島周辺海域での揚泥実験に向けた準備が着々と進められている。そして、泥から効率的にレアアース濃集鉱物を選鉱する技術や、既存技術を用いた製錬手法の実証等を担当しているのが“選鉱・製錬”部会だ。民間からは、『三徳』・『IHI』・『信越化学工業』・『三井金属鉱業』の4社が参加している。実験によって、レアアースが濃集しているアパタイトを効率よく抽出できる上に、揚泥量そのものも大きく減らすことができる手法が既に考案されている。そして最後に、レアアース回収後に残る泥を低コストで処理する技術や、その再資源化技術を探索している“泥”部会。東亜建設工業・『太平洋セメント』・IHIの3社が参加しており、リユース、リサイクル、リデュースという“3R”の視点から研究開発が進められている。課題である泥に残る水分量の多さは、港湾土木分野の既存技術を応用してクリア。泥を焼成してブロック状に成型したリサイクル資材等、幅広く有効活用できる技術を考案しており、今後も模索が続けられる。このように、様々な知見やノウハウを有する企業が積極的に参加し、レアアース泥の開発技術確立に向けて一致団結。各部会が今も急ピッチで研究を進めている。


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テーマ : 環境・資源・エネルギー
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【南鳥島に注目せよ!】(28) 商業化を目指す諸外国の取り組み

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ここまでは主に、日本における海洋資源の開発プロジェクトを紹介してきた。レアアース泥・海底熱水鉱床・メタンハイドレート等、いずれの開発プロジェクトも商業化に手が届くところまできている。では、海外はどうか? 新たな開発プロジェクトが次々に立ち上がる等、日本に負けず劣らずの大盛り上がり。公海上での海底熱水鉱床の探査権を『国際海底機構(ISA)』から取得した国も、2011年に中国とロシア、2012年に韓国とフランス、2014年にインドとドイツと、毎年のように増え続けている。2013年以降は、EUが支援する海洋資源の開発プロジェクトが相次いでスタート。例えばその1つが、“深海鉱物資源開発のための革新的ソリューション事業”こと『Blue Miningプロジェクト』だ。深海という極限環境に適用できる技術の開発を行う為に、オランダ、ドイツ、イギリス等から19の企業と研究機関が参加。コンソーシアムを組成して、実行にあたっている。開発のターゲットとするのは海底熱水鉱床とマンガン団塊で、2018年1月末までの4年間の為に1500万ユーロの予算を計上。

FS調査(※プロジェクトの実現可能性調査)の青写真作成を目標とする等、探査・生産技術開発に注力したプロジェクトと言えるだろう。そしてもう1つが、深海の鉱物資源開発における環境影響の低減技術の開発を目的とする『MIDASプロジェクト』。先のBlue Miningと密接に関わり合うプロジェクトで、海底熱水鉱床とマンガン団塊だけでなく、コバルトリッチクラストやレアアース泥も対象としている。ロシアを含むヨーロッパ11ヵ国から、32の研究機関・企業・社会科学&法律関係企業・NGO等が参加。2013年11月から3年計画で進められたプロジェクトに、1200万ユーロの予算が投入された。海底資源の開発において環境保全が如何に重要かは、この金額からも推し量れる。お隣の韓国でも、海洋資源の開発をにらんだ動きが活性化している。1983年にマンガン団塊の調査を開始する等、海洋資源の存在に早くから目をつけていた韓国。2001年には、ISAとの間で探査契約も締結している。その後も海底熱水鉱床やコバルトリッチクラスト等、公海上での探査対象を拡大。調査を行う海域も拡大傾向で、海底熱水鉱床についてはインド洋公海域で調査が実施されている。2002年からは、フィジーやトンガで海底熱水鉱床の調査を開始。両政府から探査鉱区も取得済みで、2009年にはトンガでの海底熱水鉱床開発の為に『海底熱水鉱床技術開発機構』が設立された。政府主導ではあるが、民間企業5社が出資する等、商業化を見据えた動きもかなり進んでいる。日本でも環境保全、探査・生産の両面から開発プロジェクトが推進された結果、技術が確立されて民間主導のプロジェクトに移行するまで、あと少しのところまで来ている。あとは焦らず静かに、商業化達成との吉報が届くのを待ちたい。


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【南鳥島に注目せよ!】(27) BSRの上にあるメタンハイドレート

20171018 10
前回、ほんのさわりだけ解説した地震探査法によるメタンハイドレートの探査。音波を利用した方法なので、単純に“音波探査”とも呼ばれている。これが具体的にどのようなものかを、今回はもう少し詳しく解説させて頂こう。先ずは左図左側をご覧頂きたい。海上の船から、エアガンと呼ばれる音波の発生装置や、ストリーマーケーブルと呼ばれる音波をキャッチする装置が延びているのがわかるだろう。最初に、エアガンが地震波と呼ばれる微弱な音波――つまり“振動”を発振。この地震波は、海中から海底、そして海底面下の地層の中にも伝わっていく。地震波がどこかで反射して海中に戻ってくるのだが、海底面で反射する場合もあれば、その下にある地層の“境界”で反射する場合もある。海底にある地層の構造によって、地震波の伝わり方や、反射する層が変わってくるのだ。

再び海中へと戻ってきた音波は、海面の近くにあるストリーマーケーブルによって受振され、データとして記録される。これによって、海底の地層がどのように重なっているかという“構造”が間接的に判明する。これが地震探査法の概要である。そして、海底の地層に石油・天然ガス・メタンハイドレート等が眠っている場合には、特有の反射記録を示す。これが、メタンハイドレートが存在を示す“BSR(海底疑似反射面)”と呼ばれるものだ。地震探査法から浮かび上がった、海底面とほぼ平行に記録される“線”の存在。通常の地層の重なり方では説明できないもので、これの正体が何であるのか、当初は誰にもわからなかったという。メタンハイドレートが存在するのは、“低温高圧”という条件をクリアする場所のみ。これに合致するのが、水深が500mよりも深い海域の、海底面から400~500mの深さに存在するメタンハイドレート安定領域である。そして、BSRの周辺地層とメタンハイドレート安定領域は、ぴたりと一致する。BSRよりも上にメタンハイドレートが存在し、BSRより下には存在しないという地層構造が、地震探査法のデータに“線”を浮かび上がらせていたのである。その後の掘削調査でも、BSRが認められる海域でのメタンハイドレート回収に成功。仮説が実証されたことで、現在では“BSRがある=メタンハイドレートがある”という考え方が定着している。因みに、2001年度にスタートした日本でのメタンハイドレート開発計画は、現在、第3フェーズに突入。第2フェーズではガスの生産実験が行われ、2013年3月には海上における約6日間連続のガス生産に成功している。2018年度までに商業化の実現に向けた技術整備を進め、その後に民間主導による商業化プロジェクトの開始を目指すという青写真。開発は我々の想像以上に進んでいる。


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【南鳥島に注目せよ!】(26) 資源量と埋蔵量は似て非なるもの

20171011 07
早期の開発に向けた調査や実験が着々と進められている我が国の海洋資源。ターゲットとする資源によって調査の内容は異なるが、共通する部分もある。資源が“どこ”に“どれだけ”存在するかの調査が最優先だという点だ。これが判明しなければ、何も前には進まない。例えば、メタンハイドレートの場合だと、この探査には地震探査法が用いられている。詳しくは次回解説するが、地震波と呼ばれる音波を人工的に発生させて、これを海底の地層に向けて発振。海底で反射して戻ってきた地震波を受振器で捉えることで、海底面下の構造を調べるというものだ。これによって判明するのが、“海底疑似反射面(BSR)”と呼ばれる特殊な反射面。海底面とほぼ平行に現れるのが特徴で、このBSRが見つかるのは、メタンハイドレートが存在する上での必要条件と言える。要するに、BSRが確認された場所にメタンハイドレートがある可能性が高いということだ。ここで右図を見て頂こう。これは、産学官が連携して進めているメタンハイドレート開発プロジェクトで判明した日本周辺のBSR分布図である。

日本のあちこちでBSRが確認されているが、詳細調査により、海域の一部に濃集帯が確認されているのが東部南海トラフ海域。濃いブルーに塗られている和歌山県~静岡県にかけての海域で、BSR分布面積は5000㎢。ここに眠るメタンの原始資源量は、液化天然ガス(LNG)換算で何と約8億4000万トンと推測されている。ここで必ず理解しておきたいのが、“資源量”と“埋蔵量”の違いだ。イメージ的には似ているかもしれないが、実際は全く違う。例えば、自分の持っている無農薬の畑で100㎏分の野菜が収穫できたとしよう。しかし、よく見ると半分以上で虫食いが発生しており、売り物にならなくてがっかり。商品として販売できたのは、全体の4割にあたる40㎏分だけだった。このケースを資源に当て嵌めると、単純に収穫できた100㎏が“資源量”で、商品として販売できた40㎏が“埋蔵量”にあたる。つまり、資源量とは、存在が見込まれる総量を単純にカウントしたものに過ぎない。技術的に採掘可能であるかどうかや、経済的に回収可能かどうかが考慮されていない段階での量なのである。ところが、未だ生産方法が確立されていないメタンハイドレートは、資源量から実際にどれだけの割合でメタンが回収できるかという回収率が算出できない。そして、資源量と埋蔵量は“資源量×回収率=埋蔵量”という関係にあるので、メタンハイドレートの埋蔵量は、現時点では出したくても出せないのだ。あとは、埋蔵量が不変ではなく刻々と変化するのも、覚えておきたいポイント。新たに資源が発見されるという理由の他に、技術開発による回収率の向上によっても増加する。石油が中々枯渇しないのには、こういう秘密があったのである。


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【南鳥島に注目せよ!】(25) 惜しみなく投入される最新鋭の機器

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これまでもお伝えしてきたように、海洋資源の開発では、船上や深海中で様々な調査が行われる。生産効率の追求は勿論、環境保全や開発の安全性向上を考える上でも、綿密な調査は欠かせないもの。データが無くて困ることはあっても、多過ぎて困ることはない。その為に惜しみなく投入されているのが、最新機能を搭載した船舶や調査機器。『石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)』の“旗艦”である『白嶺』も、八面六臂の活躍を見せている。本連載に何度も登場する白嶺は、海洋資源の探査や開発を加速する為に、JOGMECが『三菱重工業』に発注したもの。下関造船所で建造され、2012年1月末にJOGMECへと引き渡された。それまでは『第2白嶺丸』が長期に亘り活躍してきたが、船の大きさや構造上の制約から、20m以上の深部ボーリング探査ができないことや、長時間の掘削を可能とする自動定点保持機能を有していないこと、環境や生態系保全の為の詳細な調査ができないこと等、能力的な限界が生じていた。

しかし、国家予算から300億円近くが投入された白嶺はモノが違う。船としての基本性能の高さも然ることながら、海底の地形に影響されずに最大水深2000m、最大掘削長400mのボーリングを可能とする船上設置型掘削装置や、詳細な海底地形図の作成を可能とするマルチビーム音響測深機、海底面近くの地質構造が把握できるナロービーム表層断面探査機等、最新鋭の調査機器をフル装備。『日本船舶海洋工学会』が主催する『シップオブザイヤー』で、2012年に技術特別賞を受賞してもいる。あとは、海底の精細なデータが取れる三次元物理探査船『資源』や、『海洋研究開発機構』が保有する世界初のライザー式科学掘削船『ちきゅう』も、今後の海洋資源開発に欠かせない存在。有人深海探査船『しんかい6500』や、海上保安庁の自立型潛水調査機器『ごんどう』等、深海に潜って活躍する機器の活躍も見逃せない。レアアース泥・石油・天然ガスの開発に投入されそうなところでは、“生産浮体”と呼ばれる船舶も大きな役割を果たす。採取された資源を貯蔵するだけでなく、そこで働く労働者や機器等も収容する、開発地における“母船”となるものだ。そして調査機器も、海底の堆積物や海水をそのままの状態で採取できるマルチプルコアラー、分析する為の海水を採取するロゼットサンプラー(採水装置)、海流等の長期観測に使われる超音波ドップラー流速計、海水中を沈降する粒子を集める装置であるセジメントトラップ等、多種多様。こういった機器による表舞台に出てこない地道な調査が、海洋資源の開発を支えている。


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【有機EL&半導体バブル】(12) 有機EL装置・素材は液晶需要の恩恵も

20170929 06
有機ELと半導体の投資が活発化しており、現在の株式市場のテーマの1つとなっている。特に、製造装置や素材で日本勢が存在感を示している。現在は液晶が主流のディスプレイだが、スマートフォン向け中小型等では有機ELも台頭しつつある。有機ELの新型スマホへの搭載を見据えた投資が活発な上、液晶では中国で国策に乗った大型パネル工場投資の案件が進行中だ。この為、ディスプレイ製造装置メーカーが恩恵を受けている。液晶と有機ELの構造には共通点もある。液晶分子や有機ELの発光材料の動きを制御する“バックプレーン”という部材は、両者でほぼ同じものである。『アルバック』はバックプレーンの製造装置を手がけている為、液晶と有機EL両方の投資増の恩恵を享受している。また同社は、有機EL特有の構造である発光層等の蒸着工程で使われる装置も展開している。更に、“クライオポンプ”という部品では有機EL向け用途で、事実上の世界基準とも言えるデファクトスタンダードの地位を確保している模様だ。一方、有機EL製造装置がメインになっている銘柄としては、自動車やディスプレイを含む各他産業分野向けに生産設備を供給している『平田機工』が挙げられる。同社は早くから有機ELの知見を積み重ねてきた。様々な装置を提供することが可能だが、現在は特に付加価値の高い“蒸着装置”に注力している。この装置は『キヤノントッキ』が提供する有機EL製造ラインに組み込まれて販売され、急速な伸びを見せている。

素材・部品の関連では、韓国に拠点を持ち、ディスプレイ用光学フィルムや有機EL向けタッチセンサー等を展開している『住友化学』が注目される。有機EL搭載の新型スマホ向けでは、光学フィルムを中心に業容を拡大する可能性が高いようだ。『日本写真印刷』も注目される。同社のタッチセンサーは現在、主にスマホではなく、タブレット端末に供給されている。同社のタッチセンサーは、液品に付ける外付けタイプ。しかし、スマホの液晶ディスプレイでは、“インセル型”という液晶に内蔵する形式が勢力を伸ばしている。インセル型はパネルの薄型軽量化が可能な為だ。ただ、有機EL搭載スマホではインセル型が技術的に困難となる為、同社の外付け型が飛躍する可能性がある。事実、同社は設備投資・人員増強を進めたスマホ向け需要取り込みの準備が最終段階を迎えている模様だ。スマホの高容量化、データセンター向け需要の増加、自動車の電装化等、複数の成長要因を持つ半導体。半導体各社は、大容量化の為に、1枚の基板に如何に細かい線幅で回路を描くかという“微細化投資”を続ける。また、NANDフラッシュの積層化(※基板を積み重ねて回路を増やすこと)等、新たな技術に関連した投資も活発である。旺盛な投資意欲を背景に、半導体製造装置大手の『東京エレクトロン』や『SCREENホールディングス』等は好調な需要を享受している。チップの切断用装置等を手がける『ディスコ』は、装置の他にブレード(※切断する刃)等の消耗品も手がける。消耗品は、装置が稼働すれば安定的に需要が発生する。装置販売のみに頼らないビジネスモデルの為、業績安定感は高そうだ。高水準な受注の継続性に関する警戒感等は出始めているものの、当面の間、半導体製造装置は株式市場の中心的テーマとなりそうだ。また、時期は不透明だが、ハイテク産業の育成を急ぐ中国での国策的な投資案件も出てくる可能性があり、中期的に注目される。材料分野での注目はシリコンウエハーか。シリコンウエハーは、特にリーマンショック後に大きく値下がりし、メーカーの投資意欲は低下している。一方で、ウエハーの出荷面積は過去最高水準に達しており、足元は深刻な需給逼迫状態となっている。この為、今年初めに主力の直径300㎜品を中心に値戻しがあったが、依然として増産投資に回す価格水準には届かない。ウエハーメーカーが増産投資に動く為には、更に大幅な値戻しが実現する必要がある模様だ。ウエハー世界大手の『信越化学工業』・『SUMCO』は今後、値戻しによる採算改善を享受する可能性がある。また、モニターウエハーの再生事業を行っている『RS Technologies』も稼働が好調だ。モニターウエハー とは、製品用ウエハーと共に半導体製造ラインに投入される。抜き取られた後、ラインの稼働状況やウエハーの出来栄えの評価に使われる。モニターウエハーを洗浄等で再生すれば、新たなモニターウエハーを買わずに済み、コストダウンに繋がる。再生事業を手がける同社は、ウエハー関連の中堅企業として注目できそうだ。 (『三菱UFJモルガンスタンレー証券』投資アナリスト 松丸修) =おわり


キャプチャ  2017年6月13日号掲載

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【南鳥島に注目せよ!】(24) 急がれるエネルギー自給率の向上

20170927 05
メディアでもよく取り上げられている“自給率”というテーマ。大体の場合は、日本における自給率の低さを懸念したり、警鐘を鳴らすような内容である。食料自給率等は、まさにその典型だろう。日本人に供給されているカロリーの内、国産食品によるものが占める割合を表したのが、“カロリーべース食料自給率”と呼ばれるもの。1965年には73%だったものが、食生活の変化もあって、現在では40%以下にまで落ち込んでしまった。とはいえ、この数字、エネルギー自給率の低さに比べれば可愛いもの。1次エネルギーにおける日本の自給率は、東日本大震災の影響で原発がストップした2012年には、何と6.0%にまで低下している。その内訳は、水力15%、天然ガス0.7%、原子力0.6%、原油0.1%、太陽光や水力等の再生可能エネルギー3.1%だ。『経済協力開発機構(OECD)』に加盟する国の内、1次エネルギー自給率が日本よりも低かったのは、人口が60万人以下であるルクセンブルクのみ。これはもう、断トツの最下位と言って差し支えないだろう。国土が狭く、陸上の資源に乏しいのは事実だが、陸地面積が日本よりも狭いイギリスが60.7%、遥かに狭い韓国でも18.0%なのだから、そこに理由を求めるのは苦しい。

何らかの理由でエネルギー資源の輸入に問題が生じた場合、このままではひとたまりもない。この脆弱性を如何に修正するかは、今後に向けての大きな課題と言える。とはいえ、ここまでただ手を拱いていた訳ではない。エネルギーの供給を石油だけに頼る状況からは、上手く脱却できたと言えそうだ。原油は、輸入先がどうしても中東に偏ってしまう。サウジアラビアやUAEで大規模な紛争でも起きれば、エネルギーの安定供給は大ピンチ。“シェール革命”に成功する前のアメリカでも、中東原油への依存はかなり問題視されていた。しかし、天然ガスや石炭の比率を上げることで、リスクはかなり軽減された。天然ガスはオーストラリア、カタール、マレーシア等が主な輸入先で、石炭はオーストラリアとインドネシアからの輸入が主体と、上手く分散できている。あとは、原子力に頼れなくなったエネルギー自給率を如何に向上させるかだ。お手本とすべきは、やはりアメリカのシェール革命だろう。地下深くにあるシェール層の掘削を可能とする技術革新が、アメリカを一気に産油国へと変えた。ならば、近海に豊富な海洋資源を持つ日本にも、それに近いことができる筈だ。日本の人口は減少を始めたが、世界の人口は未だ増加を続けており、エネルギーの消費量も右肩上がり。新興国の急成長もあり、エネルギー資源の価格が更に高騰するケースは十分に考えられる。エネルギーの安定供給に支障が出たら一大事だ。そういった観点からも、エネルギー自給率の向上に繋がる海洋資源の開発は急務。是非、日本にも“革命”が起きてほしいものだ。


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