【霞が関2017夏】(12) “仕事人内閣”に戦々恐々…官僚もつらいよ

安倍改造内閣は、各省庁の副大臣と政務官が昨日決まり、本格始動した。トップの号令で仕事のやり方や職場の雰囲気が変わるのは世の常。「仕事人内閣」(安倍晋三首相)に仕える霞が関の官僚たちの表情を追った。

■内閣府…レクに行くのが怖い
「経済最優先といって大臣が代わったから、発信力は高まるかもしれない」――。茂木敏充経済財政再生担当大臣の就任に、内閣府では歓迎の声があがる。内閣官房の中堅職員も、「予想通りの大臣が就いた。成長戦略にも精通している」と持ち上げる。尤も、「アベノミクスの初期と比べて、PRすべき中身が無くなってきているのも事実。地道にやるしかない」(課長クラス)との見方は共通する。別の心配もある。茂木氏は仕事への厳しさで有名だ。「就任早々、雷を落とされた職員もいるようだ」との情報が駆け巡る。「政策にとても詳しいので、レク(※レクチャー、官僚による説明)に行くのが怖い」と話す官僚も。官僚も、上司の顔色を窺うビジネスパーソン。「我々自身が働き方改革と逆行しないか心配だ」との声が、複数上がっている。

■農林水産省…新大臣は農林族と異なるタイプ
「転校生が学級委員長になったみたい」――。ある農林水産省の中堅官僚は、斎藤健大臣をこう表現する。斎藤氏は経済産業省出身で、官僚時代にはITや日米自動車交渉を担当する等、産業政策に明るい。当選回数僅か3回での抜擢は、産業界の力を借りて農業の構造改革を目指す安倍政権の意欲がみてとれる。自民党の農林部会長や農水副大臣を歴任し、農協法の改正や生乳流通の自由化等に関わってきた。農水省幹部は、「農協(JA)と持ちつ持たれつの農林族議員とは全く異なるタイプ」と話す。「産業としての農業は、新しい展開を図らないとジリ貧になる」。斎藤氏は4日、農水省の講堂で職員に早速、発破をかけた。農協改革に意欲を示す奥原正明事務次官とも近い間柄。『JAグループ』は、「次はどんなタマが飛んでくるのか?」(関係者)と戦々恐々としている。

■総務省…予算確保に奮闘してくれそう
改造の目玉人事だった野田聖子大臣は、郵政大臣を務めた経験があり、総務行政に詳しい。総務省内では、「予算を確保する為に奮闘してくれそう」と突破力に期待する声が出ている。就任会見でインターネットの安全性を課題に掲げ、「サイバーセキュリティーへの意欲が強いのではないか?」との見方が出ている。「幾つか温めているもの(※政策)がある。お披露目するのを乞うご期待」と張り切る野田氏。“耳の痛いこと”を言われるのは、安倍晋三首相だけではないかもしれない。

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【霞が関2017夏】(11) アイドルを独禁法で守れるか…公取委が研究会

カルテルや企業の独占行為の摘発を担い、一般の人々には殆ど馴染みのない『公正取引委員会』。霞が関でも一際特殊なこの役所に、先月以降、昨年解散した『SMAP』を始めとするアイドルファンからの“激励電話”が相次いでいる。「雇用契約を結ばず働くフリーランスの人材の保護の為、公取委が独占禁止法の活用を模索している」と報じられた為だ。それが何故、アイドルファンを刺激したのか? 公取委は今月にも専門家による研究会を作り、厚生労働省やスポーツ庁等と一緒に労働市場と独禁法の関係について議論する。委任契約や請負契約で仕事をし、雇用契約を結ばないが為に労働法制に守られていない人材が、企業に不利な取引条件を押し付けられるのを防ぐ為だ。そうした“雇用契約によらない働き方”をしている人材の典型が、芸能人やプロスポーツ選手。実際に公取委は、芸能人やプロスポーツ選手の契約実態を把握しようと、大手芸能事務所やプロ野球球団等に接触している。そうした動きの一部が報じられ、「解散の背景には事務所との確執がある」とみるSMAPファンの期待を高めたという訳だ。ただ、公取委は「個別の業界の摘発を想定した研究会ではない」(幹部)と、やや困惑気味。研究会での議論も、プログラマー、システムエンジニア、デザイナー等のように、フリーで働く専門人材全体をカバーする内容で、現時点ではややファンの期待先行といった状況だ。とはいえ、これまで公取委と芸能界やプロスポーツ界の間には、浅からぬ縁がある。古くは1950~1960年代に遡る。『松竹』・『東宝』・『東映』等大手の映画製作・配給会社6社が、「他社と契約している俳優が出演した映画は、自社の系列映画館で上映しない」という趣旨の協定を締結。これを公取委が問題視したが、東宝が協定脱退したのを機に状況が改善した為、不問となった。

1978年には参議院の法務委員会で、プロ野球のドラフトがカルテル(=不当な取引制限)に該当するかどうかが議論になった。ここに出席した公取委幹部は、「プロ野球の選手契約は雇用契約に類似した契約であり、独禁法が想定する“取引”とは違う」と答弁して、「カルテルには該当しない」という考え方を示した。要するに、「独禁法が対象としているのは、独立した事業者同士の“取引”で、雇用契約のようなものは対象外」ということだ。僅か3往復程度のやり取りだが、この答弁はその後も引き継がれることになる。『日本プロ野球組織』が1994年、新人選手の契約金への上限設定が独禁法に触れないかどうかを相談した際にも、公取委はこの考え方を基にして、「直ちに違反するものではない」と口頭で回答した。独禁法専門家の中では、こうした公取委の姿勢を疑問視する声が予てよりあった。優秀な人材の確保競争が激化し、企業と人材の関係が多様化する中で、「『独禁法が保護対象としている類の契約ではなさそうだから』という理由だけで何もしなくて良いのか?」という問題意識だ。独禁法が専門の池田毅弁護士も、予て問題提起をしてきた1人。「芸能人と事務所のトラブルに限らず、雇用契約によらない働き方が広がる現在では、独禁法を活用できる範囲は広がっている」とみる。ある著名な独禁法研究者もツイッターで、「雇用契約が独禁法の適用対象外と考えたことはない」との考え方を示し、労働分野での活用に前向きだ。公取委の杉本和行委員長は、「インターネットを通じて企業と人材がマッチングされることで、フリーランスという就労形態が今後増える。嘗て類似した労働形態が存在したのが、芸能界やプロスポーツ界。こうした世界への独禁法の適用は、これまでグレーゾーンとして対応してこなかった」と話す。副業・兼業等も含めて1000万人以上いるとされるフリーランスの人材。そうした人々にとって、フェアな働き方とは何か? 働き方改革の本質に関わる議論が、霞が関の意外な場所で始まろうとしている。 (八十島綾平)


⦿日本経済新聞電子版 2017年8月1日付掲載⦿

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【教科書に載らない経済と犯罪の危ない話】(52) アフガニスタンを巡るアメリカ、ロシア、マフィアの三角関係

数年前、シンガポールの『HSBC銀行』から口座凍結の通知が来た。マネーロンダリングやテロ資金対策を国際間で行う『金融活動作業部会(FATF)』の指示によるものだ。通知書に添付された書類には、筆者と同じように凍結された個人・法人の名前が並んでおり、日本人も私の他に3名が入っていた。凍結の理由は、『アルカイダ』並び『タリバン』関係者との金融取引履歴によるものだった。後からわかったことだが、筆者が行った国際送金の中に、バーレーンからアルカイダ関係者の口座を経由したものがあったようだ。アフガニスタンのタリバンにつ いては、昨年から急激な勢力回復傾向が見られる。今年3月にはアメリカの下院公聴会で、中央軍のジョセフ・ヴォーテル司令官がロシアによるタリバンへの軍事支援を証言した。この報道を受けて、ロシア政府は即座に事実を否定したが、ロシアによるタリバン支援は誰でも知っていることだ。アフガニスタンは、米露にとって地政学的にも兵器産業の市場としても極めて重要な国である。それと同時に、マフィアにとっても利権の楽園である。GDPの半分を麻薬が占める国であり、タリバンとの内戦は武器弾薬の大量消費を生むからだ。アメリカがタリバン政権と本格的に対峙したのは、9.11同時多発テロ事件からである。それまでは中央アジアの石油・天然ガスを供給するパイプライン計画があった為、タリバン政権を容認していた。ところが、ウサマ・ビン・ラディンを擁護するタリバンに業を煮やしたアメリカは、遂にアフガニスタン紛争に突入した。このアフガニスタン紛争で莫大な利益を得たのは、アメリカ政府とニューヨーク系マフィア、そしてロシアンマフィアの三者である。

アフガニスタンは、ケシ栽培と、そこから生成されるへロインが国家の主要産業である。タリバン政権も表向きはケシ栽培を禁じてきたが、政権を支えてきたのは麻薬産業なのだ。『国連薬物犯罪事務所(UNODC)』に興味深いレポートがある。アメリカ軍とNATO軍が侵攻してから、アフガニスタンでのケシ栽培が40倍に増加したというものだ。これは、ケシから生成されるアへンやへロインの量が40倍に増加したことを意味する。2010年、ロシアがNATOに対してアフガニスタンのケシ栽培を撲滅させる提案をしたところ、「地元住民にとって貴重な収入源である」との理由でアメリカが拒否したのも興味深い。その同じ年に、筆者はウズベキスタン経由でアフガニスタンへ入国したことがある。ウズベキスタンのテルメズから船でアムダリア川を渡れば、アフガニスタンのハイラタンという町だ。この時、ドバイの銀行が紹介してくれたアフガニスタン人のガイドは、『中央情報局(CIA)』の現地員だった。彼の任務は国境の監視ということだが、現実には麻薬輸送のコントロールが主な仕事だ。「アメリカ軍が占領してから、ケシ畑の警備兵もAK47からM16に変わりました」。アメリカは、タリバンから奪ったケシ畑の警備を反タリバン勢力に任せ、麻薬の生産量を拡大した。その麻薬をヨーロッパからロシアに販売するのが、CIAと結託したニューヨーク系のマフィアである。「ロシアンマフィアは、タリバン勢力に武器を売りまくっています」。ガイドの男が吐き捨てるように言ったのを、よく覚えている。CIAは現地での活動費を麻薬収入で賄っているが、それはアメリカ軍の戦費にも使われているだろう。アフガニスタン紛争が生む武器と麻薬の利権は巨大だ。だが、その恩恵を一番受けているのはマフィアでもアメリカでもなく、ドバイとロンドンの銀行かもしれない。何故なら、彼らに紛争のリスクが全く無いからだ。 (http://twitter.com/nekokumicho


キャプチャ  2017年8月8日号掲載

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【オトナの形を語ろう】(36) 金は人間がこしらえた価値を測る道具でしかない

「金に翻弄される人間になるな」というのが、私の考えである。所詮、金は人間が拵えた価値を測る道具でしかない。人間が拵えたもので、人間が悲劇の中に立たされるのは、愚か以外の何ものでもない。私が車の運転を止めたのは、私の知人が、私が同乗している折、子供を撥ねて死亡させたことが原因だった。その日の早朝、私は彼の運転する車の助手席に乗り、ゴルフ場に向かっていた。知人は前夜も徹夜麻雀をしていたらしく、赤い目をして私を迎えに来てくれた。途中、高速道路が事故で渋滞し、ティータイムぎりぎりの時間になり、千葉の田舎道を走行している時、飛び出して来た少年の乗る自転車とぶつかった。大した衝撃でもなかったように感じたが、少年は道路に仰向けになっていた。人間は簡単なことで死んでしまう。況してや子供である。通夜・葬儀に出て、3ヵ月後には前橋の交通刑務所に知人の面会へ行った。「運が無かったよナ、俺」と知人は言った。「そうだったな…」と私は返答をしたが、胸の中で「未だ、そうとしか考えられないのか?」と正直思った。その後、一度面会に行ったが、知人の考えていることは以前と同じだった。2回目の面会の後、東京へ向かう電車の中で思った。「所詮、人は自分を中心にした輪の中でしか物事を考えることができないのだろう」。

同時に、知人が哀れに思えた。不運に見舞われたと思っている知人と、自分が犯した罪の何たるかがわかっていないということに対してである。車なんてものは、人間が拵えたものではないか。その人間が拵えたもので人間が不幸になってしまうことほど、愚かなものはないのではないか…。金というものにも、その考えは当て嵌まる。金のことで得をした、損をしたということも、金で大儲けをした、破産したという世間の話も、人間が拵えたもので、人間が齷齪し、喘いでいることに変わりはないのではないのか。愚かなことである。況してや金に詰まり、追い込みをかけられるわ、家族は四散するわ、最後は僅かばかりの保険金の為に自死をしたりすれば、これほど愚かなことはない。今、世間で、金の話や、それにまつわる話を平然としたり、本を上梓している輩は全て、金を持っている人間である。金は厄介なもので、持てば人間を傲慢にさせる。当人がそう思っていなくとも、言葉の端々や文章の中に、その傲慢さは出る。金を持つ人間には、その傲慢さは見えない。金を持たない人間は、只々、金を持つ輩のやり方を信じるのである。「余るほどの金を持つヤツに碌な奴はいないから」。私はいつもそう言う。実際、私がこれまで逢ってきた人間の内、必要以上の金を手にした輩で、真面な態度や考え方の者は誰一人いなかった。

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【劇場漫才師の流儀】(01) ポストダウンタウン

僕がこれまで芸人を見て衝撃を受けたんは、3回やね。最初は、(明石家)さんまさんと会った時。次が、(島田)紳助さん。2人とも僕の同期なんやけど、『世の中にはこんなおもろいヤツおんねんな』と思ったね。そして3回目がダウンタウンやね。NSC(吉本総合芸能学院)第1期生のネタ見せみたいなんがあった時に、確か紳ちゃんと一緒に見に行ってね。彼らが未だ入学して数ヵ月の時でしょう。そこにはハイヒールとか初代トミーズとか、10組ぐらいおったんやけど、ダウンタウンだけ、めっちゃ光っとった。未だ当時は、ダウンタウンというコンビ名じゃなかったですけど、「これは売れるかなー」とかやなくて、「絶対売れる!」って紳ちゃんと2人で顔を見合わせて言い合いましたからね。プロ野球でも高卒1年目で、いきなり10勝するような投手がいるでしょ。それと同じ感じがしました。技術的にいうと、彼らは、間を持てるんですよ。しかも、その間が心地いい。夢路いとし・喜味こいし先生なんかもそうやったけど、それが若手の時からできる漫才師は中々いません。これを下手な人がやると、2人のタイミングがずれて「間が空いちゃったのかな?」とお客さんに伝わる。そうしたら、おしまい。若手ほど間が空くのが怖いから、どんどんテンポアップしていってしまうんです。

うちのコンビも「スピード感がある」って言われますけど、正直言うと、間が空いてしまうのが怖いという部分もあるんです。「ダウンタウン以降、あれほどの衝撃を受けたことがあるか?」と言われると、どうなんやろうね? 確かに、輝いているコンビは沢山いました。ナイナイ(ナインティナイン)もそう、ブラックマヨネーズもそう、キングコングもあった。漫才だけやったら、ブラックマヨネーズはダウンタウンに匹敵するくらいのものがあると思いますね。やっぱり、コンビのどっちもおもろいところは強い。フットボールアワーなんかもそう。ボケの岩尾(望)君も、ツッコミの後藤(輝基)君もおもろいですし。これは、またの機会に話しますけど、彼らを見ていて思うのは、「昔はボケが華やったけど、つくづく今はツッコミ全盛の時代なんやろうなぁ」と。ともあれ、ダウンタウンを本気で抜こう思ったら、同じようにNSCを経て…というルートでは難しいかもわからんね。ダウンタウンのように、2人でゆっくりフリートークするみたいなんのを若手がよう真似しとるけど、彼らと同じ道を走っとったら、2人は遥か彼方先におるんやから、中々追いつけないでしょうね。脇道でも小道でもえぇから、違う道、探さな。ダウンタウンは2組はいらん訳やから。ダウンタウンを超えるコンビが出てきた時は、彼らとは全く違う形でしょうね。どういう形かって? それはわからん。わかっていたら僕がやる(笑)。


オール巨人(おーる・きょじん) 漫才コンビ『オール阪神・巨人』のボケ担当。1951年、大阪府生まれ。大阪商業高校卒業後、1974年7月に『吉本新喜劇』の岡八朗に弟子入り。翌1975年4月に素人演芸番組の常連だったオール阪神とコンビを結成。正統派漫才師として不動の地位を保つ。著書に『師弟 吉本新喜劇・岡八朗師匠と歩んだ31年』・『さいなら!C型肝炎 漫才師として舞台に立ちながら、治療に挑んだ500日の記録』(共にワニブックス)。


キャプチャ  2017年8月14日号掲載

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【Test drive impression】(32) 『トヨタ自動車 カムリG レザーパッケージ』――アメリカで15年連続乗用車販売台数1位のカムリが新型に!

『トヨタ自動車』の最上級FFセダンとして、1982年に販売を開始した『カムリ』。その後、1990年代にグローバルミッドサイズセダンとして世界に展開されると、2015年の世界累計販売台数は1800万台を超えた。日本ではセダンが不人気で存在感は薄いが、アメリカでは“食パン”や“バニラアイス”に例えられるほど、日常生活に無くてはならないものとして認識されている。その証拠に、カムリはアメリカの乗用車部門で15年連続販売台数ナンバーワンを獲得するほど、活躍しているのだ。大ヒットモデルの新型となれば、保守的な変更に落ち着きがち。しかし、今回のカムリは「前例の無い変革」と開発陣が口にするように、ちっとも保守的ではない。今回のカムリは正真正銘の新型で、土台となるプラットフォームから内装やエンジン等、全てが一新されている。最も変貌を遂げたのはスタイリングだ。安定感のあるセダンから、クーペ的な色気を滲ませるモデルへ。ボディーサイドに回り込むヘッドライトに加え、大開口グリルは水平方向に大胆に刻んだフィンが低く、ワイドな構えを強調している。デザイナーの思い入れが強く伝わるのが、ルーフからリヤエンドに流れ落ちるクォーターピラーの美しい曲面と伸びやかなサイドシルエットで、厚ぼったいセダンのイメージを払拭している。

このクラスのFFセダンには『日産自動車』の『ティアナ』や『マツダ』の『アテンザ』等が存在するが、それらと比較すると、カムリは“男気”と“色気”を併せ持つセダンと言えるのではないだろうか。絞り込んだシルエットはスタイリッシュに見えるが、気になるのは車内の快適性。低床化したカムリは乗員のヒップポイントを後方に低く配置して、セダンに相応しい頭上空間と、後席の膝回りにも足が組めるほどの広さを確保している。日本ではハイブリッド車のみが販売されるが、専用のバッテリーは従来の後席後方から後席下に移設。後席の背もたれは2分割式で倒せるので、長尺の荷物も積める。バッテリーの移設で荷室の奥行 きは従来よりも+190㎜増え、荷室幅は+50㎜も広がった。9.5インチのゴルフバッグが4つ+αの荷物が積める点は、ゴルファーにとって朗報ではないか。インパネ周りに注目してみると、右ハンドルと左ハンドルを造り分けるモデルにしてはかなり凝った造りと言える。ナビ周りのY字カットはシフト付近まで繋がる一体構造。化粧パネルは寄せ木調の他に、宝石のタイガーアイをイメージした素材が用意され、銅板を削り出したような艶感と立体的な凹凸を与えた造りだ。2眼メーターは、中央に7インチのディスプレイを配置。トヨタのハイブリッド車らしく、右側に速度計、左側はパワー、エコ、チャージのパワーフローを示すアナログメーターが配置される。純正カーナビは、ブラックのフラットパネルにモニターを理め込む体裁となるが、操作系は特に新しさはない。

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【中外時評】 第2幕迎えるドローン競争

「ドローン(小型無人機)といえば深圳。町中をビュンビュン飛んでいるよ」――。知人の誘いに乗り、中国・深圳を訪ねた。中国最大の電気街『華強北路』。販売店の店員が、屋外で機体を器用に操っている。深圳には300社のドローン製造企業が犇き合うという。中でも圧倒的な存在感を示すのは『DJI』だ。汪滔CEOが大学院在学中の2006年に設立し、軍事用を除く民間向けで70%の世界シェアを握る。2016年の売上高は100億元(約1600億円)に達した。本社は内装にガラスを多用し、白を基調とした明るい雰囲気だ。どこか『Apple』の施設に似ている。実際、同社は“ドローン業界のApple”と呼ばれることもある。だが、共通するのはイメージ戦略だけではない。「当社はメイドイングローバル」。汪CEOの幼馴染みで日本法人を率いる呉韜氏は語る。電子機器の工場が集積する深圳で生産する一方、ソフトはシリコンバレーで開発。日本ではJR品川駅前に拠点を開き、近くに本社を置く『ソニー』や『ニコン』等から約70人の技術者を雇い入れた。画像を撮影するカメラの開発拠点と位置付ける。垂直統合型のビジネスモデルや世界的な分業体制等もApple流だ。Appleと同様にDJIの勢いも凄まじく、ドローンで世界3強の一角を占めた『パロット』や『3Dロボティクス』は人員削減に追い込まれた。DJIが一人勝ちの色彩を濃くしている。欧米大手が苦戦し、日本勢の勝ち目も薄いようにみえる。だが、ドローンを長年研究してきた千葉大学名誉教授で『自律制御システム研究所』(千葉市)の野波健蔵CEOは、「高度な自律飛行が実現して人の手を煩わせなくても飛べるようになると、ゲームのルールが変わる」という。

2020年代に実用化が見込まれるこうした技術により、土木工事の測量・送電線の検査・農業の支援・運輸といった専門的なサービスが一気に花開く可能性がある。「民間向けドローン機器の世界市場は、2020年頃に1兆円前後になる」との見方が多い。一方、『PwC』はドローンで代替可能なサービスの市場を約1270億ドル(約14兆円)と見積もる。ドローンを巡る最初の競争は、趣味や映像作品の制作等を目的とする製品の製造・販売で、DJIがほぼ制した。これからやってくる第2幕はサービスが主体となり、市場規模や応用範囲は遥かに大きい。「顧客が必要なのはドローンそのものではなく、課題解決だ」。ドローンを利用した土木測量サービスを提供する『テラドローン』(東京都渋谷区)の徳重徹社長は、「競争の軸が変わってきた」と実感する。2016年に発足した同社は、国内外に拠点を広げている。だが、課題もある。1つは、どう市場を作るかだ。土木分野では国土交通省等が旗振り役となり、一定規模の公共事業でドローン等の利用を義務付ける取り組みを進めてきた。少子高齢化に伴う働き手の減少は、農業や運輸への応用を後押しする。追い風を生かし、市場を育てる為のルール整備が急務だ。もう1つの課題は、独自性が高い技術やアイデアを持つ新興企業の支援だ。「このままでは日本のドローンのスタートアップが潰えると思った」。スマートフォン向けゲーム大手『コロプラ』の副社長等を務め、6月にドローンに特化したファンドを設立した千葉功太郎氏は話す。個人投資家として千葉氏が目にしたのは、ドローンの分野に有望なスタートアップがあっても、資金や経営ノウハウを注入する支援者の層が薄い現実だ。実質3ヵ月間の準備期間で、15億円のドローンファンドを立ち上げた。今後は大企業等を巻き込んだ幅広い取り組みが必要だ。製品の売り切りからサービスや問題解決へというビジネスモデルの転換は、日本の屋台骨を支えてきた電機産業等が経験している。ドローンを使ったサービスの競争も激しさを増すが、嘗ての経験や反省を生かして取り組む価値はある。巨大市場を諦めるのは未だ早い。 (論説委員 奥平和行)


⦿日本経済新聞 2017年8月3日付掲載⦿

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【コラム】 アベノミクス最後の機会

政界は一寸先は闇というが、安倍1強がここまで脆いとは予想できなかった。森友・加計両学園や防衛省・自衛隊の問題、そして自民党議員の相次ぐスキャンダル――。強権的で説明不足が目立つ政権の体質も嫌気されている。内閣改造後も、世論の厳しい視線は止まないだろう。首相が猛省すべきなのはその通りだ。一連の問題の解明や再発防止に努めなくてはいけない。ただ、指摘される疑惑に首相自身が関わっていないことを前提に言えば、「首相に挽回のチャンスが与えられて然るべきだ」とも思う。第1に、もったいない。つい5年前まで、日本は毎年のように首相が代わり、海外の失笑を買っていた。安定政権を築き、アメリカのドナルド・トランプ大統領ら各国の首脳と渡りあう首相は、国際社会からも評価されている。第2に、政争に感ける余裕が無い。景気回復を支えた金融緩和には限界がみえる。危機的な財政を考えれば財政出動には頼れない。北朝鮮の核・ミサイル問題は脅威の度を増している。第3に、代わりがいない。直近の内閣支持率は、日本経済新聞社の調査で39%。現政権で最低圏に下がったが、“未だ30%台”とみることもできる。野党第1党の民進党の支持率は僅か6%だ。但し、条件がある。今度こそ“脱デフレ”を最優先課題に据えて実践することだ。

政権を取った2012年末の衆院選から、首相は選挙の度に経済重視を掲げてきた。アベノミクスがその具体策だ。衆議院で与党3分の2と、参議院で自民単独過半数の議席を得た。安倍1強を生んだ民意は、デフレ脱却への期待に他ならない。ところが、肝心のアベノミクスは金融緩和と財政出動に寄りかかり、成長戦略は中途半端なまま。一方で、安保法制や所謂“共謀罪”法は、強引とも言える手法で成立させた。このままでは、「有権者が与えた“政治資産”をちゃんと使っていない」と批判されても仕方ない。首相が2020年施行を目指す改憲論議も、副作用が心配だ。何れ国民が向き合う課題ではあるが、急げば護憲派は激しく抵抗する。「改憲派がやることは何もかもだめ」と経済政策にも悪影響を与えかねない。潜在成長率を引き上げ、少子高齢化社会に備えた社会保障を整備し、財政健全化を実現する――。ノーベル賞級の学者が考えても処方箋が定まらないのがデフレ病だ。生半可な覚悟で勝てる筈がない。衆議院議員の任期である2018年12月までには必ず解散・総選挙がある。それに先立つ同年9月には、首相が3選を目指す自民党総裁選が控える。野党は対決姿勢を強め、与党は痛みを伴う改革の先送りに傾く懸念が増す。政治環境を考えれば、首相に与えられた機会は、これが最後かもしれない。支持率低下は“ポスト安倍”への注目度を高め、野党に生気を与える。結果を出せばそれでよし。できないなら、「もったいない」等と言っている場合でなくなる。代わりを探すしかない。 (政治部長 内山清行)


⦿日本経済新聞 2017年8月4日付掲載⦿

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【コラム】 拝啓、安倍晋三様…信無くんば立たず

何故、こんなにまで安倍内閣への支持が凋落したのでしょうか? 政策に大きな誤りがあったのか? 決してそうではありません。テロ等準備罪を一部マスコミは徹底批判しましたが、世論調査では賛成のほうが多かったのです。岩盤規制を打破しようとする特区制度が間違っていたのか? そんなことはありません。『加計学園』問題への対応や国会審議の強引さ等、政治の進め方に問題があったのです。政治で最も大切なことは、“信無くんば立たず”です。安倍内閣の不支持の理由のトップが「首相が信頼できない」という事態は深刻です。10年前から、新内閣の発足の度に総理大臣宛ての手紙を本紙で書いてきました。次に挙げるのは、第2次安倍内閣以降5回の見出しです。『非情の宰相であれ』・『長期政権考えるな』・『心耳澄まし謙虚に』・『度量の広さを示せ』・『左ウィングを広げよ』。長期政権に目を奪われると足元が疎かになります。近い人ほど厳しく対応すべきです。“公正さ”が問われるからです。反対者の意見を受け入れる謙虚さも必須です。残念ながら、懸念が的中することになりました。今改めて、関東大震災の復興にあたった後藤新平が、身近な人に常々語った“御親兵一割の損”という言葉を思い出します。「自分は身贔屓しないから、側近になれば損する」ということです。後藤の女婿・鶴見祐輔は、『正伝 後藤新平』(藤原書店)で書いています。「後藤は権要の地位に就くときは、かえって平生親しい人々を採用することを遠慮した」。内閣改造で経験者を重視したのは当然です。為すべきことは一杯あります。北朝鮮の核・ミサイル危機は風雲急を告げています。多くの民は景気回復の実感は持てないでいます。少子化対策や地方創生も待ったなしです。しかし、改造したからといって支持率が回復できる訳ではありません。宿願の憲法改正も、信頼が無ければ到底無理です。外交で起死回生の妙手があるとも思えません。退路を断って、国民の為に為すべきことを丁寧に一歩一歩進めることでしか道は開かれないことを、肝に銘ずべきだと思います。 (特別編集委員 橋本五郎)


⦿読売新聞 2017年8月4日付掲載⦿

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【Deep Insight】(34) アメリカ離れの世界、日独の出番

“トランプ疲れ”とでも言おうか。ドナルド・トランプ大統領が指先で放つ独善的な呟きにも、我々はすっかり驚かなくなった。世界最強のリーダー役を返上して“アメリカ第一”へと突き進むトランプ政権に、国際社会は忍耐と関心を失いつつある。アメリカの調査機関『ピューリサーチセンター』が、今年2~5月に世界37ヵ国で実施した調査で、トランプ大統領が「国際問題に正しく対処する」と答えた人の割合は22%と、バラク・オバマ前大統領の最終年時点の64%から3分の1に急減した。隣国のメキシコで新旧大統領の信頼度は49%から5%へ、ドイツは86%から11%へと激減。逆にロシアは11%から53%へ急上昇した。トランプ政権が“悪”と見做す貿易赤字を是正する為の制裁措置も、一時は市場を沸かせた減税や財政出動も、未だ実行に移っていない。それでも、世界の大半で“アメリカ離れ”の兆候が強まっている。アメリカの穴を、残りの先進国と新興国がどう埋めるのか? 来週にハンブルクで開く『主要20ヵ国・地域首脳会議(G20サミット)』は、発足後半年のトランプ政権が齎す世界の勢力図の変化を映し出す。議長国のドイツと協調して国際秩序を支える役目を、日本が果たしてほしい――。ドイツ政府筋との議論を通じ、そんな期待を感じた。同じ62歳のアンゲラ・メルケル首相と安倍晋三首相。今年5月、シチリア島での主要7ヵ国(G7)サミットで、其々12回と6回の出席を重ねた両首脳は、反保護主義や地球温暖化防止の新枠組み『パリ協定』の評価を巡って、“1対6”の孤立を厭わないトランプ大統領に振り回された。メルケル首相はG7会議後、ミュンヘンで「他国に全面的に頼る時代はほぼ終わった。ヨーロッパは自らの運命を切り開かなければならない」と言い放った。アメリカへの“決別宣言”とも解釈されて有名になった演説には、「勿論、米英との友好関係の下で」という但し書きも付く。安全保障や軍事面で世界最強の力を維持するトランプ政権を、ただ突き放す訳ではない。アメリカのお株を奪うように自由貿易の守護者を自称する中国、米欧の重要選挙へのサイバー攻撃すら疑われるロシア…。G20には、先進国の足並みの乱れに乗じて影響力を広げようとする勢力がいる。自由主義に根を下ろした世界経済の仕組みを保つ存在が必要だ。「リベラルな国際秩序の存続は、日本の安倍晋三とドイツのアンゲラ・メルケルという2人の指導者の肩にかかっている」。アメリカの隔月刊外交専門誌『フォーリンアフェアーズ』で、プリンストン大学のジョン・アイケンベリー教授はこう指摘している。

日本とドイツの距離を近付ける要素は、主に3つある。先ず通商面では、2国間の貿易赤字を問題視するアメリカの一方的な措置を牽制し、多国間での貿易自由化を維持する。第2に、パリ協定を軸とする地球温暖化対策や少子高齢化への備え等、中長期の課題で共同歩調を取る余地がある。第3に、第4次産業革命を軸とするITやエネルギーといった技術革新での協力だ。大枠合意が近付く日本と『ヨーロッパ連合(EU)』の経済連携協定(EPA)は、日独連携の試金石だ。「韓国とEUとのEPAが結ばれている。日本とも同様の協定が結ばれるべきだ」。2011年5月、メルケル首相は記者会見で筆者の質問にこう答え、交渉開始の支持を明言した。ドイツ政府関係者は、首相の慎重姿勢の転換を“エボリューション(進化)”と呼んでいた。あれから6年。安倍首相も合意に強い拘りをみせる。「日本とEUのEPAは、極めて重要な意味を持つ。ここが秩序を作る土台になる」と、慶應義塾大学の細谷雄一教授は話す。既存の秩序に背を向けるアメリカと共に、イギリスはEU離脱という選択に突き進む。総選挙の賭けに失敗して少数与党に転落したテリーザ・メイ首相にとって、離脱交渉を脇に置いて国際舞台で指導力を発揮する機会は乏しいだろう。「アングロサクソン国家の賢明でない選択で、世界はここ3~4年、先の読めない停滞期に入っていく可能性がある」と、『国際通貨研究所』の渡辺博史理事長はみる。共倒れの事態を防ぐには、具体的な前進が必要となる。フランスにエマニュエル・マクロン大統領が誕生し、メルケル首相と“強いEU”の実現に動き出したのは明るい兆候だ。ドイツがフランス等と組んで、EUや周辺地域での経済秩序を整える。日本も、アメリカを除く『環太平洋経済連携協定(TPP)』を始め、アジアでの自由貿易体制を強固にする。着々と実績を積み重ねることで、米英の孤立主義をやんわりと包み込む仕組みができる。「日本とドイツが組めるのか?」と疑問を持つ人は少なくない。財政政策や金融政策に対する哲学も、中国やロシアに向ける態度も一致していない。安倍首相が築いたトランプ大統領との親密な関係は、メルケル首相とは大違い。だが、こうした差異が、寧ろお互いの足りない部分を補完できるのではないか? “極なき世界”では、従来の考え方を超えた連携が不可欠だ。「民主主義・法の支配・人権・市場経済。日欧は、この4つの共通の価値観で結び付くしかない」と、慶應義塾大学の渡辺頼純教授は語る。メルケル首相が9月の下院選挙、安倍首相が来秋の自民党総裁選という関門を越えれば、2021年までの長期政権が共に視野に入る。自由貿易を守り、弱者にも目配りする“包摂的な成長”を確立するのが世界経済の課題だ。同盟国のアメリカに復帰の余地を残しながら、長年築いた西側秩序を堅持する。新しい課題が日独双方に託される。 (本社コメンテーター 菅野幹雄)


⦿日本経済新聞 2017年6月30日付掲載⦿

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