『カルビー』の会長を退いた後も大人気…気になる松本晃氏の今後

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2009年に創業家の松尾雅彦氏に請われ、『カルビー』会長兼CEOに就任した松本晃氏(70・左画像)。以来、9期連続増収増益を実現し、2011年に東証1部に上場させた大立者だが、今年6月で退くと突然の記者会見を行なった。松本氏は京都大学農学部修士課程卒業、1972年に『伊藤忠商事』に入社。『ジョンソンエンドジョンソン日本法人』社長を経て、カルビー社外取締役に。そして社長に就くや、徹底したコスト管理、社員の意識改革、女性社員の積極登用、健康ブームに目をつけたシリアル食品『フルグラ』のブランド強化等を次々と断行。グループ連結年商額をほぼ倍にし、利益率も11%以上と強靭な企業体質に変えた。但し、創業家の引き留めにも拘わらず辞めるのは、「最早、経営ノウハウのカードが無くなったからではないか」(全国紙経済部記者)という見方もある。後継指名もしなかった為、伊藤秀二社長兼COO(61)が引き継ぐ形になる。松本氏の元には早くも数社からオファーが届いているというが、数年前から医療分野に強い関心を持っており、幾つかの公職にも就いている。その為、暫くは理事長を務めるNPO法人『日本から外科医がいなくなることを憂い行動する会』の活動に力を入れていくと見られる。


キャプチャ  2018年5月号掲載

テーマ : 経済ニュース
ジャンル : ニュース

『コマツ』後継候補に黒本和憲氏…好調な大橋路線を継承か?

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この4月で就任から丸5年が経過した『コマツ』の大橋徹二社長。その後継候補の名前が浮上してきた。2018年3月期の連結純利益(※アメリカ会計基準)は前期比40%増の1590億円と、減益予想から一転して大幅増益となる見通し。純利益は4年ぶりの水準に戻る。「全ての国で建機販売は前年比でプラスになる」(同社幹部)のは、大橋氏が市況の変動に耐え得る基盤を作り上げた結果だ。世界のライバル企業が犇めく先進国市場と比べ、コマツブランドが効く新興国市場で価格競争力を保ち、中国の他、インドネシア等の市場で安定した業績を上げてきた。また、鉱山機械事業も強化。アメリカの『ジョイグローバル』を買収し、今は『コマツマイニング』として早くも収益に貢献し始めた。後継候補は、「大橋路線を着実に引き継げる人物」(同)とされる。筆頭候補は黒本和憲専務執行役員(62・右画像)。主力の建機事業のマーケティングや、力を入れるICT、更にはジョイ社の買収等も手がけた。「まさにコマツの保守本流で、しかも技術に強い」(同)。建機の稼働状況や工事現場の状況を建設会社や運搬業者等に繋ぐIoT技術や、AIを駆使した無人建機等の開発にも陣頭指揮を執る。年齢は大橋社長の1つ下と大幅な若返りにはならないが、このまま業績を維持すれば交代の日も近い。


キャプチャ  2018年5月号掲載

テーマ : 経済ニュース
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【Global Economy】(92) レアメタル争奪、中国席巻…EV電池、問われる日本の戦略

リチウムやコバルト等のレアメタルの争奪戦が激しさを増している。電気自動車(EV)の中核部品であるリチウムイオン電池の原料として、今後、需要が急拡大するとの予測が背景にある。 (経済部デスク 小川直樹)





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波一つ無い水面に青空が映り込む。一見、南国のリゾートのように見えるが、実は南米アンデス山中の高地にある人工池。『豊田通商』とオーストラリアの資源開発大手の合弁会社が、アルゼンチンのオラロス塩湖近くに整備したリチウムの生産拠点だ。ここでは、塩湖の地下200mからリチウムを含む地下水を汲み上げ、人工池で約300日間天日干ししてリチウムを精製している。年間生産能力は1万7500トン。更なる需要拡大を見込み、豊田通商は1月、生産能力を4万2500トンにする計画を発表した。生産能力を2.5倍近く引き上げる思い切った増産計画だが、それ以上に積極的なのが中国勢だ。中国の資源開発大手の『天斉リチウム』は、2013年にオーストラリア資源開発大手の株式を51%取得して経営権を握ると、今年5月にはチリの資源開発大手の株式の24%を取得することで合意したと発表した。アメリカの地質調査所(USGS)によると、世界のリチウム産出国の1位はオーストラリア、2位はチリで、天斉は両国に着々と足場を築く(※グラフ①)。豊田通商資源開発部の片山昌治部長は、「中国勢は潤沢な資金を使って海外の資源を買いまくっている。1人だけ違うルールで試合をやっているように見える」と話す。中国勢の買収攻勢はリチウムに留まらない。やはり電池の原料であるコバルトは、アフリカのコンゴ民主共和国が世界の産出量の6割を占める(※グラフ②)。ここでも『華友コバルト』や『チャイナモリブデン』等の中国企業が、コバルトの権益獲得競争をリードする。「中国は国を挙げて電池材料を押さえにきている」。日本のある資源開発関係者は警戒感を隠さない。リチウムは耐熱ガラス等の添加剤として、コバルトは顔料等として使われてきた。

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資源争奪戦が激しくなったきっかけは、“EV強国”を目指す中国の一連の自動車政策だ。この結果、2015年から2017年にかけてリチウムやコバルトの価格が上昇した(※グラフ③)。中国はEV購入者やメーカーへの多額の補助金を出す等支援策を次々と打ち出し、2015年にはアメリカを抜いて世界最大のEV市場となった。2017年には、2025年に年間700万台のEV等新エネルギー車を販売するとの新目標を打ち出した。新エネルギー車を一定量、生産・販売するよう自動車メーカーに義務付ける規制の導入も発表した。日本の年間新車販売台数(※約520万台)を大きく上回る野心的な目標や規制が電池の増産を促し、資源開発会社を世界のリチウムやコバルト資源の確保に走らせる構図になっている。調査会社の『アイアールユニバース』によると、リチウム(※炭酸リチウム)の随時契約価格は現在、1㎏あたり21ドル前後で推移する。8ドル台で取引されていた2015年秋より3倍近い。コバルトは1ポンド(=453g)あたり43ドル前後と、2015年秋と比べると4倍以上の高値で取引されている。棚町裕次社長は、「本格的なEVブームと投機マネーの流入で、価格は上昇し易い環境にある」と指摘する。調査会社の『富士経済』は、「リチウムイオン電池の原料市場は、自動車向けを中心としたリチウムイオン電池の需要増加によって拡大が続き、2021年には2015年の3倍近い2.9兆円になる」と予測する(※グラフ④)。多くの専門家も「右肩上がりで需要は伸びる」と指摘する。ただ、今後を読み解くには3つの変数に目を配る必要がある。1つ目はEVの普及ペースだ。世界の自動車メーカーは競うように“EVシフト”の計画を掲げているが、注意深く見ると、ハイブリッド車(HV)等を含む“電動車”となっていることが多い。HV等の電動車はエンジンとモーターを併用して走るので、モーターだけで走るEVに比べると電池の搭載量は少なくて済む。電池の搭載量が少なくなれば、その分、リチウムもコバルトも必要量が減る。

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テーマ : 経済
ジャンル : 政治・経済

【儲かる農業2018】(11) レジェンド農家への道⑥…インターネットや農総研を使い倒す

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関東圏で葉物野菜を生産しているある農場経営者は、販路別の出荷価格のチェックを欠かさない。今シーズンは、昨年来の天候不良で野菜相場が高騰している。「野菜が欠品するよりは陳列したほうがマシ」と考える流通事業者は多く、どの販路に出荷すると少しでも高く売れるのか、研究に余念がない。右図では、中堅農家が利用している代表的な販路を5つ挙げた。参考までに、農産物の末端販売価格が90~100円とした場合の生産者の手取り金額の目安を示した。その金額だけを見れば、“直売所・道の駅”が断然、お得だ。だが、出荷量が限られる上、売れ残りリスクは生産者が負う。一方で、“スーパー・外食チェーン”を選ぶと、手取り金額は55~60円と下がるが、大量出荷が可能だ。モデル農家の多くは、先ずは“スーパー・外食チェーン”の販路を確保している。手取り単価が低かったり、出荷規格や不作時のペナルティーが厳しかったりするが、規模拡大意欲のある農家にとって、安定的に大量出荷できるメリットは他の販路では得られない。しかも、JA経由で出荷するより利幅は大きい。安定出荷先を確保した上で、近年、利用が増えているのがインターネット通販や農業総合研究所だ。「規格外野菜や余剰分等、どこにも売れないものを流すことが多い。それでもお金になるから」(前出の経営者)。他の販路の相場を見ながら、機動的に売り先を変更しているという。安定性のあるスーパー・外食、機動性の高いインターネット販売・農総研――。賢い販路選択で相場変動をリスクヘッジしている。


キャプチャ  2018年2月24日号掲載

テーマ : 農政
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【鉄道大戦争2018】(11) 通勤時の混雑解消、我に秘策あり――野本弘文氏(『東京急行電鉄』社長)インタビュー

二子玉川・武蔵小杉・自由が丘――。沿線に住みたい街が多数あるのが東急線の特長だ。沿線の魅力が高まると鉄道利用者が増える一方、混雑が問題になる。田園都市線は昨年10月・11月と2ヵ月連続で、列車が長時間運休するトラブルに見舞われた。東急の野本弘文社長に、ブランド力の秘密と今後の課題について聞いた。 (聞き手/本誌 大坂直樹)

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――ブランド力が強い理由は?
「当社は鉄道会社だが、ベースにあるのは街づくり。街の利便性を高める為に電車を走らせ、街の価値を上げる。単に不動産を売るというのではない。系列企業で百貨店やストアを展開するのも、街の利便性を高める為だ。創業者の五島慶太や元会長の五島昇が日吉駅に慶應義塾大学を、大岡山駅に東京工業大学を誘致したのもその一環。常に若い人が沿線にやって来ることは、街の活性化に繋がる。しかし、長年かけて築いたブランドも、今回の田園都市線のようなトラブルが続くとあっという間に毀損する。ブランド価値が下がると不動産価値も下がり、お客様に大変なご迷惑がかかる。非常に重く受け止めており、『これは警鐘だ』と社員には言っている。このようなトラブルを二度と起こさないことが、我々の最大の使命だ」

――沿線が便利になると、沿線人口が増えて益々混雑するのでは?
「その可能性はある。あくまでアイデアのひとつだが、ピーク時間帯を避けて乗ると運賃が安くなるような仕組みを定期券でできないかと考えている。PASMOとの関係で当社単独ではできず、頭を痛めているが、できるなら直ぐにやりたい。駅に保育所を設置する取り組みも同時に進めているので、例えば子供を駅に預けての10時頃に出社すれば、お客様が便利になる上、経済的にも少し楽になる」

――今後、開発に力を入れる駅は?
「田園都市線では南町田駅や鷺沼駅。将来的には青葉台駅もやりたい。東横線では2022年度に相鉄線との相互直通運転が始まるので、綱島駅あたりで再開発案件が出てくるのではないか」

――複々線化で東急からの利用者シフトを狙う『小田急電鉄』は脅威ですか?
「危機感はゼロではないが、当社は街づくりの発想なので、街に住むお客様の通勤が便利になるのは結構だ。お客様を取られて困ると嘆くのではなく、当社線の魅力をもっと高めないと」

――「小田急に利用者が移り、田園都市線の混雑が減る」という見方もあります。
「そのほうがお客様にとって便利ならそれでよい。だが、何もしない訳ではなく、お客様の利便性を高める努力は続ける。例えば、行きは小田急線、帰りは田園都市線というアイデアも、ひょっとしたら出てくるかもしれない」

――渋谷再開発の勝算は?
「渋谷はクリエイティブな人が集まる街だし、エンターテインメント性もある。以前は大型のオフィスビルが少なく、渋谷で起業した会社が大きくなると外へ出ていってしまった。だが、再開発で広いフロアスペースを提供できるようになり、嘗て渋谷にあったGoogleがまた渋谷に本社を戻してくれるようになった。渋谷を職場として選んで頂けるチャンスが増えると思う。再開発が完了すると、JR埼京線のホームがJR山手線の隣に移設され、利便性が高まる。大宮方面から渋谷に通勤する人も増えるかもしれない。『渋谷で働く全ての人に東急沿線に住んでもらいたい』という考えは無い。東横線沿線よりも家賃が安くて、通勤に便利な場所もある。360度色々な方向から人が集まるような拠点にしていきたい。勿論、田園都市線や東横線にお住いの方から多くお越し頂きたいですけどね」


キャプチャ  2018年2月14日増刊号掲載

テーマ : 鉄道関連のニュース
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【ここがヘンだよ日本の司法】(11) 現役弁護士座談会…実名NGの本音トーク!

弁護士の世界で起こっている問題を知るには、現役の弁護士に話を聞くのが手っ取り早い。そこで、年齢がバラバラの5人の弁護士に集まってもらった。先ずは、司法修習生に生活費を給付する“給費制”復活について聞く。 (聞き手・構成/フリーライター 青木康洋)





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――2017年4月に改正裁判法が成立し、司法修習生の給費制が復活しましたね。2017年の司法試験合格者から導入されます。
C「貸与制では無利息で18万~28万円の貸付を受けられるんだけど、やっぱり弁護士になった途端、多額の借金を抱えているのは苦しい。給費制が復活して良かったと思いますよ」

――新制度では月額13万5000円の基本給付金の他に、住居費が必要な修習生には月額3万5000円の住宅給付金が追加され、修習先への引っ越し代も国が負担することになりましたね。
E「法曹は国の宝ですからね。給付制の意義は司法修習生に公的使命を自覚してもらうこと、そして法曹志望者に貧富の格差を持ち込まないことですよ。一時的とはいえ、貸与制に移行したのがおかしかったんです。お金が無ければ法曹になれないというのは本末転倒ですから」
B「研修期間中は基本、兼業が禁止されていますから、アルバイトもできません。修習に専念する義務がありますから。でも、中には難関試験を突破した反動からか、こっそり合コン三昧しているような輩もいると聞きますが(笑)」
A「噂は聞いたことがあります。そんな人はごく一部だと思いたいですけど…」
C「『そんなヤツらに税金から給料を与えるのはもったいない』という発想があったから貸与制にしたのかな(笑)」
D「どうだろう? そういう面もあったのかもしれない。ただ、貸与制になったせいで法曹を目指す若者の数自体が減ったことは事実。以前より額は減ったとはいえ、給費制が復活したことで法曹希望者がまた増えることを期待します」

――昨今は弁護士同士の格差が広がっていると聞きます。同じ弁護士なのに格差が生じてしまうのは何故でしょう?
C「大本の原因は、やはり新人の就職難にあるような気がする。司法制度改革や新司法試験の導入で、合格者が増え過ぎた。町の法律事務所が増えた分を吸収できずに、あぶれてしまったんです」
E「昔は司法研修所を修了したら、直ぐにでも既存の法律事務所に拾ってもらえた。就職先に困るなんて考えられなかったですよ」

――司法修習生時代の就活事情は、どんなものなのでしょう?
A「最初は皆、5大法律事務所を目指すんですよ。普通の事務所だと新人の年収は600万円くらいですけど、5大事務所は1000万円超えですから。僕は首都圏で登録をすることも考えて、実際に大きな事務所を訪問したこともあります。東京での事務所訪問は、面接もシステマチックでしたね。企業での採用面接と殆ど変わらない印象でした」
C「5大事務所には毎年20人前後の新人が入るんだけど、兄弁の使い走りのような雑用ばかりで、皆、疲弊してしまうと聞く。数年で半分は辞めるみたいだから。私の場合は、最初から5大事務所は頭に無かったですね」
B「僕の場合は20くらい受けて、内定を4つ貰いました。今は小さな事務所でイソ弁なんですけど、1年目の年収は700万円くらい」
D「1年目だと弁護士会の会費が負担だと思わなかった?」
B「東京の場合は比較的安くて、年間60万円くらいなんです。食えない新人弁護士に配慮しているんだと思います」

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テーマ : 刑事事件・裁判関連ニュース
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【進む格差の固定化】(03) 貧困家庭をピンポイントで支援する“こども宅食”

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本当に困っている子供たちを支援したい――。子供のいる貧困家庭に直接、食品を届ける試みを行なっているのが東京都文京区だ。就学援助や児童扶養手当を受給している1000世帯の者を対象に、寄付やフードバンクで集めた食料を無償で2ヵ月に1回配る。自宅に届けた際に今の状況を確認したり、困り事を聞いたりするアウトリーチも目的の1つだ。財源はふるさと納税で、文京区とNPO法人や財団等5団体が協働で事業を行なっている。初年度は150世帯の枠を設けていたが、想定を上回る458世帯が申し込んできた為、抽選となった。2年目の2018年度は600世帯に配送する仕組みを整えた。この“こども宅食”のアイデアを出したのは、子育て支援等を行なうNPO法人『フローレンス』。きっかけは同団体が開いた子ども食堂だった。子供の居場所を作ることを優先し、対象者を限定しなかったことから、「本当に困っている子がわからず、支援効率が悪かった」と担当者は振り返る。こども宅食では、対象となる生活困窮者世帯へ文京区が手紙を送り、希望者を募る。個人情報を持つ行政と事業を行なうことで、支援を必要としている人を明確にすることができる。一方、文京区子育て支援課の鈴木裕佳課長も悩みを抱えていた。同区は所得の高い世帯が相対的に多く、貧困であることを隠しているケースが多い。子ども食堂のような場を設けても、「貧困家庭と思われたくない」という気持ちから出向かない。直接家に業者が届けることで、周囲に知られずに支援できるようになった。初年度は8000万円超の寄付金を集めたが、「初年度だから集まったという不安もある」(鈴木課長)。事業を継続していく為に、コストダウンや周知を進めていくという。 (取材・文/本誌 富田頌子)


キャプチャ  2018年4月14日号掲載

テーマ : 社会ニュース
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【ニッポン新階級社会】(03) 子供を下流に沈めない! 中流死守サバイバルの壮絶

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最近、ある厚生労働省幹部は驚いたことがある。政府が“人づくり革命”の一環として盛り込んだ(大学等)高等教育の無償化に対して、妙なところからクレームが付いたからだ。政策に一長一短あるのは毎度のことではある。意外だったのは、クレームの主が中高生の親であること。「国が余計なことをしてウチの子供の敵を増やさないで!」というのだ。高度経済成長期の“1億総中流”の社会は崩れ去り、1980年代以降に格差は拡大し続けた。そうして形成されたのが、身分が固定化され、分厚い中間層(=中流)が下流に滑り落ちる“新階級社会”である。富裕層はより豊かに、貧困層はより貧しく――。人々は、日本社会における自身のポジションをはっきりと意識するようになった。実際に、自分を人並みより上と考える人の比率をみると、富裕層では急速に上昇したのに対して、貧困層では緩やかに低下した(※左図)。そして今、中間層の間で起きているのが、下流に転落しない為の競争である。中流レベルを死守する為のサバイバルと言ってもよい。

一度、中流生活を経験した人々は、下流へ転落することを極端に恐れるもの。中流の親が、子供に身の丈を超えた教育費用を投じがちなのもその為だ。中流の親からすれば、アンダークラスに属する子供でも大学へ行けるようになる教育無償化は、受験の失敗等により自分の子供の教育機会を奪い、下流転落を導きかねない代物に見えたのだろう。そんな冗談のような話が罷り通るくらい、日本人が中流を維持することが難しくなっているとも言えそうだ。中央大学の山田昌弘教授によれば、「ある時点で中流生活を送れている人には2つのリスクがある」という。1つ目は、世代間の転落リスク。自分の親が送っていた中流生活を自分が送れなくなるリスクのことをいう。2つ目は、世代内における転落リスク。今送っている中流生活を、将来維持できなくなるリスクのことだ。日本で飛躍的な経済成長が望めない以上、いずれのリスクも回避し難くなっているのが実情だ。それでも、人々は中流にしがみつきたいと思うから、下流へ滑り落ちない為の競争は続く。SNSが普及したことで、誰でも“隣の芝生”の生活を覗き見し易くなった。他人が閲覧することを前提にしたSNSだから、ある程度“盛った生活”を見せられていることは確かだろう。子供にどんな習い事をさせているのか? どんな服を着せているのか? 長期休暇にはどこに旅行しているのか? そうした何げない投稿を見ているうちに、その家庭の年収や財政事情が何となくわかってしまうのも事実だ。現段階では、政府が目指す賃上げを望むのは難しいだろう。本当は中流の生活が厳しくなっている筈なのに、“隣の芝生”を意識して中流を維持しようとすると、いずれ家計は破綻してしまう。その行き着く先はアンダークラスへの転落である。中流を維持するか、下流へ転落するか――。中流を死する為のサバイバルは、熾烈を極めることになりそうだ。


キャプチャ  2018年4月7日号掲載

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【黄金の昭和・リーダーたちの直言】(08) 日本人はもっと自信を持っていい――エズラ・ファイヴェル・ヴォーゲル氏(『ハーバード大学東アジア研究所』所長)



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アメリカの社会学者であるヴォーゲル氏(※右画像)は、ハーバード大学卒の同大教授。一般にハーバードの教授は他の大学卒が多いというから、ヴォーゲル氏のケースは珍しい。それだけ優秀な教授という証拠である。ハーバードの東アジア研究所は、社会学を越えて経済や政治の分野まで守備範囲にしている。元駐日大使のエドウィン・オールドファザー・ライシャワー氏もメンバーだ。ヴォーゲル氏は1958年から2年間日本に滞在し、日本の家庭を研究した。今回の1年間の滞在では、日本の財界を解明したいという。中国語にも通じ、学者以外にオルガナイザーとしての評価も高い。ライシャワー教授と並ぶ大型日本学者として注目されている。

               ◇

――「日本を研究しよう」と思われたきっかけはどういうことなんですか?
「私はアメリカで社会学を勉強していまして、1958年に博士号を取りました。その時、私の先生が『もう少し外国の研究をすれば、アメリカの社会をもっと客観的に見れるのではないか?』と言うんです。それも、アメリカと似ているヨーロッパの社会よりは、全然似ていない日本のほうがいいと考えたんです。丁度、日本人の友人もいましたから」

――でも、国としてはより難しいほうを選ばれた。
「最初に日本に来たのは1958年で、2年間いました。その内の1年間は日本語の勉強、残りの1年間は実際の調査、家族のことを調べていました。それで一度アメリカに戻り、イェール大学の助教授を一時していました。イェール大学にいる間、私は益々『東アジアの社会を専門に研究したら面白いんじゃないか?』と思うようになりました。その矢先、母校のハーバード大学で中国の研究者を探していた。前に述べた私の先生が、『東アジアを研究したいなら、中国も研究したらどうか?』と言うんですね。日本のことを勉強して、それから中国を研究すると両国を比較できる。その為にも、もう一度、日本の社会について研究しようと思って日本に来たんです。今度は日本の財界について研究しようと考えています。アメリカ人の目にはちょっと神秘的なものですからね」

――しかし、日本語お上手ですね。
「いやいや、まだまだです」

――日本で育ったから日本の研究を始めたというんじゃなくて、全く知的な、インテレクチュアルな関心から研究を始められたんですね。
「そうです。写真結婚と同じだと思うんですね。最初に結婚して、それから親しみが出てきたということですね」

――それにしても、写真結婚するには、漢字とか日本語というのは大変な障害ですね。
「そうですね。若し、前からどのくらい難しいかということをちゃんと知っていたら、多分入らなかったと思います(笑)。でも、もう日本が好きになったし、研究が進んでいるから仕方がない。あとは一生懸命頑張ってやるだけです」

――前に来日された時、家族の研究をされたということですが、日本の家族でどういうところが一番面白かったですか?
「非常に沢山あったので、どれが一番かはあまり考えられません。例えば、内孫と外孫、長男と次男を日本の家では区別します。これが本人の性質に対してどういう影響を持ってくるのか。例えば農業の場合には、長男は大体、自分の土地を持っているから、家を継ぐ責任がある。けれども小さい商人、例えば下町の小さい店を持っている旧中階級というようなところの長男は、会社に入ったら普通のサラリーマンになってしまう。つまり、長男と次男の区別をしなくなってしまう。このようなことを、私は“新中階級”というテーマで纏めて本にしたんです。英語で“new middle class”、つまり新しい中産階級という意味です」

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【WATCHERS・専門家の経済講座】(16) 保護主義に勝者はいない――石川城太氏(一橋大学大学院経済学研究科教授)

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「アメリカのドナルド・トランプ政権が、 次々と保護主義的な政策を打ち出しています。カナダで開かれた主要国首脳会議・シャルルボワサミットでも大きな議題になりました。今後、日本企業にも影響が広がる懸念がある」。アメリカは3月、鉄鋼に25%、アルミニウムには10%の関税を上乗せする輸入制限措置を発動した。輸入車に25%の関税を上乗せすることも検討している。「世界の人々を驚かせたのは、アメリカが当初、鉄鋼とアルミニウムの輸入関税上乗せについて、『全ての国を対象にする』と発表したことです。『輸入増がアメリカの安全保障を脅かしている為だ』と主張しています。輸入車への関税も同じ理屈です。ただ、アメリカはその後、カナダやEU、ブラジル等7ヵ国・地域については、一時的に鉄鋼とアルミニウムの関税の適用を猶予しました。結局、6月からブラジルや韓国等の4ヵ国以外には関税をかけることになりましたが、7ヵ国・地域からの輸入量のシェアは鉄鋼で6割以上、アルミニウムで約5割に上ります。それらを除外する可能性があったとすれば、安全保障という理由には無理があるでしょう。トランプ大統領の交渉手法は、相手に脅しをかけて、少しでもアメリカにとって良いディール(※取引)を纏めようとする特徴がある。輸入関税上乗せの一時的な猶予は、FTA(※自由貿易協定)交渉で有利な条件を引き出す為のカードとする狙いもあったようです。実際に、韓国は関税上乗せの免除の代わりに、アメリカへの鉄鋼製品の輸出量に上限を設ける等の譲歩を迫られました。今後、トランプ政権は日本に対しても、2国間のFTA交渉を迫ってくるでしょう」。

「輸入車の関税についても、交渉のカードとして使う可能性があります。鉄鋼やアルミニウムについては、今のところ日本企業への影響は限られています。日本の製品は、他国の企業では製造できない高品質なものが多いからで、関税が上がってもアメリカ企業は輸入せざるを得ず、主に被害を受けるのはアメリカ企業のほうです。日本の粗鋼生産量の内、アメリカへの輸出は約2%に過ぎない。ただ、一般的にアメリカのような経済規模が大きい国が関税をかけると、世界全体の鉄鋼需要が減り、価格は下がります。アメリカから締め出された鉄鋼がアジア等に流れれば、日本の製品と競合します。自動車の関税が引き上げられれば、日本企業への打撃は一層、深刻なものとなります。鉄鋼等と同様、韓国が適用を免れれば、アメリカでの日本車の競争力は大きく低下するでしょう。更に懸念されるのは、アメリカの輸入制限に対して中国やEU等が報復措置を取り、世界中に報復合戦が広がることです。1929年からの世界大恐慌後には、アメリカが自国産業保護の為に関税を引き上げると、各国が報復関税を課しました。各国で外国製品を締め出す“ブロック経済”化が進み、輸出を増やす為に通貨の切り下げ競争も起こった。世界の貿易量は約4年で3分の1に縮小。世界経済が深刻な不況に陥り、第2次世界大戦の一因となりました。各国とも今回、世界大恐慌後のような強硬手段を押し通すとは思いません。ただ、輸入制限が各国に広がると、その影響は過去より大きくなる。グローバル化で、生産工程が世界各地に分散しているからです。例えば、中国の企業が日本から部品を輸入して製品を作り、アメリカに輸出している場合、アメリカの輸入制限で中国製品の需要が減れば、日本の部品メーカーの売り上げも減る。世界的なサプライチェーンにより、影響は広範囲に広がってしまうのです。アメリカの保護主義に対抗するには、どうすればいいのでしょうか? 日本が頼れる公的な組織は世界貿易機関(WTO)です。過去には、WTOが迅速な紛争処理で成果を上げた例があります。2002年にジョージ・W・ブッシュ大統領が鉄鋼に最高30%の関税を課した際、WTOはルール違反だとして輸出国に対抗措置を認めた。EUがアメリカからの輸入品に報復関税を課す方針を表明すると、アメリカは関税を撤廃しました。ただ現在、WTOの紛争処理機関で上級審にあたる上級委員会の委員に欠員が出ています。WTOを軽視するアメリカが欠員の補充を阻止しているからで、審査が進み難くなっている。日本は地道に、上級委員会委員の補充等機能の立て直しを全世界に訴えていくべきでしょう。1980年代の日米自動車摩擦を含め、『アメリカの保護主義的な政策はアメリカ経済にマイナスになった』との研究結果が多い。対策に決め手はありませんが、日本の政府や企業が、アメリカ国内で不利益を受ける業界団体や他国とも連携しながら、『保護主義はアメリカの利益にならない』とアメリカの世論に訴え続けることも大事です」。 (聞き手/経済部 福森誠)


キャプチャ  2018年6月13日付掲載

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