【コラム】 『やすらぎの郷』を担ぐ“意識高い系”

“倉本聰先生”が手掛ける『やすらぎの郷』(テレビ朝日系)が、一部のメディア関係者に何かと持ち上げられている。嘗てテレビで活躍した俳優・女優たちが入居する老人ホームを舞台とした群像劇ということで、石坂浩二・八千草薫・浅丘ルリ子・五月みどり等のべテラン勢が揃って出演。月曜日~金曜日に毎日20分の枠を確保。更に、“テレビを駄目にしたテレビ局の社員は入れないホーム”という設定等が、「これは現在のテレビに対する痛列な一撃」「若者向けの軽薄な番組重視への警鐘」等と、“意識高い系のオトナ”がテレビ局を批判する為の格好のアイテムにしているのである。そして筆者は、このやすらぎの郷を持ち上げる“風潮”に違和感を覚えるのである。倉本先生の「年配者が見たい番組が無いので自分が書いた」という思いは大変立派だとは思うが、ご本人が言っている通り、地上波のゴールデンタイムでは実現しない企画だろう。ただ、この「現在のテレビに対して批判的な内容が、“意識高い系のオトナ”の心を擽る、そして持ち上げる」という図式が、如何にもテレ朝というか、その背後の朝日新聞風で、「なんだかなぁ」という印象である。やすらぎの郷を賞賛する人たちは、実際にどれだけOAを見ているのだろうか? 意識高い系の方々はお仕事もお忙しい筈で、平日の12時過ぎにテレビをじっくり見ている暇など無い筈だ。「倉本聰がテレビへの批判を込めたドラマを書いた」という部分に敏感に反応して、賞賛し、返す刀でお決まりのテレビ批判のアイテムにしているといったところだろう。これも朝日新聞と親和性の高そうな反応である。4月のスタート当初には「高視聴率で発進!」という記事も出ていたが、現在は5~6%であって、特段低くはないが高い訳でもない。やすらぎの郷を見ている視聴者は圧倒的に高齢者であり、スポンサーを見れば個人法律事務所や、女性社長が自ら出演する美白クリーム等が名を連ねていて、資金潤沢なイメージは薄い。元々、テレ朝の昼時間帯は『徹子の部屋』とか『ワイド!スクランブル』といった高齢者に支えられている番組が続いていた訳で、やすらぎの郷はその一環ということになるだろう。この12時台の高齢者向けドラマ、秋からは黒柳徹子さんの半生を描く、これまた高齢者向けドラマをやるという。“意識高い系のオトナ”は、どのような反応をみせてくれるのだろうか? 多分、反応しない気がするのだが。


村上和彦(むらかみ・かずひこ) フリーディレクター。1965年、神奈川県生まれ。筑波大学第2学群比較文化学類卒業後、1988年に『日本テレビ』に入社。スポーツ局・制作局・編成局等を経て、2011年1月より同制作局専門部長兼演出家。2014年7月31日を以て同局を退社し、フリーに。主な担当番組に『モーニングチャージ!』(テレビ東京系)・『違うdeSHOW』(AbemaTV)等。


キャプチャ  2017年7月号掲載

テーマ : テレビドラマ
ジャンル : テレビ・ラジオ

【移民社会アメリカ・聖域都市】(05) “寛容”リスト掲載に焦り

20170816 10
「未だ残っている」――。先月下旬、カリフォルニア州テハマ郡レッドブラフの郡議会庁舎で、議員のボブ・ウィリアムス(59)はパソコンの画面に向かって吐き捨てるように言った。テハマ郡は、不法移民に寬容な“聖域都市”を宣言したことはない。だが、保守系団体が作成した聖域都市リストに郡名が載せられていた。削除を求めているが、変化が無い。「連邦政府に目を付けられなければいいが…」。ウィリアムスが心配するのは、連邦政府からの補助金カットだ。大統領のドナルド・トランプは、1月末に出した大統領令で、聖域都市への補助金停止を打ち出した。同郡は、2250万ドル(※約24億円・2015会計年度)の補助金を橋の建設等に活用している。大統領令は4月以降、効力が差し止められているが、司法省は今月3日、同州サンバーナディーノ等4都市に対し、補助金の一部停止を予告した。「補助金無しでは、うちのような小さな自治体はやっていけない」。人口約6万人のテハマ郡は、果樹園が多い長閑な地域だ。ウィリアムスは、トランプ政権発足直前、リストの存在を他郡の議員から聞いた。関係ないと思って覗いたインターネット上のサイトで郡の名前を見つけ、衝撃を受けた。議会で議題にした。「無視すればいい」という意見も出たが、リストに出身郡が掲載されていることを理由に、ホワイトハウスの職員に採用されなかった事例も聞いていた。「連邦政府は見ている。看過できない」。

リストに載った経緯を調べた結果、連邦政府当局が拘束した不法移民を郡の拘置所に勾留せず、釈放したことが、“政府への非協力”と見做されたと判明した。「拘置所は重犯罪者で満杯。仕方がなかった」。だが、言い訳よりも態度で示すしかない。ウィリアムスは、連邦政府への協力を誓う“非聖域都市”の宣言を提案し、2月に議会で採択された。それでもリストから郡の名が消えない。3月には、不法移民を取り締まる連邦政府の『移民・関税執行局(ICE)』が郡内で一斉摘発を行い、40人以上を拘束した。「圧力を感じた。悪いことをした訳でもないし、誰にも逆らっていないのに、上から睨まれているようだ」。「3月の摘発は後で知った。協力はしていない」。同郡の郡保安官を務めるデーブ・へンクラット(56)は、事務所で取材に応じた。連邦政府との捜査協力は、「要請があって、必要だと判断すれば協力する。基準は、郡の治安に関わる事案か否かだ」と強調する。今回は要請が無かったという。捜査機関での勤務経験が約30年のべテランで、薬物犯罪の撲滅に力を入れてきた。嘗ては自宅で大麻を栽培するヒッピーの白人の摘発で成果を上げた。今は中南米からの大量密輸や、マフィア主導の大規模栽培に手古摺る。「連邦政府との協力で悪質な犯罪を摘発できるなら、やるべきだ」とも言う。ただ、ウィリアムスとは旧知の間柄だが、非聖域都市宣言には「賛成でも反対でもない」。“住民の安全を守る”という最優先の課題が置き去りにされていると感じるからだ。3月に摘発された不法移民の中には、不法滞在以外は問題の無い農民らも含まれていたとされる。「そういう人たちを態々逮捕したり、逮補に協力したりするのは、治安の改善に直結しない」と言い切った。一方のウィリアムスは、拘束された不法移民の妻から「夫は無免許運転で数回捕まっただけなのに」と抗議を受け、「そんな人間と同じ道路を運転するのはごめんだ」と思った。非聖域都市宣言は、それなりに意味があると感じている。郡のことを第一に考えながら、対応に違いも生じる2人が一致したのは、「トランプに振り回されたくない」という点だった。へンクラットは言った。「聖域都市なんて存在する必要がないのが理想だ」。 《敬称略》 =おわり

               ◇

ロサンゼルス支局 田原徳容が担当しました。


⦿読売新聞 2017年8月9日付掲載⦿

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【移民社会アメリカ・聖域都市】(04) 隣人都市、新たな宣言

20170816 09
「調子はどうだい?」。6月中旬、アイダホ州ツインフォールズの酪農場で、経営者のマイク・ロス(67)が、乳牛の世話をするエリトリアからの難民であるゴイトア(40)に声を掛けた。「家族を呼び寄せる手続きを始めた。大丈夫かな?」。不安そうなゴイトアに、ロスは言った。「心配するな。ツインフォールズは“良き隣人の町”なんだ。難民も移民も大歓迎さ」。ジャガイモの産地として有名な同州の南部に位置する人口約5万人の小都市・ツインフォールズは、今年5月に“隣人都市(neighborly community)”を宣言した。酪農が盛んで、労働力確保の為、移民の他、約40年前から連邦政府のプログラムを活用し、中東やアフリカからの難民を積極的に受け入れている。「難民や移民に寛容だが、“聖域都市”は名乗らない。そんな我々には、この新しい宣言を声高に主張する必要があった」。市長のショーン・バリガー(45)が強調した。きっかけは、昨年6月に起きた難民の子供による性犯罪事件だった。イラクとエリトリアから来た7~14歳の少年が、5歳の女児に悪戯したとして逮捕された。時は大統領選の真っ只中。ドナルド・トランプが、治安維持を目的に、不法移民の一掃や難民の受け入れ制限を訴えていた。トランプを支持する『ブライトバートニュース』等右派メディアが、事件に目を付けた。ツインフォールズに拠点を設け、反難民・反移民キャンペーンを展開した。

「イスラム移民は如何に地域を破壊したか」――。扇情的な見出しと共に、「シリア難民のイスラム教徒が子供をレイプした」等と、事実と異なる内容が次々と流された。市には抗議のメールが殺到し、バリガーと妻は殺害の脅迫を受けた。市議会にも州内外から抗議者が押し寄せ、難民拒否の署名運動が始まった。「この市は難民らに洗脳されている」との流言も飛んだ。バリガーは頭を抱えた。事件は許されず、少年らは罪を償わなくてはならない。ただ、難民や移民の排除に繋がるものではない。彼らは産業を支える大切な労働力だ。一方で、ゴイトアら難民は怯えて自宅に閉じこもりがちになり、「不法移民が別の町に移動している」という噂も出た。「危機を救ったのは、ボーイスカウトの少年たちだ」。市議のグレッグ・ランディング(65)が振り返る。少年たちは市庁舎を訪ね、「今こそ難民の人たちを歓迎する町にしましょう」と提案した。難民センターでボランティアを経験し、異国に馴染もうと努力する外国人らを応援してきたという。ランディングの祖父母も、約100年前にオランダから移住してきた。英語が話せず、苦労しながら必死に酪農に取り組み、この地に根付いた。今また、多くの難民・移民が新たな生活を始め、アメリカ人になろうと頑張っている。「誰もがゼロから始めた時代があったんだ。子供たちに気付かされ、目が覚める思いだった」。バリガーはランディングらと相談し、「この難局を機に、改めて難民・移民に優しい町をアピールしよう」と決めた。ボーイスカウトは、全ての人が歓迎されていると感じられるまちづくりを目指す“歓迎都市(Welcome City)”として、多くの聖域都市も名を連ねる団体への加盟を提案した。だがランディングは、「聖域都市の代わりとして、トランプに目を付けられかねない」と感じた。出した答えが“隣人都市”だった。市民の多くが賛同し、重苦しい雰囲気は消えた。右派メディアも去った。ロスの酪農場でも、従業員200人の4分の1以上を占める難民たちに笑顔が戻った。ゴイトアは、6~14歳の4人の子供がツインフォールズに到着する日を楽しみにしている。故郷のエリトリアは、2000年代後半から隣国のエチオピアと緊張状態にある。難民申請を認められてアメリカ入りし、酪農場で働き始めたのは3年前。英語が出来ず苦労したが、「ボスも仕事仲間も町の人も優しいから頑張れる。できるだけ長く住みたい。我々難民にとって“聖域”だから」。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年8月8日付掲載⦿

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【移民社会アメリカ・聖域都市】(03) 強制送還、解決にならない

20170816 08
「守り続けるしかない」――。6月中旬、テキサス州オースティンにある教会で、牧師のバブズ・ミラー(74)は深く溜め息を吐いた。グアテマラから来て不法滞在を続けるヒルダ・ラミレス(29)と長男(11)を匿って、1年以上になる。親子はバラク・オバマ前政権下で滞在の延長措置を受けてきたが、昨春、「更新される可能性は殆ど無い」と考え、教会に駆け込んだ。教会は、当局が介入を控える“聖域”だからだ。その後、ドナルド・トランプ政権が発足し、不法移民対策が進む中、同州で不法移民に寛容な措置を改める聖域都市禁止法が成立。9月施行が決まった。親子がアメリカに滞在できる可能性は、更に厳しくなった。オースティンは、“聖域都市”と公言こそしていないが、不法移民の強制送還を行う連邦政府の『移民・関税執行局(ICE)』への協力を控えている。ただ、ICE単独の捜査は妨げられない。そこで、ミラーのいる教会や非営利団体等、計25の組織で構成する『聖域ネットワーク』が、300人以上のボランティアと共に、ICEの“非人道的な行為の阻止”に取り組んでいる。「ICEはメディアや市民への露出を嫌う。騒ぎ立て、仕事をやり難くするのが戦術です」とミラー。ICEの出没情報を共有するホットラインを整備。摘発現場に急行して不法移民を保護し、捜査員に裁判所発行の正式な捜索令状の提示を求める。「幹部がサインしただけの書類で強引に踏み込むのが常套手段。そこを突く」。

2月、ICEの大規模な捜索で、50人以上の不法移民が拘束された。ネットワークも対抗策を強化し、ICEの動向に目を光らせる。ミラーは、第2次世界大戦中、ホノルルで生まれたポルトガル移民3世だ。旧日本軍の真珠湾攻撃に起因する白人の日系人に対する差別意識は、「同じ移民として複雑な思いだった」と振り返る。教会の仕事で移り住んだテキサスも、「元来の居住者だった先住民やメキシコ人と、この地を奪った白人との間に深い溝を感じる」と話す。違う人間に対する寛容さは、人として大切ではないか――。ミラーがアメリカの牧師として、常に考えてきたことだ。「不法に入国・滞在することを奨励している訳ではない。貧困や暴力等から逃れる為にそうせざるを得ない人たちを、世界の大国であるアメリカが杓子定規に送還するだけでは、問題は解決しない」。ミラーらの頼みの綱は、オースティン、ヒューストン、サンアントニオ等、聖域都市政策を掲げる自治体による抵抗だ。オースティン等は5月、禁止法の施行差し止めを求め、提訴した。オースティン市長のスティーブ・アドラー(61)は、「市の治安維持と移民対策は市の仕事。治安を悪化させる最大の要因は、連邦・州両政府の介入で、地元当局と不法移民との間で築かれた信頼関係が崩れることだ」と主張する。逆に、州から法に従うよう訴えられたが、「不法移民との間に壁を築くのではなく、橋をかけたい。それが私の信条だ」と戦う覚悟を示した。「勢い付くICEは、教会もお構いなしに襲ってくるかもしれない」。ミラーはそう考え、自衛策を講じ始めた。誰でも参加できるようドアを開放していた日曜ミサは、鍵を閉めて行うことにした。ラミレス親子が暮らす部屋への通路に、新たなドアも取り付けた。親子は教会にほぼ缶詰め状態だが、ボランティアによる“警護”を付け、ヒルダの長男を学校に通わせている。「私たち親子は、暴力が蔓延るグアテマラには居場所が無い。アメリカしかないんです」。ヒルダの訴えに、ミラーは自分にも言い聞かせるように、「大丈夫」とだけ言葉をかけた。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年8月7日付掲載⦿

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【移民社会アメリカ・聖域都市】(02) ならず者、なぜ守られるの?

20170816 07
6月中旬の午後。テキサス州ヒューストン近郊の公園墓地で、ローラ・ウィルカーソン(54)は、我が子の笑顔が彫られた大理石の墓碑の前にしゃがんで語りかけた。「ジョシュ、報告があるわ。お前を殺したような人間は、これからどんどんいなくなるのよ」。小柄で気の優しい三男のジョシュは、2010年11月、ベリーズ出身で不法滞在だった同級生に殺害され、18年の短い生涯を閉じた。“報告”とは、同州で不法移民に寛容な措置を取らないことを定めた聖域都市禁止法が成立したことだ。州知事のグレッグ・アボット(59)が5月7日、法案に署名した。同法には、不法移民の強制送還を行う連邦政府に警察が協力すること等が盛り込まれた。「当然のことがこれまで出来ていなかった。ジョシュのような悲劇はもう無くなる筈」。7年前のその日、学校を出てから戻らない息子を家族で捜した。深夜、ジョシュの車と捨てられた靴等を見つけた。警察の捜査で、ジョシュが殺害され、容疑者が同級生である可能性が浮上したとわかった。「どんな子? 親は?」。詰め寄る母親に、警察官は言った。「聞けないね」。聞けない? 意味がわからなかった。ヒューストンは所謂“聖域都市”で、警察官は原則、逮捕前の捜査対象者に人種や滞在資格を尋ねないことになっていた。聖域都市が何かも知らなかった。そして、殺されたジョシュより、容疑者が守られているように感じた。3年後の裁判。同級生は、ジョシュの所持金2ドルを奪って焼き殺した理由について、「俺の犬を蹴ったから」と言った。判決は禁錮99年。「何故、こんな人間がここにいて守られるの?」。疑問が消えなかった。悲惨な体験を語りながら、聖域都市の是非を問う講演活動を始めた。

2015年、ウィルカーソンの思いを代弁する人物が大統領候補として現れた。ドナルド・トランプだ。アメリカ人の安全と雇用を最優先し、不法移民の一掃と聖域都市の撲滅を訴えていた。「この人はアメリカ人を第一に考えてくれる」。ウィルカーソンが会いに行くと、「貴女の息子の死を無駄にしない」と誓ってくれた。トランプに報いようと、選挙広告に出演。集会を企画し、応援演説も行った。熱烈なトランプへの支持で、反トランプ側から攻撃された。同じく聖域都市のサンフランシスコが選挙区である民主党下院の重鎮議員のナンシー・ペロシには、テレビ討論の場で「貴女には同情しますが、聖域都市の不法移民は法を守る人たちです」と言われた。悔しくはなかった。寧ろ、持論の正しさに自信を深めた。「“不法移民”と言う時点で法を守っていないじゃない」。トランプの当選に「ジョシュが浮かばれる」と喜び、聖域都市への補助金停止を打ち出した大統領令を「有言実行だ」と称賛した。「テキサス州は共和党の牙城。大統領の政策を後押しするのは当然だ」。ヒューストンの共和党事務所で、副代表を務めるジュリオ・トレス(40)は声を強めた。メキシコ出身。合法的に入国し、数年かけてアメリカ国籍を取得した。「自力で頑張った。出来ないことではない」と言い切る。メキシコと国境を接する同州は、移民の人口が470万人で全米第2位。うち147万人が不法移民とされるが、「裏を返せば、300万人以上が“合法移民”。法を守って滞在することは可能だ」。禁止法の草案を作った州上院議員のチャールズ・ペリー(55)は、「公共の安全を最優先した内容だ。連邦政府・州・自治体が連携し、不法行為に対処するという当たり前の行為を確認したものだ」と説明する。禁止法は9月1日に施行される。ウィルカーソンは最近、講演でこんな話をした。「ジョシュの死は、私に起きた9.11(※同時多発テロ)。突然、外国から来たならず者に家族を奪われた。誰にでも起こり得る。侵入者を甘く見てはダメ」。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年8月6日付掲載⦿

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【移民社会アメリカ・聖域都市】(01) 安住の地、誰もが平等

アメリカには、不法移民に寛容な措置を取る“聖域都市”と呼ばれる自治体がある。移民国家として発展してきた国らしい存在と言える一方で、移民政策見直しを進めるドナルド・トランプ政権は、「犯罪の温床になる」として聖域都市の“撲滅”も公約に掲げる。徹底抗戦か移民排除か――。模索を続ける自治体や関係者の姿を追った。

20170816 06
先月中旬の夕方。サンフランシスコ中心部の商業地に囲まれた広場『ユニオンスクエア』は、白人・黒人・ヒスパニック(中南米)系・中国系等様々な人々で賑わっていた。「ここに来ると安心する」。ホンジュラス出身で不法滞在を続けるアラン・ロドリゲス(仮名・35)が呟いた。母国では教師だった。治安が悪く、強盗集団への仲間入りを拒むと暴力を受け、全身打撲で2ヵ月入院した。「次は殺される!」。昨年9月、僅かな貯金と観光ビザでアメリカに来た。「サンフランシスコを目指してきた。不法移民を守る“聖域”だと聞いたから」。ビザの失効後も、計画通り、ここに残った。貯金が尽き、一時は路上生活となったが、ヒスパニック系の食料品店が何も聞かずに雇ってくれた。ホンジュラス出身の女性が所有するアパートの部屋も借りられた。支援団体の助言で申請した労働許可証も取得できそうだ。「これぞアメリカ、天国だ! 将来はIT企業の仕事に就きたい」。人口約84万人のサンフランシスコは、港が整備された1860年代以降、移民が流入して労働力となり、発展を支えた。その後、増え過ぎた中国や日本からの移民を排斥した歴史も持つ。第2次世界大戦後は、主に中南来系の移民が増加。移民の制限を念頭に不法入国対策を進めた連邦政府に反発し、同市は1989年、所謂“聖域都市条例”を制定した。「『移民対応は政府の仕事で、市は人材や資金を市の為に使う』というのが条例の趣旨。要は、『政府の取り締まりに協力しない』と決めた訳だよ」。当時を知る牧師のリチャード・スミス(67)が言った。

教会は長年、不法移民への支援活動を主導し、衣食住を提供してきた。「法律など存在しなかったこの大陸に人が集まり、アメリカができた。後から来る人が不法者として扱われるのはおかしいでしょう?」。西海岸を代表する聖域都市として、不法移民に寛容な措置を取り続けた同市は今、大統領のドナルド・トランプの標的となっている。トランプは大統領選中から、2015年に同市で強制送還歴のある不法移民のメキシコ人の男が白人女性を殺害した事件を持ち出し、「不法移民をのさばらせた結果、悲劇を招いた」と非難してきた。強制送還歴のある人物の再入国を処罰する法の制定にも躍起だ。「トランプが拘れば拘るほど、サンフランシスコは不法移民を守る結束を強めることになるんだ」。市民に選ばれて公設弁護人を務めるジェフ・アダチ(57)は、市内の事務所で毅然と言った。トランプ政権の方針を受け、「強引な取り締まりで不当な扱いを受けているケースがあるのでは?」と考えたアダチは5月、勾留された不法移民の弁護を無償で引き受ける特別テームを発足させた。市がチームの結成を全面支援した。公的な弁護制度が無く、強制送還を待つしかなかった不法移民を積極的に救うサンフランシスコ独自の取り組みだ。日系アメリカ人であるアダチの祖父母と両親は大戦中、強制収容所に入れられた。だから、「差別や迫害の対象となった人を助けるのが自分の使命」と考える。チームは、拘置所でこれまで100人以上と接触し、6人の解放に成功した。市は、聖域都市への補助金停止を打ち出したトランプの大統領令を、「自治体への圧力は憲法違反」と連邦地裁に訴え、4月に効力差し止めの決定を引き出した。中国系アメリカ人である市長のエドウィン・リー(65)の姿勢は一貫している。「住民に対する我々の責務は、決して変わらない」。ロドリゲスは、市職員に尋ねたことがある。「聖域都市としての不法移民に対する保護対策は何?」と。答えは「無い」だった。戸惑う彼に、職員は言った。「不法移民にも昔からの住民にも、同じように公共のサービスを提供する。誰もが平等だと思うから、特別に対応する必要がないんだ」。 《敬称略》


⦿読売新聞 2017年8月5日付掲載⦿

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“核心”習近平と毛沢東の亡霊――中国共産党の最高権力者は何を目指すのか?

中国共産党は、習近平総書記(国家主席)を党指導者として別格の存在である“核心”に位置付けた。過去の歴代指導者では、毛沢東・鄧小平・江沢民に続く4人目の核心。これ以上になく強まる1強体制で、習主席は中国をどこへ導こうとしているのだろうか――。 (取材・文・写真/ノンフィクションライター 八木澤高明)

20170816 03
鼠色のジャンパーを着て、黒いスーツケースを持った男が3人ほど、富士山の麓にある『御殿場アウトレットモール』を歩いている。最近、御殿場だけでなく、関東周辺のアウトレットモールでよく見かける中国人の集団である。一方で、中国人の爆買いによって支えられていた小売業大手『ラオックス』の営業利益が、前年比98%減の1億円となる等、中国人客が落としていくマネーは大幅に減っている。2016年、中国の経済成長率の予測は6.7%と、2010年に2桁の成長率を記録して以来、年々鈍化し続けている。世界経済をみれば、好景気あれば不景気があり、いつかは中国バブルが崩壊するのは当然の理である。ただ、一党独裁体制の中国共産党にとって、バブル崩壊はそのものずばり、中国共産党の終焉を意味すると言ってもいいだろう。それ故に、習近平は必死の舵取りを続けている。習近平は、2012年に中国共産党総書記、その翌年に国家主席に就任すると、“中国の夢”というスローガンを掲げた。「中国は、経済発展を優先するあまり、経済格差は広がり、中国社会の人心が乱れ、党幹部は汚職に走り、人民はモラルを失ってしまった。そうした社会を是正し、中国に暮らす誰もが平等に経済的に調和の取れた生活ができる社会を築き、嘗ての中華民族の誇りを取り戻す」というものである。それまでも、中国共産党内における汚職等は民衆の不満を高めていたが、歴代のトップは的確な対策を取れなかった。しかし、習近平は「虎でも蝿でも、腐敗した党幹部を容赦無く処罰する」と宣言し、風紀の引き締めを行っていた。2012年には、当時の重慶市トップだった薄熙来を妻によるイギリス人殺害や不正蓄財等で逮捕し、2014年には胡錦濤政権下の中央政治局常務委員・周永康を逮捕。更に2015年には、日本でいう大臣クラスの大物幹部41人が逮捕され、腐敗事件の摘発数は中国全土で4万件を越えた。

習近平が主導する反腐敗運動は、風紀の粛正だけではなく、数々の大物幹部たちが逮捕されていることから、権力闘争という見方もされる。習近平は反腐敗闘争を通じて、中国共産党内の他の派閥を潰して、権力を一手に握ろうとしているというのだ。その様は、中国共産党の創設メンバーの1人で、初代国家主席となり、『文化大革命』を発動し、ライバルを蹴落としていった毛沢東を彷彿とさせるという者もいる。果たして、習近平は毛沢東の道を歩もうとしているのだろうか? 習近平とその父親・習仲勲は、親子2代に亘って毛沢東と浅からぬ因縁がある。中国共産党の高級幹部の子弟らは、その強いコネクションから“太子党”と呼ばれるが、その筆頭格にいるのが習近平である。父親の習仲勲は副首相を務め、毛沢東の革命を草創期から支えた。嘗て毛沢東率いる紅軍は、蒋介石率いる国民党軍の攻撃に為す術なく破れ、中国南東部の江西省端金にあった根拠地を追われ、中国西北部にある延安まで逃れた。世に有名な長征である。紅軍は、四川省・チベット高原・甘粛省等中国の外縁部を180度回り、1934年から2年がかりで約1万2000㎞を踏破した。瑞金を出る時には10万人いたという兵士が10分の1以下に減っていたほど、過酷な逃避行であった。這々の体で中国の辺境を歩いてきた毛沢東率いる紅軍を出迎えたのが、習近平の父親・習仲勲だった。毛沢東が延安に逃れた1930年代、延安のある陝西省は中国共産党の支配地域で、“陝北ソビエト”と呼ばれ、この地域の幹部だったのが習仲勲だった。彼は、もう1人の幹部・劉志丹と共に、国民党軍の攻撃により、謂わば行き場を失った毛沢東の一団に根拠地を提供した中国革命の功労者である。長征が終わって半年後の1936年4月、劉志丹は毛沢東から日本軍への攻撃を命じられ、その途上で戦死した。劉志丹の死に関しては、当時からここ延安で権力を確固とする為、毛沢東の謀略によるものとする説が根強くある。毛沢東が天安門で中華人民共和国建国を宣言してから13年後の1962年、劉志丹を主人公にした小説が発表された。その刊行に関わったのが、劉志丹の功績を人一倍認めていた習仲勲であった。小説は劉志丹を英雄視したもので、当時、文革により強大な力を持っていた毛沢東は激怒した。副首相であった習仲勲は真っ先に槍玉に挙げられ、副首相を解任された後、16年に亘って監禁状態に置かれた。中国共産党において毛沢東は神聖なる存在で、彼以外の英雄の存在は許されないのだ。劉志丹の小説を快く思わなかった毛沢東に、今日の習近平にも通ずる共産党が抱える宿痾を見る。

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福島廃炉は今世紀中に終わらない、“40年・8兆円プラン”の虚妄――“石棺方式”に込められた思惑、チェルノブイリ型の鉄の楼閣

20170816 01
「1Fは、このままでは“サグラダファミリア(聖家族教会)”になるぞ!」――。福島県民は多くを知らない。そのことに、一部の原子力関係者の不安と義憤は募る。“1F”こと『東京電力』福島第1原発の廃炉を巡り、『原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)』が今月に発表する技術戦略プランの策定が大詰めを迎えている。プラン策定は3度目であり、今回は2021年の燃料デブリの取り出し開始に向け、メルトダウンした1~3号機の号機毎の工事計画が固まる。ロボットやマニピュレーターの開発も本格化し、まさに廃炉の実践プランとなるものだ。しかし、肝腎の期間と費用はざっくり40年・8兆円と曖昧なままであり、逆に喧伝されているのは燃料デブリの“全量取り出し”の方針だ。恐らく、福島県民の大半は「40年・8兆円を費やせば、1Fは綺麗に“更地”になる」と思い込んでいるだろう。しかし、原子炉格納容器の底部に飛び散った燃料デブリの回収は、前人未到の事業なのだ。あるNDF関係者は打ち明ける。「3基合わせて約880トンのデブリの内、回収できるのは精々半分。が、そのことを県民に知らせていないので、40年が80年・100年かかっても全量取り出しを続けることになる」。つまり、建築家のガウディが設計したバルセロナの世界遺産宛ら、世紀を跨いで石積みプロジェクトが続くという訳だ。しかし、NDF事務方の経済産業官僚は、そのことを意識していた形跡がある。前回、2016年版プランには、“石棺方式”の4文字を忍ばせていたからだ。

「こんなこと、書く必要ないだろ」――。昨年6月、2016年版プランを審議していたNDFの廃炉等技術委員会は、1人の専門家から原子炉をコンクリートで覆う“石棺方式”に不審の声が上がった。旧ソビエト連邦のチェルノブイリ原発の事故処理と同じ方式であり、下手に触れれば地元の反発を招く。事務方は「石棺を採用しない方針を明記する」と押し切ったが、その書きぶりは微妙であり、「今後、柔軟に見直しを図る」とも追記されていた。発表当日の7月13日、NHKが「廃炉計画で初めて“石棺”に言及」と報じると、案の定、地元は大騒ぎとなった。翌日上京した福島県の内堀雅雄知事は、経済産業省の高木陽介副大臣、NDFの山名元理事長に抗議。政府側は陳謝して、文言を削除した。石棺方式を忍ばせたのは、経産省原発事故収束対応室の湯本啓市室長と、同省出身であるNDFの池上三六執行役員である。両氏の周辺からは、こんな声が聞こえる。「経産省は、デブリを全量取り出せない場合を想定し、“石棺”の選択肢も残しておきたかったのではないか?」。当時、1F事故債務の負担スキームを議論する経産省の有識者会合が始動する直前だった。その後、事故債務は約22兆円へ倍増。この内、廃炉費用も約2兆円から8兆円へ膨らみ、東京電力ホールディングスが全額負担する枠組みが決まった。が、当初は国民負担を主張する声もあり、その場合の世論の反発を恐れ、経産省は廃炉費用の膨張を防ぐ石棺方式に言及したとも受け取れる。8兆円は腰だめの数字に過ぎないが、それでも、東電HDはNDFが創設する基金に毎年3000億円ずつ積み立てていく。廃炉費用は1兆円引き当て済みなので、残る7兆円を毎年3000億円で割ると約23年。燃料デブリの取り出しは、遅くとも2045年には完了していなければならない計算だ。しかし、最新の調査によると、1F2号機の原子炉格納容器内の放射線量は、毎時530Sv。人間が1分で致死量に達する高線量であり、その中でロボットを駆使しつつ、足場にこびり付いたり、配管に入り込んでいる燃料デブリを回収するのは容易ではない。仮に、取り出し開始から10年が経って、半分は回収できたものの、半分の回収見通しが立たず、積立基金も底を突いたらどうするか? しかも、あと20年もたない原子炉建屋の老朽化も進んでいるはずだ。内閣府関係者は、1F事故当時を振り返り、こう指摘する。「最初のボタンの掛け違いが今になって影響している。公的な廃炉機関を作るべきだった」。1F廃炉の中長期ロードマップが2011年12月に策定されたのを受け、当時の原子力委員会は廃炉の第三者機関の設立を訴えていた。イギリスの『原子力廃止措置機関(NDA)』をモデルとしたその構想は、“国が事故処理に責任を持つ”ということだ。しかし、財政負担を嫌う財務省は黙殺し、電力業界も国の関与が深まる日本版NDA構想を敬遠した。つまり、事故処理を東電の無限責任に帰したのである。

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『日本相撲協会』は一代年寄授与問題を放置…稀勢の里ブームに隠された“引退できない”白鵬の苦悩

稀勢の里が奇跡の逆転優勝を果たし、空前のブームが到来している相撲界。しかし、10年以上に亘り角界を支えてきた第一人者の白鵬は今、深い悩みを抱えている。大横綱の知られざる心象風景とは――。 (取材・文/本誌編集部)

20170815 18
新横綱として臨んだ大相撲春場所で、左腕に重傷を負いながら、“史上最大の逆転撃”で連覇を成し遂げた稀勢の里。両国国技館で行われる来たる5月場所も、稀勢の里効果で空前の人気となっており、19年ぶりに誕生した日本出身横綱への期待は、益々大きくなりそうな状況である。「確かに、先場所の優勝はファンの心を打つものがありました」と、相撲評論家の中澤潔氏が語る。「恐らく、新横綱の場所で休場は許されないという責任感が勝ったと思うのですが、左腕が利かない状態でよく勝てたと思います。逆に言えば、本割・優勝決定戦と2連敗した照ノ富士の相撲は、如何にも芸が無かった。まさに、相手に『投げて下さい』と言わんばかりの寄り方で、稀勢の里の唯一の勝ち筋に自分から飛び込んでしまっている。相手は左を使えないのだから、そういう場合は右を封じながら寄ればいいのに、左から行ってしまい、その結果、右の小手投げを打たれてしまった。力だけで勝ってしまう人にありがちな粗い部分が出てしまいましたね」。形の上では、稀勢の里と並んで“同点優勝”の照ノ富士は、5月場所で優勝すれば一応、横綱昇進基準である“2場所連続優勝かそれに準ずる成績”を満たすことになるが、今のところ、綱取りのムードは全く立ち上がってこない。この1年で3回、カド番だったこともあるが、春場所でも琴奨菊での一番に立ち合い変化して勝つ等、相撲内容にも“注文”が付けられている。

「変化ということだけで言えば、稀勢の里も照ノ富士との本割の相撲で左右に変化しているが、怪我をしていることが明らかだった為に特に批判されなかった。稀勢の里は、春場所13日目の日馬富士戦で土俵下に転落した際に左腕を強打したものと言われていますが、何度VTRを見ても、左上腕内側の部分をどこで打ったのか、よくわかりませんでした。稀勢の里は、土俵を割る瞬間に既に顔を歪めていたように見え、『日馬富士の当たりを正面から受け止めた瞬間に、既に筋肉を損傷していた可能性があったのではないか?』と私は思っています。嘗て、元双葉山が(時津風)理事長だった時代、当時の横綱が取組中にやはり左腕を傷め、休場したことがあったのですが、その時に双葉山は『本場所で怪我するのは稽古不足だ』と言い切ったことがありました。稀勢の里も、『ああいった形での怪我は横綱として恥ずかしいことだ』という認識があったからこそ、優勝インタビューで『治療に専念し、早く土俵に上がりたい』という言葉が出てきたのだと思います」(同)。ファンの期待を一心に背負う稀勢の里。その一方で、急速に影が薄くなっているのが、第一人者の白鵬だ。最後に優勝したのは昨年の5月場所。以降、2回の休場があり、最も勝った場所でも11勝止まりに終わっている。並みの横綱であればそれほど騒がれないが、歴代最多の優勝37回を誇る大横綱が、1年近く優勝を逃し続ければ、“衰え”が指摘されるのは当然のことである。「実際に衰えはあると思います」と然るスポーツ紙記者が語る。「負けることそのものよりも、負け方が以前には無かった、正面から相撲を取って力負けするパターンが時々見られるようになった。年齢的にも32歳と、近年の横綱としては最年長の部類に入っており、仕方がないことかもしれません」。優勝29回を誇った昭和の大横綱こと千代の富士は、35歳まで現役を続けたが、近年の“大型化時代”における横綱の引退年齢は、昔より早くなっている。北勝海以降の横綱引退年齢は、北勝海28歳、大乃国28歳、旭富士31歳、曙31歳、貴乃花31歳、若乃花29歳、武蔵丸32歳、朝青龍29歳。こうしてみると、32歳の白鵬や、間もなく32歳の鶴竜、33歳の日馬富士が横綱として“晩年”に差しかかっているのは明白である。しかし、史上最強の横綱として、この10年間の角界をリードし続けてきた白鵬の“存在感”が、稀勢の里の登場でここまでかき消されてしまうのは、やや不思議である。「白鵬が実績面で角界最大の功労者であることは、誰しもが認めているところですが、それが正当に評価されていないように見えるのは、1つに本人の土俵態度、そしてもう1つは国籍の問題が関係していると思います」と、前出の中澤氏が語る。

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お金が無ければ知恵を出せ! Jリーグ地方クラブ奮闘記

20170815 21
①『ガイナーレ鳥取』…現役時代より走っている? 岡野雅行GMの“野人流営業術”
「『GMをやってくれ』と言われた時は驚きましたよ。先ず、GMの意味がわからない。パソコンもできない。『葉巻でも吸って、ふんぞり返っていればいいのか?』と」――。J3で奮闘する『ガイナーレ鳥取』のGMを務める岡野雅行は苦笑する。日本代表をワールドカップに導いた“野人”は、GM職4年目を迎えた。選手時代を含めると、鳥取暮らしはもう9年目になる。GMというと、チーム編成に携わる仕事がメインと思われるが、岡野は違う。強化責任者というより営業マン。県内は勿論、日本全国を飛び回っている。例えば、鳥取の自宅を出て、1日で姫路・岡山・広島・米子と移動することも珍しくない。「母体の無い小さなクラブなので、営業も件数を熟すしかない。話好きで長くなる社長さんもおられるので、時間が無くなって焦ってダーッと次の約束に飛んでいくんですよ」。車の走行距離は月に3000㎞超。岡野は現役時代より走っている。岡野にGM就任を依頼した社長の塚野真樹によると、“野人効果”は抜群だという。「例えば、営業で県外に行くと、『ガイナーレとは…』という説明から入らなきゃいけない。それでも『で、何?』となる訳ですが、有名な岡野が来ると違う。説明不要。彼がチームや鳥取の良さを語ると、すんなり耳を傾けて頂けるんです」。感謝の気持ちを忘れず、誰とでも直ぐに打ち解けられる岡野には、鉄板の営業術がある。“ジェントル野人”大作戦だ。「今は後ろで結んでいますが、嘗ては髪を下ろしていました。そうやって野人のイメージを出した上で、『今日はお時間を作って頂きましてありがとうございます』と深く頭を下げる。そうすると、『野人なのに挨拶ができるんですね』と驚かれる方がいるんです。ちょっと狡いかもしれませんけど」。

塚野によると、酒席での岡野は素晴らしいの一言に尽きるという。目の前に一升瓶をドンと置かれて、「野人さん、今夜はとことん飲みますよ」と言われれば、どこまでもついていく。一滴も飲まない人には、ジョホールバルのエピソードで喜ばせる。カラオケだってお手のもの。十八番は『ザ・ブルーハーツ』。営業巡りの車中では、「今日会うのは60代の社長さんか。それなら誰の歌がいいだろう…?」と昔のCDをチェックする等、準備に余念がない。気配りができて、サービス精神旺盛なのだ。近頃、岡野には嬉しい変化があるという。「以前は“ジョホールバルの岡野”とか“レッズの岡野”として声をかけて頂いていたんですが、最近は『鳥取、応援しています』という風に、“ガイナーレの岡野”として声をかけられることが増えてきたんです」。ガイナーレというと、2014年に始めた“野人と漁師のツートッププロジェクト”で話題となった。これは、1口5000円で寄付を募り、その額に応じて地元の境港名産の海産物をお礼に送るというもの。寄付から経費を引いた額が、選手獲得資金に充てられる。これを元手に、2014年はフェルナンジーニョやハマゾッチを補強。2人の活躍もあって、J3で4位に食い込んだ。この“カニで選手を釣り上げる”プロジェクトによって、ガイナーレは既に5000万円以上を集めている。このプロジェクトは当初、地元でも期待されていなかった。「知名度のあるGMが旗を振って旨いカニを売り込めば、バンバン注文が入りますよ。在庫不足じゃ困るから、沢山用意してく下さい」。塚野が漁師に呼びかけたところ、「30ケースもあればいいでしょ」と笑われたという。ところが、蓋を開けてびっくり。1ヵ月で3000ケースも注文が来たのだ。塚野が説明する。「勝因は僕らが頑張ったことではなく、単純に地元にいいものがあるということです。地方に共通することだと思いますが、鳥取県民は『鳥取のものなんて…』とか『鳥取が頑張ったところで…』と自己評価が低いんですよ。で、東京で評価されて始めて地元の価値に気付いたり、自信を持ったりする。鳥取県出身の僕は、それが嫌。だから、その地方気質を逆手に取って、地元の人が普通のものだと思っているカニや魚を全国に売ったんです。『こんなもの大したもんじゃない』と思っていた海産物が都会で喜ばれて、漁師の皆さんは喜んでいましたよ」。つまり、こういうことだ。岡野と塚野は、ガイナーレを通じて鳥取を元気にして、誇りを持てる街にしようとしているのだ。少し前まで、鳥取ではこんなことが言われていたという。「岡野は東京から鳥取に通っているんだってな。そりゃそうだよ。鳥取みたいな田舎に、有名人が態々住む訳ないもんな」。そんなことはない。野人GMは鳥取に住み、今日も日本中を走り回って、自分の大好きな鳥取とガイナーレの魅力を訴え続けているのだ。

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