【Test drive impression】(26) 『アウディA5 スポーツバック2.0 TFSI クワトロスポーツ』――世界で最も優れたクルマ&美しいクルマに選出されたF-PACE

昨年、9年ぶりにフルモデルチェンジとなり、世界で話題の『アウディA5』。今年4月からは日本でも受注開始。A5はクーペ、カプリオレも用意されているが、人気且つ主力となっているのが、今回試乗したスポーツバックと呼ばれるモデルだ。では、スポーツバックとは一体、どんなモデルなのか? 特に真横からの写真を見ると、「クーペ的なフォルムを持った4ドア?」と思うだろう。しかし! 実はこのスポーツバック、リアはハッチ式となっており、つまりは5ドアハッチバックというボディー形状を持っている。で、これによってスポーツバックは実に“いいとこ取り”な1台に仕上がっているのだ。先ず、いいところは誰が見ても美しいサイドからのフォルムだ。4ドアなのにクーペ的なデザインは、実用性と美しさの融合と言ってもいいだろう。結果、スポーツバックはセダンのようにリアシートにもしっかりと大人を座らせることができる1台に仕上がっている。更に、リアにハッチバックを与えたことによって、スポーツバックは実用性にダメ押しをしている。言うなれば、これはワゴンとして使える感覚だ。実際、リアのハッチを開けると、とても大きな開口部を備えており、大抵の荷物ならば容易く呑み込んでしまうほどだ。河口は先代のA5スポーツバックで、後席を倒してロードバイクを積んだことがあるが、ロードバイクの前後輪を外すことなく呑み込んでくれた。

勿論、新型もそれが可能だ。そう、美しいフォルムながら、とても使える1台になっている。という訳でスポーツバックは、見た目はクーペ、乗員の為の空間はセダン、そして荷室はワゴンといった具合に、超使える、実にマルチな1台なのだ。で、今回試乗したモデルは『2.0 TFSI クワトロスポーツ』という、スポーツバックの中でも最もハイパフォーマンスなモデル。搭載エンジンは2リッターの直噴ターボで、最高出力は252馬力、最大トルクは37.7kgmを発生する。これを7速Sトロニックを介して、4輪に駆動を伝えるクワトロを採用。走り出すと、印象はやはり落ち着きのあるセダンのそれ。滑らかに路面を捉える乗り心地の良さと、速度が上がるにつれてフラットな感覚が増していく乗り味によって、スッキリとした走りの味わいを提供してくれる。エンジンは力も十分以上で、1610㎏の決して軽くはないボディーを余裕で加速させるだけのパワフルさもある。アクセルをそう多く踏み込まなくてもスルスルと加速していき、気が付けばハイペースで走っているという感覚だ。このモデルの走りは、それだけでは終わらない。アウディドライブセレクトというボタンを押すと、クルマがスポーティーな仕様へと変化するのだ。ハンドルに重みが増すと共に、ダイレクト感が加わり、サスペンションは硬さが増して、よりキビキビとした感じになるのに加えて、カーブでは踏ん張りを利かせるようになる。

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【Deep Insight】(25) それでも挑むデータ立国

昨日(30日)、改正個人情報保護法が全面施行された。企業等に安全な情報管理を求めつつ、個人の行動や状況に関するビッグデータの利用を促し、産業創出で国の活力を高める狙いがある。個人を特定できないよう手を加えれば、本人の同意を取らなくても情報を使える“匿名加工”という仕組みも取り入れた。日本も愈々、データ活用に本腰を入れる。そんな矢先の今月半ば、大規模なサイバー攻撃が世界を襲った。パソコンやサーバーのデータに暗号をかけて使用不能にし、解除の見返りに身代金を要求するランサムウエアが使われた。被害は150ヵ国・地域に及び、イギリスでは病院の機能が麻痺した。日本への影響は軽微だったが、デジタル社会の危うさを示した。サイバー攻撃の手法は日々巧妙化し、完全に防御するのは難しい。「2020年の東京オリンピックに向け、人と情報が集まる日本への攻撃が今後激しくなる」との見方は多い。ならば、データ活用にブレーキをかけるべきなのか? 結論から言えば、その選択肢は無い。攻撃への備えに努力しながら、寧ろデータ活用のアクセルを踏み込む時だ。それだけの価値はある。例えば医療だ。国民が病院や診療所で受けた医療の情報を網羅するデータベースを作る国家プロジェクトが動き出した。内閣官房は2年後に5000万人規模を目指し、企業や大学等は匿名加工された情報を買うことができる。データを使いこなすことで見込める利点は多い。効果の高い治療法や薬、異なる病気同士の意外な相関等がわかる可能性がある。診断を支援する人工知能(AI)の学習にも役立つ筈だ。新しいヘルスケア産業を編み出せれば、国民の健康寿命が延び、社会保障費の膨張に歯止めをかけられるかもしれない。企業人・研究者・医師等にとって、相当やり甲斐のある仕事ではないか。データは“21世紀の石油”と呼ばれ、経済を動かす燃料になる。とりわけ、個人に纏わるデータは巨大な力を秘める。それをわかり易い形で実証したのは、ライドシェア(相乗り)サービスの『ウーバーテクノロジーズ』だろう。人の居場所という情報を用いて、乗客とドライバーをリアルタイムに繋ぐ。新たな交通手段として各国に伝わり、自動車産業やタクシー業界を揺さぶる。企業価値は凡そ7兆5000億円。『ホンダ』の株式時価総額を3割以上上回る。1月には、サービスを通じて集めた個々人の移動データを匿名化して公開し、地方政府等が都市の交通インフラ整備に役立てられるようにした。中東のドバイ等と組み、“空飛ぶタクシー”の実用化にも乗り出した。データ経済の豊かな潜在力を示した同社の功績は大きい。

改正個人情報保護法の施行は、日本にとって一歩前進ではある。だが、ウーバーの例が示すように、肝心なのはデータを駆使して世の中を変えようとする起業家精神だ。日本にもその芽は育ちつつある。AIベンチャーの『ABEJA』(東京都港区)は、来店客の顔画像をカメラで撮って解析し、性別や年齢を推定したり、店内での動きを把握したりできる技術を手掛けている。来店客の属性や行動のデータから、合理的な品揃えや店員の配置を割り出す。勘や経験では得られない知見を求め、既に百貨店等300店以上が導入した。国内のサービス産業は予て、生産性の低さが指摘され、人手不足の逆風も吹く。「技術でできることは多い」。データによる業務革新を訴える岡田陽介CEOは、アメリカの半導体大手『エヌビディア』からも出資を受けた。2013年設立の『スマートドライブ』(東京都品川区)は、人がいつ、どこを、どう運転したかというデータを車から集め、様々なサービスに応用する会社だ。企業の車両を管理する他、安全運転すると安くなる自動車保険、高齢ドライバーの見守り等も思い描く。両社は、社会課題の解決にデータを生かす“攻め”だけでなく、“守り”も怠らない。ABEJAは、撮影した顔画像を直ぐ破棄し、個人情報を残さない。スマートドライブは情報セキュリティーの国際認証を取得し、北川烈CEOは「個人情報・データを無闇には集めない」と言う。4年前、『JR東日本』がIC乗車券のデータを『日立製作所』に提供した時は、説明不足が乗客の不安を招き、批判を浴びた。プライバシーや個人の気持ちに鈍感では、データ経済の担い手として失格だ。データ立国に挑むべきなのは、産業創出だけが理由ではない。インターネットが一般化したこの20年余り、世界はアメリカ発のITに大きく依存してきた。データ分析力でもアメリカ勢は突出する。「データ活用の為の日本の技術基盤が心配だ」。『ヤフー』の別所直哉執行役員は危機感を隠さない。『ヨーロッパ連合(EU)』のヨーロッパ委員会は今月18日、『Facebook』が対話アプリ大手『ワッツアップ』の買収時に示した情報が不正確だったとして、約140億円の罰金を科した。大量の個人情報を握り、広告事業等で影響力を強めるアメリカ企業への警戒が背景にある。あらゆるモノがインターネットに繋がるIoT時代に入り、アメリカ勢はAI家電やウェアラブル機器を通じ、私たちの身の回りのデータも集め出した。国民の思考や健康状態までわかるとなれば、安全保障にも関わる問題だ。ハードルは高いが、日本もデータを扱う技量の底上げを諦める訳にはいかない。 (本社コメンテーター 村山恵一)


⦿日本経済新聞 2017年5月31日付掲載⦿

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【有機EL&半導体バブル】(01) スマホ画面の主役が交代…投資ブームに火が点いた

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「有機EL投資ブームに火が点いた。工程上、有機ELは液晶よりパネル製造装置を数倍多く使う。装置メーカーは関連投資で恩恵を受け、活況だ」――。『野村証券』マネージングディレクターの和田木哲哉氏は、こう指摘する。『ローツェ』(※証券番号6323)・『アルバック』(※同6728)・『ブイテクノロジー』(※同7717)といったディスプレイパネル製造装置株が、今年に入って相次いで上場来高値を更新した(※株式分割を考慮したベース)。株高を支えるのは、相次ぐ装置受注や好調な業績だ。各社は、受注案件の納入先や装置の種類等詳細を開示していないが、市場では「有機ELパネルメーカーからの旺盛な受注」というのが一致した見方だ。有機ELパネルメーカーは昨年来、巨額の設備投資に動いている。特に、量産体制を確立している韓国2強は驚異的な額を注ぎ込む。『サムスンディスプレイ』の今年の有機EL投資は、10兆ウォン(約1兆円)に上ると囁かれる。『LGディスプレイ』も、坡州工場での有機ELライン増設に約2兆ウォン(約2000億円)を投じることを発表する等、こちらも総額10兆ウォンの設備投資が囁かれる。新産業育成を国策とする中国でも、パネル工場新設が相次ぐ。有機ELの活況を演出しているのは、『Apple』のスマートフォン『iPhone』だ。今秋発売の新型iPhoneの内、高級モデルへの採用が決まっている。今年4月、「サムスンディスプレイに7000万枚を注文した」というニュースが世界を駆け巡った。『みずほ銀行産業調査部』の調べでは、今年の有機ELディスプレイ出荷見込み額は、前年比26%増の210億7500万ドル(約2兆3400億円)に達する。その87%を占めるのはスマートフォン向けだ。

『サムスン電子』や『オッポ』(中国)等、有機ELを採用したスマホは既に存在する。しかし、Appleが採用すれば、一気に他機種へ波及する。調査会社『IHSグローバル』上席アナリストの早瀬宏氏は、「今年はスマホデイスプレイの主役交代期。ハイエンド(※高級品)機種で、液晶から有機ELへの転換が加速する」と指摘する。現在、スマホ用有機ELパネルを量産できるのは、サムスンディスプレイとLGディスプレイのみだ。この内、サムスンディスプレイは世界で逸早く量産に成功した先駆者で、グループ内のサムスン電子のスマートフォンにもパネルを供給してきた。サムスンディスプレイが新型iPhoneに独占供給できるのは、LGの量産技術が、発売時期である今秋までに間に合わなかったた為とみられる。但し、Appleにすれば部品は複数社から調達するのが基本路線だ。更に、スマホ端末でライバル関係にあるサムスンディスプレイのみにパネル生産を委託したくないのが本音だろう。そこで来年以降は、量産技術が確立しつつあるLGディスプレイにも発注するとみられる。両社は巨額投資によって、Appleと追随する他スマホメーカーの需要に応える。こうしたスマホ需要急増を見越して、『ジャパンディスプレイ(JDI)』・『BOE』(中国)・『天馬微電子』(同)・『AUO』(台湾)等も研究・開発には着手しているが、量産には至っていない。『みずほ銀行』産業調査部の益子博行調査役は、「有機ELは標準的な量産方法が確立していない。試行錯誤と努力で量産ラインを築いた韓国2強は、秘伝とも言える量産方法を門外不出としている。他社が巨額投資しても、安易に追い付けるものではない」と指摘する。技術が汎用品化した液晶の場合、製造装置を設置すれば、ラインである程度の品質の完成品ができる。装置の鍵を捻れば直ぐに商用に量産できる“フルターンキー”状態だ。これに対して、有機ELは材料同士の相性、材料と装置の相性があり、組み合わせや温湿度な等をラインに乗せて調整しなければならない。新規参入組は、謂わば手焼き煎餅を焼いている状態で、今後、如何に煎餅の品質を揃えて大量生産できるかがカギになる。この点が、10年以上前から『ソニー』・『パナソニック』・『JDI』が取り組んでも達成できなかったことだ。一方でサムスンディスプレイは、装置メーカーの『キヤノントッキ』と組んでこつこつと量産体制を築き、2007年から量産を開始した。JDI、中国勢、台湾勢は、韓国の世界2強に追いつこうと猛烈に研究・開発を進めている。

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【Global Economy】(42) アメリカ経済占う3つの謎…景気後退、長期金利は“警告”する

アメリカの景気拡大はいつまで続くのだろうか? 上がらない長期金利・伸び悩む物価・読めないトランプ――。アメリカ経済を占うには、3つの“謎”の行方を見ておく必要がある。 (本紙経済部長 天野真志)

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アメリカの『連邦準備制度理事会(FRB)』が、政策金利の引き上げに踏み切った。景気過熱を防ぐ狙いがあり、ジャネット・イエレン議長は「アメリカ経済は好調で底堅い」と成長持続に自信を示した。だが市場からは、こんな囁きも聞かれる。「コナンドラム(conundrum=謎)の再来に要注意だ」。FRBは2015年末以降、4回の利上げをした。ただ、政策金利に連動して上がる筈の長期金利は上向かず、2%台前半の低水準で推移する(※グラフ①)。過去には、2004年から2006年にかけて計17回の利上げをしたが、長期金利は上昇しなかったことがある。当時のアラン・グリーンスパン議長が“コナンドラム”と呼び、有名になった現象だ。この時は、「経済が好調なアメリカに新興国から資金が流れ込み、アメリカ国債が大量に買われ、金利が低く抑えられた」との謎解きがされた。低金利が住宅バブルを生み、2008年以降の金融危機に繋がったとして、グリーンスパン氏は退任後、厳しい批判に曝された。では、現在の“上がらない長期金利”は何故起きたのか? 海外からの資金流入は今も見られる現象だが、それよりも「経済の先行き懸念が影響している」との見方が市場では有力だ。将来への不安が、家計や企業の資金需要を減退させ、“経済の体温計”とされる長期金利の上昇を阻んでいるというのだ。アメリカの景気拡大期は8年に及ぶ。第2次世界大戦後では、既に3番目に長い拡大期となっている。「息切れは近い」――。そんな不安が消費や投資の意欲を削ぎ、金利を抑える。兆候はもう表れている。先月の新車販売台数は、5ヵ月連続の前年割れだった。小売り売上高は1年4ヵ月ぶりの大きな落ち込みとなった。住宅着工件数も3ヵ月連続で減少している。

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この背景には、アメリカの家計の借金が膨らんだことが窺える。今年3月末に、家計の債務残高は12.7兆ドル(約1410兆円)と、リーマンショック直後の2008年9月末に記録した過去最高額を上回った(※グラフ②)。個人消費は、アメリカの国内総生産(GDP)の約7割を占める。不安は深刻だ。「このまま利上げを続けていくと、短期金利が長期金利より高くなる逆転現象が起きる」との指摘もある。お金を長く貸せば、一般的に貸し倒れの危険が高まる。この為、金利は通常、短期より長期のほうが高い。問題は、“長短逆転”が起きると、1~2年後に景気が後退する歴史をアメリカが繰り返していることだ(※グラフ③)。最近も、2000年と2006年に金利が逆転した後、何れも景気が悪化している。金融機関は、低い短期金利で調達したお金を高い長期金利で貸し、利鞘を稼ぐ。「長短逆転で金融機関が利鞘を得られないと、お金の流れが滞り、軈て景気が冷える」と考えられる。最近の市場では、寧ろ低金利を好感して株高が続くが、“上がらない長期金利”の謎が、アメリカ経済の今後への警告を秘めている点に留意せねばならない。2つ目の謎は、雇用が改善しているのに物価は伸び悩んでいる現象だ。アメリカの失業率は、16年ぶりの低水準の4.3%に下がった。だが、最新の個人消費支出物価指数は、前年同月比1.7%の上昇に留まる。FRBは2%の物価上昇を目指すが、2月に約5年ぶりに2%台をつけた後は1%台のままだ(※グラフ④)。普通は、失業率が下がると、働き手を確保したい企業が賃上げに動き、消費が活発になって物価が上がる。ところが、平均時給の伸びは、良好な数値の目安とされる“3%”を約8年間も割り込んだままだ。謎の理由に未だ定説はないが、「低成長の長期化で経営者心理が冷え、業績が改善しても賃上げに踏み出し難い」との見方がある。「雇用が増える年齢や職種は、比較的賃金の安い若年層やサービス産業が多く、賃上げ規模が小さくなる傾向がある」との指摘もある。失業率の低下を理由に、賃金が上がらないまま利上げを続けると、景気を冷やし過ぎかねない。FRBには、より慎重な“市場との対話”が求められる。

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【労基署ショックが日本を襲う】第2部(01) 身構える人事部、攻め入る労基署

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労基署による容赦ない仕打ちに、企業の人事部に激震が走った。『パナソニック』・『三菱電機』・『森永乳業』・『大京穴吹建設』…。今年5月10日、厚生労働省は、労働基準法等の違反で書類送検された、所謂“ブラック企業”の実名リストを初公開した。手始めに、今回は334社を公表。向こう1年はリストから社名が消えることはない。同月末・6月中旬にも新たにブラック企業が追加される予定。今後、毎月50~60社のペースで企業リストが随時更新されていく見込みだ。“罪状”には2つのパターンがある。1つ目は、労働基準監督官が再三に亘って指導・勧告したにも拘わらず、聞く耳を持たなかった悪質なパターン。2つ目は、突発的な事故が発生した場合等、労働安全衛生法の観点から送検されたパターンである。元々、監督官は強制的に会社に立ち入り調査をしたり、違法が判明すれば被疑者を逮捕・送検したりできる等、強大な権限を持つ司法警察官である。

その上、『電通』事件等で過重労働が社会問題化するようになると、益々労基署や監督官の存在感が強まった印象がある。ブラック企業リストを公表できたのも、その強い権限があるからだ。厚生労働省の塩崎恭久大臣が、過労死ゼロ対策の一環として、鶴の一声で企業名公表に踏み切った。労基署が悪徳企業の取り締まりに攻勢をかける一方で、企業側のカウンターパートである人事部は防戦一辺倒である。というのも、企業の人事担当者は現在、深刻な“四重苦”に見舞われているからだ。3月末、政府の『働き方改革実行計画』が策定された。改革の2大テーマは、“同一労働同一賃金の強制導入”と“残業禁止の大号令”。前者には社員から訴訟を起こされるリスクが、後者には違反すればブラック企業に転落するリスクがある。更に、日本的な雇用慣行の崩壊、深刻な人手不足が追い打ちをかける。企業が一度、ブラック企業へ転落すると、そこから這い上がるのは至難の業だ。人手不足の深刻さは極まるばかりで、ブラック企業のレッテルを貼られた企業で働きたいと思う人など皆無だからだ。今後、人材力が企業の競争力を分けるようになることだけは間違いない。優秀な人材を獲得し続ける為に――。企業による人事改革は、待ったなしの情勢だ。


キャプチャ  2017年5月27日号掲載

テーマ : 働き方
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【儲かる農業2017】(14) 1000万円も夢ではない! 農業人材の意外な年収事情

「農業をやりたいのなら、数百万円の年収ダウンは覚悟せよ」――。これが業界の通説だった。だが、昨今は農業の守備範囲が多様化している。実は、意外な高収入職種も生まれているのだ。

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一口に農業のお仕事と言っても、その職種の範囲は広い。大規模農園を経営する農業生産法人を例に取れば、マネジメント層、農場長や農場スタッフ等の生産部門、大口販路の維持や新規開拓を担う営業部門、経理等バックオフィスの職種だってある。農業に特化した人材サービスを展開している『ライフラボ』の西田裕紀社長は、「一定以上の経営規模を持つ農業生産法人は全て、従業員をもっと増やすことさえできれば規模拡大できるチャンスのステージだと判断している」と言う。近年、大規模農家は農産物の“生産”のみならず、“加工”まで手掛けることで販路拡大を仕掛けている。その為、食品メーカーや大手卸に対して、農産物やその加工品の魅力をしっかり訴求できる営業職人材のニーズが高まっている。農業界が慢性的な人手不足状態にあり、「兎に角、単純労働力が欲しい」という農家の要望は相変わらず強い。だが今は、ルーティンワークを熟すローテク人材のみならず、豊かなビジネス経験を持つ人材の求人数が増加しているのだ。ここでは、中堅のビジネスマンに対象を絞った農業人材の求人案件(※ライフラボ提供)を幾つか紹介してみたい。

「農業関連の仕事に興味はあるけれど、かといって年収が大幅ダウンするのはご免だ」という人にぴったりの職種だ。最近、俄かに増え始めているのが、植物工場を経営する企業のマネジメントや工場の運営管理をする職種だ。今年2月4日現在では、年収の最高金額は700万円だが、経験次第では更なる高待遇を望めそうだ。しかも、農業関連業界での経験はいらない。「特に、電機メーカー等製造業の生産ラインで、品質管理や生産管理の職に就いていた人の引き合いが多い」(西田社長)という。食と農業専門のコンサルティングを行う職種には、最高で年収1000万円の条件が提示されている。具体的には、異業種企業による農業事業の立ち上げや、食品関連企業の原材料調達等の業務を、顧客企業の代行で行う仕事だ。ハードルは高いが、海外の市場視察を伴うことが予想され、ビジネス英語を操れる人ならば更に高収入が期待できそうだ。農業生産法人でも、農産物の輸出や東南アジア等海外農場の運営を検討する組織が増えており、語学力のスキルは年収アップのアピールポイントになりつつある。そして、農業現場でのIT活用が進むにつれてニーズが高まっているのが、システムエンジニア等のIT人材である。勿論、農業の仕事に就く上での充実度は、年収条件だけで測れるものではない。だが、今ある生活を捨てて“就農”を検討する人にとっては、先立つ物があったほうが良いのも事実。農業の人材市場でも、スキルや経験のある人材が正当に評価されるようになっており、ある意味、農業が“フツーの産業化”している証しであるとも言えそうだ。


キャプチャ  2017年2月18日号掲載

テーマ : 経済・社会
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【ここがヘンだよ日本の薬局】(07) 待ち時間が長過ぎる調剤薬局…薬剤師が語るその理由とは?

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調剤薬局によっては、あまりにも待ち時間が長い店舗がある。散々待たされた挙げ句、薬の説明を長々とされると、文句の1つでも言いたくなってしまう。しかし、東京都内の調剤薬局に勤務する30代の薬剤師は、「待ち時間が長い薬局をお勧めします」と語る。「薬をお出しするのに時間がかかるのは、きちんとした理由があります。先ずは、患者さんの薬歴を確認します。その後、医師が処方した薬の内容を確認するのですが、患者さんの症状に合っているか否か、厳重にチェックするのです」。薬剤師は、処方内容に疑問を持った場合、医師に確認の連絡を取る。医師が処方したままの薬を出す薬剤師が大半を占めているが、優秀な薬剤師はきちんと連絡を入れるという。

「それに、処方されていない薬を間違えて出してしまった場合、重大な薬害を起こしてしまう可能性があります。私が勤めている薬局では、必ず2人以上の薬剤師がお出しする薬を確認するようにしています。寧ろ、薬剤師が1人しかいない薬局は、患者さんも怖くて行くことができないのではないでしょうか?」。なるほど、待ち時間が長いのは患者の為でもあるのだ。若しも間違った薬を出してしまった場合、調剤薬局の責任問題にもなりかねない。「医師が出す処方箋は、偶に患者さんに合っていないものがあります。処方された薬を飲んだり塗ったりすることで、症状が悪化してしまうケースもあるのです。そんな時、医師によっては逆ギレしてきますよ。『何できちんと確認の電話をしてこないんだ!』って(苦笑)。したらしたで、『一々電話するな!』と怒られるんですけどね」。薬の説明時間が長いのも、誤飲等を防止する目的がある。何度も処方されている薬の説明は億劫なものだが、自分の健康の為にも、きちんと聞いておいて損はない。調剤薬局が乱立する場所では、薬を出すまでの早さを売りにしている店舗もある。そんな薬局には注意が必要なようだ。 (取材・文/本誌編集部)


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【東京五輪後の地方経済を読み解く】(05) 出生率20%超のV字回復ビジョン、コンサルタントに丸投げの総合戦略

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安倍内閣が最重要課題の1つに掲げる“地方創生”の実現に向け、全国47の都道府県と殆どの市区町村が、地方版の人口ビジョンと総合戦略を2015年度中に纏めた。地方が目標人口を定め、達成に向けた事業を計画するのは本来意義がある筈だが、中身を見ると寒い実態が浮かび上がってくる。「人口減少に対する県の認識がずれており、捉え方が甘い」。2015年9月の岡山県議会一般質問で、自民党の青野高陽議員が声を張り上げた。青野氏が追及したのは、岡山県が纏めた人口ビジョン案の将来目標人口だ。人口ビジョン案は、「2010年国勢調査で195万人いた県人口が、2060年に155万人となり、その後、長期的に110万人前後で推移する」と予測している。『国立社会保障・人口問題研究所の推計』は、2040年で161万人。民間の『日本創成会議』が試算したデータでも、「新見市や真庭市等、県内14市町村が2040年に消滅の可能性がある」と指摘されている。人口ビジョンの予測が希望的観測過ぎるという訳だ。これに対して伊原木隆太知事は、「出生率の向上を図る等、人口減少に歯止めをかけることを前提にシミュレーションしたもので、決して実現可能な数字ではない」と答弁したが、他の会派に所属する県議からも「見通しが甘い」との声が上がった。人口ビジョンを纏めた岡山県政策推進課に改めて問い合わせても、「これだけ厳しい数字を達成しなければ、人口減少を食い止められない」という苦しい回答が返ってきた。人口ビジョンの予測に疑問の声が上がったのは、岡山県だけではない。静岡県議会では、2015年7月の常任委員会で、人口ビジョン案の合計特殊出生率(※1人の女性が一生に産む子供の平均数)設定に疑問の声が相次いだ。

静岡県は2014年で1.50なのに、2020年時点で2.07に設定されていたからだ。総務委員会では、『ふじのくに県民クラブ』の中沢通訓議員が「かなり大変な数字。絵に描いた餅になってしまう」と批判した。企画くらし環境委員会でも、『自民改革会議』の和田篤夫議員が「希望的観測ではないのか?」と追及している。新潟県湯沢町では、2015年8月の第2回総合戦略推進会議で、委員の林敏幸氏(同町商工会会長)が「合計特殊出生率が甘過ぎる。この数字の達成は絶対に無理ではないか?」と注文を付けた。湯沢町も、「2040年に2.07に合計特殊出生率が上昇する」としている。林委員の指摘に対し、湯沢町企画政策課は「非常に厳しい数値であることは承知している」としながらも、見直しをしなかった。内閣府の少子化社会対策白書によると、国内の年間出生数は、終戦直後の第1次ベビーブームで約270万人、1970年代前半の第2次ベビーブームで約210万人を記録したが、1975年に200万人を割り込んだ後は減少の一途を辿っている。2015年は約101万人まで減り、早ければ2~3年のうちに100万人を割り込むとみられている。合計特殊出生率は、第1次ベビーブームで4.3を超えていたが、1950年代以降に急激に低下した。1975年に2.0を下回り、2005年に過去最低の1.26を記録している。2014年は1.42と少し持ち直しているものの、欧米諸国と比べると未だ低い水準だ。静岡県や湯沢町が示した2.07は、現在の人口を維持できる数字で、日本でいえば高度経済成長期の水準に当たる。果たして、この数字の達成は可能なのだろうか? 全国47都道府県の人口ビジョンを見ると、人口見通しを数値で示していない東京都を除き、沖縄県が2050年、その他の道府県が2060年の目標人口を公表している。内、人口増加を予測したのは、16.3%伸びるとした沖縄県だけ。人口減少率10%未満は6県で、内訳は首都圏の埼玉・千葉・神奈川3県と、新潟・愛知・滋賀の3県。新潟県は全て三大都市国に入る。減少率10~20%は10府県あり、この中には関西の京都・大阪・兵庫3府県や福岡県が含まれる。予測人口で最も減少率が高かったのは、秋田県の43.7%。40%以上の減少率を示したのは秋田県だけで、青森・岩手・山形・島根・山口・鹿児島の6県が30~40%の減少率としている。この内、徳島県は2010年の人口79万人が、最大値で推移したケースだと、2060年に66万人になると予測した。何も対策を取らなかった場合の42万人に比べ、24万人も多い計算になる。減少率は16.4%。四国では飛び抜けて低く、政令指定都市を持つ静岡県や広島県並みの数字だ。四国は、全国で最も人口減少が深刻な地域の1つに数えられる。それなのに、こうした数字が出たのにはちょっとしたカラクリがある。徳島県は、合計特殊出生率を2025年から1.80、2030年から2.07とした上、「2020年で転入者と転出者が均衡し、2025年から年1500人、2030年から3000人の転入者増になる」と設定している。以前から出生率向上の目標を定めており、それに合わせた結果、高い目標人口になったという。徳島県地方創生推進課は、「県の計画で違う目標値を設定することはできない」と理由を説明する。

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【徹底解剖!東京都庁】(05) 育児・ショッピング・金融商品…都庁職員の隠された福利厚生ライフ

恵まれているのは給与だけではない。日本における公務員の絶大なステータスを証明する数々の福利厚生。一般財団法人に名を変えた互助組合の知られざる活動実態とは――。 (取材・文/本誌編集部)

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西武新宿駅近くの一等地に、『東京都健康プラザ ハイジア』なるビルがある。この建物は東京都の信託物件で、地上18階・地下4階の複合ビルだが、内部の62%には東京都の関連団体が入居しており、都や、都から補助金等を得ている団体の家賃が事業を支えている。嘗て、都議会では何度か、このハイジアを巡る家賃還流が問題になったこともある。そのビルの12階に、『一般財団法人 東京都人材支援事業団』なる組織が入居している。実はこの財団法人、3年ほど前までは『東京都福利厚生事業団』という名前だった。公益法人制度改革関連三法が施行されたことに伴い、一般財団法人へ移行した訳だが、要は東京都職員の福利厚生を司る互助組合なのである。現在の理事長は前副知事の秋山俊行氏で、この事業団が副知事クラスの天下り先になっていることが、“おいしいポスト”であることを雄弁に物語っている。旧名の東京都福利厚生事業は過去、度々メディアに批判されてきた組織だった。同事業団が発行する『いぶき』という機関誌において、都職員だけが恩恵を受けられる、商品購入の際の様々な“特別割引”の存在が批判の対象だった。「こうした福利厚生という名の割引制度は、大企業であれば色々あるものですが、この事業団が職員の月々の掛け金や事業収入だけではなく、都からの補助金、つまり税金で運営されていることが問題とされました。今も制度は温存されていますが、職員に割り当てられたパスワードがないとログインできない専用サイトが作られていて、外部からの批判を躱す仕組みになっている」(都政担当記者)。

都庁職員になると、テレビやエアコンといった家電製品から、スーツ・眼鏡・寝具・引っ越しや旅行に至るまで、あらゆるサービスを10~50%引きで購入・利用することができ、更に住宅ローンの低金利プラン等、長い目で見ればかなりの得となりそうな金融商品も盛り沢山である。都の職員になれば、給与とは別に、こうした恩恵を受けることができる。これは、23区の公務員向けや警視庁向けといったバージョンも存在していて、謂わば公務員全体の“役得”とも言えるものである。以前は、その名もズバリ『福利厚生事業団』だったが、今は何故か『人材支援事業団』と名前も変わり、事業内容が実態とずれてわかり難くなっている。寧ろ、“都職員・OB支援事業団”としたらぴったりだと思うのだが…。扨て、福利厚生事業団改め人材支援事業団は、一般財団法人に移行後の2014年に東京監査事務局の“監査”を受けている。これは、地方自治法に基づき、都が出資等を行っている団体が適切に運営されているかをチェックするものだが、身内が身内をチェックする訳で、“問題あり”とならないのは当然である。しかし、その中身をよく見ると、如何に都庁職員やOBが税金を原資とした“恩恵”を受けているかがよくわかるのである。左下表の通り、3年前のデータではあるが、1万円の結婚祝金が3022件、子供が小学校に進学すると1万円、これが3168件。これくらいはいいかと思うが、15年勤務すると2万円分、25年勤務すると3万円分の旅行券支給が5296件あるのはどうか? たとえ少額であっても、あまりこういうことに税金は使ってほしくない。また、“ワーク・ライフ支援事業”という項目の“ライフサービス”利用者が44万5307人、宿泊サービス8万2028泊とある。これは役所特有の言い替えで、要は都庁職員向けにありとあらゆる“割引サービス”を受けた人数のこと。具体的な内訳は明らかにされていないものの、子育て・介護・スキルアップ・健康・レジャーといった分野で、様々な施設を割引価格で利用できる、その延べ人数が44万人ということだ。都内では待機児童の問題が深刻化しているが、都の職員は育児支援も恵まれている。サービスが多岐に亘る為、詳細は省くが、都の職員は育児施設等の利用割引や育児関連講座の受講、更にホームヘルプサービス、別居家族見守りサービス等の利用割引が受けられる。女性職員にとっては働き易くなり、基本的にはいいことではあるのだが、これも民間とのバランスを見てしまうと、「税金を使って都職員の育児環境を優先させるのか?」というやっかみも出ておかしくない。そしてショッピングあっせん事業である。年間60万件近い利用があるが、都の職員が16万人とすると、利用する人はかなり活用している印象だ。事業団あっせんというのは、謂わば目玉商品のことだが、これらを目敏く利用しているのは都職員でもごく一部の人と思われ、この斡旋がどこまで広く“都民全体の福祉”に寄与しているのか、かなり疑問である。職員食堂については、都庁内の食堂は一部、一般にも開放されているが、立地的に考えれば利用者の多くは都庁職員で、“格安で美味い”食堂を毎日のように利用できるメリットはかなり大きい。

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【中外時評】 中国ネット統制、波紋広がる

「インターネットの安全を保障し、インターネット空間の主権・国家の安全・社会の公共利益を擁護し、公民や法人、その他の組織の合法的な利益を守り、社会と社会の情報化が健全に発展するのを促す」――。中国で今月1日に施行された『インターネット安全法』は、こんな文章で始まる。個人の権利や経済・社会秩序、そして国家の安全保障まで、幅広い課題に対する法律であることが伝わってくる。ユニークなのは、“インターネット空間の主権”を守ると明記した点だ。国内法で敢えて“主権”を主張したのは、サイバーセキュリティーの問題を国際的な視点から捉えていることの表れだろう。実際、中国のインターネット統制の波紋は世界的な広がりを見せている。同法については、中国に進出した外資が早くから懸念の声を上げてきた。例えば、「“大切な情報インフラの運営者”は個人情報や重要なデータを中国国内に保存しなくてはならず、海外に持ち出すには関係当局の定めに従わなくてはならない」との条項だ。「ビッグデータの持ち出しが禁じられるのでは?」。こんな声が聞こえてくる。実際にどんな影響が出るか、現時点では未知数と言える。“大切な情報インフラの運営者”が何を指すのか、はっきりしないからだ。そうした不透明感こそが、外資の不安を増幅している印象もある。国際的な人権団体等からは、「情報統制が一段と強まるのでは?」といった声が出ている。中国では最近、政権に批判的な発言で知られる北京大学の賀衛方教授が、自分の公式アカウントを閉鎖されたことへの抗議として、ソーシャルメディアでの“断筆”を宣言し、話題になった。習近平国家主席率いる共産党政権は、異論を封殺しようとする姿勢を益々強めている。インターネット安全法の施行は、賀教授への圧迫のような活動に対する法的根拠を改めて用意したことになろう。

波紋が及ぶのは中国の内側に限られない。アメリカで生まれ広がってきたサイバー空間のありようそのものが、影響を免れない。情報が国境をも軽々と飛び越えて自由に流通できる世界的なインフラとしてのインターネットに、共産党政権は早くから警戒感を抱いてきた。1998年には、公安省が『金盾工程』というプロジェクトに乗り出した。これは、国民の海外サイト閲覧を制限する『グレートファイアウォール(防火長城)』を含むインターネット統制の事業で、2006年に第1期の完了を宣言した。“自由”を核心とするインターネットを、中国は“統制”しつつ利用する道を選んだ訳である。今年初めに防火長城の迂回が困難になる等、インターネット統制は“進化”している。そこに改めて明確な法的根拠を用意したのがインターネット安全法であり、同時に金盾工程等の成果が同法の実効性を高めているとも言える。中国の取り組みは一部の国々、とりわけ独裁的な国々の指導者にとって魅力的なようだ。ジャーナリストの国際的な非政府組織(NGO)『国境なき記者団』は、10年以上も前から、中国の技術がキューバ等に提供されている可能性を指摘してきた。法体系の整備も、今後は協力のテーマになるのかもしれない。日本等民主主義の国々にとって、体制の維持を最優先する中国流は論外ではある。ただ、参考にすべきことが無い訳ではない。例えば、インターネット安全法は、エネルギーや金融といった重要インフラを担う企業に厳しい安全管理を義務付けている。インターネットの安全に関する宣伝・教育の重視を明確に打ち出している。サイバー空間の自由な情報の流通は、民主主義にとっても脅威となり得る。アメリカ大統領選を揺さぶったフェイクニュース、インターネットを利用したテロ組織の宣伝活動、個人攻撃やヘイトスピーチの拡散等を思い浮かべればいい。その対策は、中国のような独裁国家であれば寧ろ簡単と言える。情報の自由な流通を妨げず、それに伴う弊害を抑え込むにはどうしたらいいか? 民主主義世界は、共産党政権よりも真剣に取り組む必要がある筈だ。 (上級論説委員 飯野克彦)


⦿日本経済新聞 2017年6月22日付掲載⦿

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