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【宇垣美里の漫画党宣言!】(96) 好きなものにのめり込むことの尊さ

何度も何度も繰り返し読んだ聖典のような一冊、尻込みする度に脳内でリフレインさせて己を奮い立たせたあのキャラのセリフ、その世界で繰り広げられているあれやこれやがあまりに好き過ぎて言葉にすらできず、思わず本を抱きしめジタバタしてしまったこと。『これ描いて死ね』を読んでいると、人生に何度となくあった漫画に心揺さぶられた瞬間を思い出す。全てはフィクション、でもそこから受け取ったものは絶対に嘘なんかじゃない。漫画を愛し、漫画に救われ、今日まで生き延びてきた全ての者どもよ、これ読んで死ね(死んじゃだめ)。東京から120㎞南にある伊豆王島に住む高校1年生の安海相(※ヤスミアイ)は、漫画が大好き。幼い頃は漫画だけが友達だった彼女には、今でも“ポコ太”というたぬき型ロボットのイマジナリーフレンドがいる。そんなポコ太を生み出した憧れの漫画家、☆野0(※ホシノレイ)が同人誌即売会のコミティアで10年ぶりに新作を頒布すると知り、安海はいてもたってもいられず海を越え、東京へ向かうことに。そこで「漫画って自分で描けるのか!」と気付いた彼女は、運命的に出会った漫画家経験のある手島先生の助けも得て、作画担当の藤森心や編集者的立ち位置で漫画をジャッジする赤福幸ら友人たちと共に、漫画同好会を設立する。ポップで可愛らしい絵柄と、テンポよいコメディータッチの展開で侮ることなかれ、この作品の全てのページから漫画へのリスペクトと愛が迸り、命を燃やす程に好きなものにのめり込むことの尊さが詰め込まれている。一人ひとりが主役級の強烈な個性を持つ登場人物達は、表情を一目見るだけで喜怒哀楽がしっかり伝わってくる。

だからこそ、ぎゅんとダイレクトに心を掴まれた。急な見開き、突然のカラーといった遊び心のある画面構成や、思わず拡大して見てしまった程細かい文字で羅列してある安海のアイデアメモ。ライバルの石龍光や心の描く漫画内漫画等は作者の妻であるトミイマサコさんが担当しており、そのタッチの違いにぐっときた。カバー下のおまけ漫画では登場人物が好きな漫画を紹介していたりと、隅から隅までサービス精神もりもりで、作者の漫画という表現への信頼が透けて見えた。高校生達の青い初期衝動が眩しい一方、巻末に掲載されている手島先生の過去エピソード“ロストワールド”では、作り手の苦悩や葛藤、狂気が外連味たっぷりに描かれている。創作の苦しみのあまり、心を覆い尽くす殺意にも似た感情に覚えがあり過ぎて、「本気で仕事をしていたら共通に抱える衝動なのかな」と何故だかホッとした。手島先生が同好会を始める時の約束として挙げた「“これ描いて死ね”などと漫画に命を懸けないこと」という言葉には、創作に向き合い続け摩耗してしまった過去を持つ彼女だからこそ出せる重みがある。果たして、安海達は手島先生の来た道を歩んでしまうのか。いや、きっと彼女達には先生と友達、皆がいるから、また違う道を歩めるような気もしている。寧ろ手島先生も安海達に感化されてまた描き始めてくれないかな、と期待せずにはいられない。初心者の同好会メンバーと共にゼロから漫画の描き方を学ぶことができる漫画ハウトゥー要素もあり、読んでいると描きたくなること間違いなし。きっと、創作を志したことのある人は、また刺さる角度が違うのだろう。それが知りたくて漫画を描いてみたいと心が少し疼いている。


宇垣美里(うがき・みさと) フリーアナウンサー。1991年、兵庫県生まれ。同志社大学政策学部卒業後、『TBS』に入社。『スーパーサッカーJ+』や『あさチャン!』等を担当。2019年4月からフリーに。著書に『風をたべる』(集英社)・『宇垣美里のコスメ愛』(小学館)・『愛しのショコラ』(KADOKAWA)。近著に『風をたべる2』(集英社)。


キャプチャ  2023年5月4・11日号掲載

テーマ : 漫画
ジャンル : アニメ・コミック

【石井聡の「政界ナナメ読み」】(13) “必勝しゃもじ論争”が映す平和ボケ

「侵略者に対しては、必要とあらば戦う用意があることを示す。平和を実現する最善の方法として、時には軍事力を行使することも吝かではない」――。エストニアのカヤ・カラス首相が先月、『ニューヨークタイムズ』に寄せたエッセイにこうある。エストニアは人口約130万人のバルト三国の一つ。侵略者と想定するのは、人口で100倍以上、面積では約400倍に及ぶ巨大な強権国家だ。ロシアによるウクライナ侵略を目の当たりにしたカラス氏は、『北大西洋条約機構(NATO)』のバルト三国への師団規模の駐留を求める。然もなくば、エストニアが地図から消えてしまうと案じるからだ。この言葉を知った頃、日本では国会で“しゃもじ論争”が重ねられていた。岸田文雄首相がウクライナを訪問した際に、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領への手土産として持参した宮島産の大型しゃもじである。簡単に経過を振り返る。本紙が先月23日昼、首相一行がポーランドで乗車した列車に積み込んだ『うまい棒』の段ボール箱の中身は何かを追跡し、岸田首相が署名と共に“必勝”と記したしゃもじだったという電子版記事を配信。その日の午後には、松野博一官房長官がしゃもじと“折り鶴をモチーフにしたランプ”を贈呈したことを公表した。すると、翌24日の参議院予算委員会で立憲民主党の石垣のり子氏が「必勝というのは不適切だ」と批判し、同党の泉健太代表も「戦争中の緊迫した国家の元首に必勝しゃもじを贈るのは違和感が拭えない」と続けた。維新の馬場伸幸代表も「ノーセンス」「お気楽過ぎるんじゃないか」等と批判した。

これに対し岸田首相は、「祖国や自由を守る為に戦うウクライナの人々の努力に敬意を表するもの」と説明した。日本の各種選挙で“祈必勝”と揮毫された色紙が飛び交うのは見慣れた風景で、ドメスティックな習慣から手土産が考案されたのは確かだ。しゃもじが持つ“敵を召し(※飯)取る”との意味が、外国に上手く伝わるかという疑問もある。だが、受け取ったウクライナ側は駐日大使、在日大使館のコメントを通じて歓迎し、謝意を示した。懸念は無用だろう。問題は、しゃもじ批判の背景に“伝えるべきは平和”といった平板な和平論が見て取れることにある。ロシアの侵攻当初は、即時停戦を求める国際世論が強かった。その後、ウクライナ側の善戦で戦争は長期化しているものの、ロシアが不当に侵略し、支配地域を残す現状は変わらない。その固定化に繋がりかねない停戦や和平交渉を、ゼレンスキー大統領は望まない。“プーチンの戦争”を許さない欧米の国々にも、ウクライナの立場への支持が広がった。現実とずれた和平論が立法府で容易く語られるのは、やはり“遠くの出来事”としか事態を見ていないからではないのか。因みに、予算委質疑は“しゃもじ一色”だったわけではない。日本企業がロシアで事業を継続し、多額の納税を行なう是非を正す別の立憲民主議員もいた。大勢の子供をウクライナから連れ去る等のロシアの戦争犯罪が指摘されている。日本では新たな非難決議や制裁を求める動きはみられない。侵略者を許さず、若し侵入したら徹底して追い出す。そうしなければ侵略者は居座る。領土問題を抱える日本がその教訓を忘れているなら、由々しき兆候である。 (本紙特別記者 石井聡)


キャプチャ  2023年4月7日付掲載

テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

【ソビエト連邦崩壊と今】(06) 中露、カザフスタンを“共謀の舞台”に



20230526 15
「暴徒には警告なしに発砲するよう、治安部隊に命令した」――。ロシアと中国の狭間にある旧ソビエト連邦、中央アジアの資源大国であるカザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領(68)は、この一言で“恐怖政権の新指導者”として国際デビューを果たした。ソ連崩壊に伴う建国30年という年明けから突如、世界の耳目を集めたカザフスタン全土の反政府騒乱。トカエフ氏は、これを制圧して「国内の権力闘争に勝利した」とされるが、「決定的役割を果たしたのはカザフスタンに軍を急派したロシアのウラジーミル・プーチン大統領だった」と現地の消息筋は指摘する。カザフスタンを巨大経済圏構想『一帯一路』の要衝と位置付ける中国も、プーチン氏の部隊派遣を強く支持した。軍事同盟宛らに連携を強める中露両国は、中央アジア最大の国カザフスタンに「共謀と共闘の舞台を広げた」(同)ように見える。カザフスタンではソ連崩壊による独立から27年余り、ヌルスルタン・ナザルバエフ氏(81)が大統領の座にあった。同氏は2019年に大統領職をトカエフ氏に譲り、自らは終身の国家安全保障会議議長として院政を敷いた。今回の騒乱は「トカエフ氏追い落としに民衆を巻き込んだクーデター」とみられ、これに気付いたトカエフ氏が反撃に出たと消息筋は分析する。その証左に、ナザルバエフ氏の安保会議議長ポストはトカエフ氏が襲った。ナザルバエフ氏の最側近で“トカエフ大統領の監視”が主任務だったというカリム・マシモフ国家保安委員会(※ソ連時代のKGBに相当)議長は解任され、“国家反逆罪”の容疑で拘束された。

消息筋によると、トカエフ氏は騒乱が発生するや真っ先にプーチン氏に緊急電話して、軍の派遣を懇請。プーチン氏はベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領に電話を入れ、即座にロシア軍を主体とする『集団安全保障条約機構(CSTO)』の2500人規模の平和維持部隊急派を決めた。プーチン氏は2005年春、同じ中央アジアのキルギスで議会選の不正に民衆が立ち上がった『チューリップ革命』や、2020年秋のナゴルノカラバフ自治州を巡るアルメニアとアゼルバイジャンの紛争では、加盟国にCSTOの部隊を送ることがなかった。カザフスタンには何故、同盟軍を派遣したのか。実際の作戦任務でCSTO軍が出動したのは初めてのことだ。消息筋は、こう解説する。「全方位外交が国是のカザフスタンだが、唯一の同盟国扱いはロシアだけで、重要度はナンバーワンだ。中国、アメリカ、EUは“パートナー”に過ぎない。プーチン氏にすれば、キルギスでの革命は兎も角、安全保障と国益の面で死活的に重要なカザフスタンでは、ウクライナで2004年に親露政権を倒したオレンジ革命のような、いわゆるカラー革命は絶対に許せない」。他国から攻撃されたのではなく、カザフスタン国内で民衆が表向きは燃料値上げに反対して起こした騒乱に、CSTO軍が出動した。部隊出動の根拠に、アメリカのジョー・バイデン政権は疑問を呈した。日本在住のウクライナ人国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏は「ソ連軍が主力のワルシャワ条約機構軍が1968年8月、チェコスロバキアに侵攻して民主化運動“プラハの春”を戦車で蹂躙した弾圧を彷彿させる」と語る。チェコ侵攻の暴挙に無理矢理理屈付けしたのが、「社会主義圏全体の利益は一つの社会主義国の利益に優先する」としたブレジネフドクトリン(※制限主権論)だ。CSTO軍派遣の根拠は、旧ソ連勢力圏の死守に血眼になっているロシアの“プーチンドクトリン”といったところか。「今回わかったのは、ウズベキスタンの独裁者であるイスラム・カリモフ氏が2016年に死去した際の権力闘争を含め、中央アジアの揉め事の解決で頼りになるのはプーチン氏だけという現実だ」と消息筋は断言する。トカエフ氏は中露双方と太いパイプを持つ。ソ連時代、スパイ養成機関としても知られるモスクワ国際関係大学で中国語を学び、ソ連の外交官となって北京に語学留学した後、1991年のソ連崩壊まで約7年間、北京のソ連大使館に勤務した。1994年以来、二度の計10年に亘って外務大臣を務め、とりわけ中露との幅広い人脈づくりに励んだとされる。プーチン氏にとって、これまではナザルバエフ氏という独裁の大先輩の存在があった。1歳年下で今回の騒乱で大きな貸しをつくったトカエフ政権には、遥かに自由な物言いができる。現在、毎日のようにプーチン氏に電話して指示を仰ぐというトカエフ氏は、その言い回しまでプーチン氏に似てきた。カザフ騒乱始め、旧ソ連各国の反政権運動は「外国勢力の影響を受けたテロリスト」の仕業で「外国で訓練を受けた」等だ。「武力鎮圧はテロリストの完全排除まで続ける」は、プーチン氏がチェチェン戦争に絡んで吐いた「テロリストは便所にいても捕まえてぶっ殺してやる。それで問題は終わりだ」を想起させる。「警告なしに発砲」も、後ろ盾にプーチン氏がいたからこその発言だとグレンコ氏は指摘する。現在、ジェノサイド(※民族大量虐殺)で世界の指弾を浴びる中国の新疆ウイグル自治区は、カザフスタンと1700㎞もの国境で隣接する。中国は1991年12月25日のソ連崩壊から実に2週間足らずで、カザフスタン始め中央アジア5ヵ国全てと電撃的に国交を樹立した。新たな独立国との国境画定が主目的だったが、中央アジアの民族主義や民主化の波が、ウイグルやチベット、内モンゴルの分離・独立運動に影響するのを懸念したことも、関係構築を急いだ理由だった。その懸念が初めて現実味を帯びたのが、今回の騒乱だ。

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テーマ : 国際政治
ジャンル : 政治・経済

【国防解体新書】(04) 自衛隊斯く戦う…秘められた“軍事戦略”



自衛隊には秘められた“軍事戦略”がある。10年前に策定した『統合戦略指針』だ。陸海空3自衛隊が統合運用で一体となり、どのように戦うのかを初めて提示した。中国との有事を中心に想定した指針だが、位置付けが曖昧で、金庫の中で眠り続けている。統合戦略指針は、自衛隊と中国軍の現有戦力を照らし合わせた。将来も見据えた自衛隊の戦い方を検証し、態勢や装備で何が足りないのか導き出す為だ。その為に具体的な対中有事シナリオを例示した。シナリオは3つある。

①尖閣奪取
中国公船が尖閣諸島(※沖縄県石垣市)周辺で領海侵入を繰り返す中、偶発を装って意図的に海上保安庁の巡視船と衝突した。それをきっかけに、中国は公船を大挙して送り込んでくる。前進待機していた中国海軍艦艇も展開する。空母『遼寧』も近付き、威圧する。海保の巡視船は退かざるを得ない。海保の増援船艇や海上自衛隊の艦艇が着く前に、中国軍は空挺部隊と水陸両用車を尖閣に上陸させた。偶発を装った意図的な衝突から、一気に尖閣を奪取するシナリオだ。
②離島侵攻
尖閣だけではなく、中国が沖縄の有人離島の宮古島や石垣島に侵攻するシナリオも想定した。中国は海軍艦艇を集結させ、離島の周辺海域を封鎖する。戦闘機と爆撃機も飛来する。宮古島にある航空自衛隊のレーダーサイトをミサイル攻撃し、日本の防空の目を無力化した。特殊部隊を潜入させ、宮古島と石垣島の空港を占拠する。空港を奪えば、自衛隊は増援部隊や装備・物資を輸送する拠点を失う。
③台湾侵攻
シナリオは中国の台湾侵攻にも踏み込んだ。アメリカ軍の介入を阻むという中国の究極の狙いを反映させる為だ。台湾侵攻は海上封鎖や戦闘機とミサイルによる攻撃、特殊部隊や水陸両用の上陸作戦になる。地上配備の対艦弾道ミサイルは、接近してくるアメリカ空母を攻撃する。爆撃機も西太平洋全域でアメリカ空母を威嚇する。

これが統合戦略指針が示した有事シナリオだ。自衛隊幹部は、「10年前に作った3つのシナリオは今こそ起きる危険性が高まっている」と話す。先見の明があったということだ。政府高官も指摘する。「尖閣にせよ、台湾にせよ、どちらの事態が先に起きても、宮古島や石垣島を含めて一体の戦域になる」。3つの有事シナリオは同時か波及して起きる恐れが強い。

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テーマ : 軍事・安全保障・国防・戦争
ジャンル : 政治・経済

【日本の領土を考える】(05) 江戸川乱歩と南洋ブーム

20230526 13
探偵小説の巨匠、江戸川乱歩(※1894-1965)が描く物語の世界は怖い。心底怖い。『芋虫』(※昭和4年)は、戦争で食欲と性欲以外、殆どの機能を失った夫の介護をする妻が“完全なる支配者”になるべく、唯一残った夫の目を潰してしまう。『人でなしの恋』(※大正15年)は、愛する人形を妻に壊された夫が人形と“心中”する結末がショッキングだ。他にも、『人間椅子』・『屋根裏の散歩者』・『陰獣』等、タイトルからして怖い。淫靡で、怪奇的で、背徳感漂うテイストの物語を借りて、乱歩は人間の秘められた欲望や業を、容赦なくあぶり出してゆく。そんな乱歩が、南洋を舞台にした冒険小説を書いている。対英米戦開戦目前の昭和15(1940)年から、児童向け雑誌『少年倶楽部』で連載を始めた『新宝島』だ。南洋の島に漂流した3人の少年が、勇気と知恵で、あらゆる困難に立ち向かう物語である。そこに登場するのは、大海の孤島であり、椰子の実やパンの木、海賊や難破船であり、恐ろしい猛獣や大蛇、人喰い人種(の気配)である。それらが当時、内地(=日本)から見た南洋のイメージだったのだろう。いやいや、昭和35年生まれの私が少年時代に胸を躍らせて見た、怪獣映画やテレビ等で描かれた南洋だってそう変わりはない。未知の世界におけるワクワク、ドキドキの冒険譚、夢とロマンとスペクタクル――。南洋には、そんな神秘的な印象が付き纏う。尤も、『新宝島』単行本の序(※昭和17年6月)によれば、乱歩が意図したのは、漂流者のサバイバル生活を描いたロビンソン・クルーソーのような物語だったのだが――。それはさておき、同じ『少年倶楽部』に連載され、人気を博した漫画(※絵物語)『冒険ダン吉』(※島田啓三作)は、昭和8年から始まっている(※昭和14年まで)。やはり、舞台は南洋だ。

本紙に平成23年に連載された『“冒険ダン吉”になった男 森小弁』(※著・将口泰浩)は、明治中期にミクロネシアに渡り、様々な事業や学校建設等で同地の近代化に尽くした森小弁(※1869-1945)の波乱の生涯を描いた、事実に基づく小説だ。森は『冒険ダン吉』のモデルとされている。単行本のプロローグで、将口はこう書いた。〈…勇敢で賢いダン吉は原住民の信頼を得て酋長となり、病院や小学校、鉄道、日の丸神社を作り、キリンの戦車にまたがり、海賊とも戦った。当時、トラックやパラオなどの南洋群島は日本の委任統治領であり、南進論の高まりとともに日本人の目が南に向けられていたという時代背景もあり、人気を集めた〉。乱歩は、後に代表作となる名探偵の明智小五郎と怪人二十面相が対決するシリーズの第1作『怪人二十面相』(※昭和11年)にも南洋を登場させている。失踪し、10年ぶりにボルネオ島から帰国した富豪の長男が二十面相の変装だった、という設定だ。実は乱歩には、早稲田大学卒業後の大正5年に大阪の貿易商社に勤め、南洋との取引に従事した経験がある。僅か約1年で辞めてしまったが、その経験を小説の舞台設定として借りたのだろう。“南進論”の高まりと共に日本の社会に巻き起こった南洋ブームは、森小弁が海を渡った明治以降、何度も起きている。仕事や移住先を求め、資源や交易先を探し、更には国の安全保障の為に、日本人は南へ南へと向かう。第一次世界大戦(※1914~1918年)後に、ミクロネシアの南洋群島を『国際連盟』の委任統治領とした大正期以降、南へ向けられる視線は更に熱量を増し、昭和のブームへと繋がっていく。『新宝島』や『冒険ダン吉』等の物語は昭和のブームを背景とし、ブームを再生産する役割を担った。多くの子供達が、未だ見ぬ夢のような世界での冒険譚に胸を躍らせたであろう。彼らが成人した時、南を目指す動機付けとなったかもしれない。昭和の南洋ブームは、戦争の足音と共に不即不離の関係となってゆく。乱歩が『新宝島』の連載を始めた昭和15年7月、第二次近衛文麿(※1891-1945)内閣が発足。国家的な南進策へと舵が切られる。従来、海軍主導だった南進論に、伝統的に北進論中心だった陸軍も“乗った”のだ。創作者にとってそれは、窮屈な思いを余儀なくされることにもなった。実は、昭和15年の乱歩は『新宝島』以外の作品を全く書いていない。日中戦争以降、娯楽性の強い探偵小説が書けなくなり、冒頭に紹介した『芋虫』に至っては“反戦小説”として発禁処分にされてしまったからである。乱歩は、前出の『新宝島』の序でこう書いた。〈この物語は、大東亜戦争勃発以前、昭和15年度に執筆したものであるが、当時既に我々の南方諸島への関心は日に日に高まりつつあったので、その心持が、物語の舞台を南洋に選ばせたものであろう…〉。序を書いた昭和17年6月といえば、開戦から連戦連勝を続け、南進を続けていた日本軍がミッドウェー海戦で空母4隻を失う大敗を喫し、アメリカ軍に反転攻勢を許すきっかけとなった時期と重なっている。但し、それは後にわかることだ。南方作戦を展開する日本軍は、更に南の蘭印(※インドネシア)やパプアニューギニア(※オーストラリアの信託統治領)、ビルマ(※ミャンマー)等にまで駒を進め、軈て泥沼化してゆく。『新宝島』では、少年達が大量の金を産する原住民の村に辿り着く物語が描かれている。アメリカから石油等の輸入を止められた日本は、南に資源を求める他なかった。『新宝島』は単なる少年向けの冒険譚でない。当時の国際情勢や世相を見事に反映させた“一味違う”秀作と見るべきだろう。 《敬称略》 (編集委員 喜多由浩)


キャプチャ  2022年6月8日付掲載

テーマ : 歴史
ジャンル : 政治・経済

【日朝文化史のリアル】(25) 永田絃次郎の帰郷(中)…明かされない日本人妻の行方

20230526 12
在日2世の音楽プロデューサー、李喆雨(83)がテノール歌手の永田絃次郎(※1909-1985、朝鮮名は金永吉)の死を知ったのは1985年8月19日、北朝鮮の首都・平壌でのことである。李はその前日、『朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)』時代から世話になっている北朝鮮文化芸術担当大臣の張徹(※後に副首相等を歴任)と面会の約束があったのだが、突然、理由も告げられないままキャンセルされてしまう。実は、更に1日前の17日、永田が肺結核で亡くなっていた(※享年75)。ドタキャン翌日に改めて張に会った李は、その事実を密かに打ち明けられる。「金永吉先生(=永田)が亡くなった。昨日は葬式だったんだ」。李は心底驚いた。永田が昭和35(1960)年1月、北朝鮮への帰国事業に一家6人で参加して海を渡ったのは、本連載の前回で書いた通りである。以来、数年は“永田の活躍”が日本にも伝わってきたものの、その後はさっぱり消息が途絶え、生死さえ不明だったからだ。北朝鮮で永田が厳しい立場に追いこまれていたらしいことは、日本にも伝わっていた。その理由の中には、永田の7歳下の日本人妻、北川民子に関する噂があった。曰く、北朝鮮の最高権力者である金日成と永田と一緒に面会した時、「日本への里帰りを直訴して怒りを買ったのだ」といった類の話である。何れにせよ、永田の死は軽々に口にできない。公になっていないからだ。この国(※北朝鮮)では公にされていないことに触れてはならないし、公にできないことには必ず理由がある――。張が李に話してくれたのは、特別に親しかったからであろう。

北朝鮮で永田の死が公にされるのは、その時から実に18年後、2003年のことであった。北へ渡った時、既に50代になっていた永田は、時を惜しむかのように歌の仕事へ打ち込む。ソビエト連邦(※当時)や東欧等東側諸国への海外公演にも出かけ、1962年の中国公演では首相の周恩来が永田を“東洋のカルーソ(※イタリアの歌劇王)”と絶賛。華々しい活躍は北のメディアによって逐一伝えられた。但し、“快進撃”も2~3年までだった。次第に、永田は北での音楽活動に不満を募らせてゆく。公演の選曲さえも、朝鮮労働党芸術部門の幹部の了解なしには決められない。オペラのアリア(※独唱)等が得意な永田にとって、党側から押し付けられたような革命歌や、“首領さま”を称える歌など歌いたくはなかったであろう。1960年代後半以降、表舞台から消えた永田は持病の悪化による療養生活や、後進の指導や歌の創作といった“後方の仕事”に回される。その名はすっかり忘れ去られた。李喆雨が再び永田の名を耳にしたのは、張徹からこっそり死を打ち明けられた数年後、1990年代初めだった、と記憶している。それは意外な形だった。きっかけは、北朝鮮の二代目最高権力者のポジションを約束された金正日の誕生日からとった『2.16芸術賞』のピアノ部門で、地方出身の無名の少女ピアニストが優勝した、という報道だった。“何でも平壌優先”のこの国にあって、地方出身の音楽家が、このような大きな賞を勝ち取るケースは珍しい。「一体、誰の弟子なのか?」という噂が広がり、辿っていくと、この少女を指導しているのは永田の長女、和美(※昭和14年生まれ)だとわかったのである。20代になったばかりで両親や弟妹と帰国事業に参加した和美は、日本時代から学んでいたピアノを生かし、北朝鮮の音大に進む。報道があった時は、平壌近郊の都市の音大で副教授の地位に就いていた。その報道によって、北朝鮮の音楽関係者は数十年ぶりに永田の名を耳にすることになったのである。李喆雨が伝手を辿って和美に会うことができたのは、報道の後だった。聞きたいことはいっぱいある。永田の死の状況や“空白の期間”の動向。何よりも噂になった母親(※民子)の消息である。和美は事前に用意していた直筆のメモを李に渡した。そこには、父親(※永田)の帰国直後の華々しい活躍や、自身や他の3人の子供は何れも有名大を出て音楽家や教員として幸せに暮らしていることが書かれている。謂わば“公式見解”であろう。但し、母親のことだけは一切、書かれていなかった。案内員が席を外した隙に李が尋ねてみたが、和美は「(母のことは)今は言えません」と口を噤んだ。2時間近くに及んだ面会は結局、“当たり障りのない世間話”に終始したという。時は更に飛んで2003年、永田の死が公になった時である。それは、北朝鮮の音楽雑誌に載った記事――金正日が永田の長女、和美から送られた“お礼の手紙”に応える――の形で明らかにされた。何故、和美が“お礼”をしたのか? それは、その5年前(※1998年)に、永田の弟子の歌手が国際コンクールで優勝した際に金正日が接見し、“永田の想い出”を語ったことへのお礼であった。何と“回りくどい”ことか。実は、自身の誕生日を記念した賞を永田の長女の弟子が受賞したことにこそ、この“回りくどい”仕掛けを解くカギはあるのだろう。北朝鮮ほど、メンツや外聞を気にする国はない。北朝鮮で最高権力者(※金正日)が態々故人に言及したということは、嘗て厳しい立場に追い込まれた者の“名誉回復”が図られたことを意味している。賞の受賞者の関係者(※永田)の行方もよくわからないままでは具合が悪い。立場を明らかにしておく必要がある――。金正日の周辺がそう考えたからではなかったか。つまり、“少女の優勝”がなければ、今も永田の死は公にならなかったままだった可能性は強い。或いは、金正日が本当に永田の素晴らしい歌声を突然、思い出したのかもしれないが――。それでもなお、日本人妻の民子には未だ“触れない”のだ。一体、どんな“罪”に問われたというのだろうか? 永田の死が公になってからもう20年近い、というのに。 《敬称略》 (編集委員 喜多由浩)


キャプチャ  2022年7月13日付掲載

テーマ : 北朝鮮問題
ジャンル : 政治・経済

【部活動が危ない!】番外編(10) 「育成、地域と共に」――吉永一明さん(アルビレックス新潟シンガポール監督)インタビュー

部活動か、クラブチームか――。サッカーでは、この2つのカテゴリーがよく比較される。Jリーグが全クラブに育成組織の保有を義務付けている為、部活動ではなく、クラブの下部組織を選択する選手も多い。一種の地域移行の先行事例とも言える。育成年代の指導に長く携わる『アルビレックス新潟シンガポール』の吉永一明監督(54)は、高校、Jクラブ下部組織の両方で監督を務めた。其々のメリットや、部活動が地域移行されることについての考えを聞いた。 (聞き手/西部本社報道部運動グループ 丹下友紀子)

20230526 11
――山梨学院大学付属高校(※現在の山梨学院高校)では、保健体育科の教諭、サッカー部の顧問、寮の責任者で24時間、生徒と一緒でした。
「学校活動の一環の部活は、人間教育が謳われます。山梨学院大付高には多い時に、120人程の選手が在籍しました。人が増えれば考える量も増えます。生徒を預かる立場として、寮生活では、夜に何かがあっては嫌だという思いが消えず、熟睡した感覚がありませんでした。激務というよりはナーバスになり、眠りが浅く、ピッチの上で一瞬記憶が飛んでいるようなこともありました」
――2013年には苛め問題が起き、活動停止処分も受けました。その際には監視体制を強化するのではなく、選手の自立を促しました。
「先輩、後輩の力関係は、僕が行く前から問題でした。そういう人間関係をなくす為に監督として構えるのではなく、彼らの中に飛び込み、同じ目線で話を聞く関係を築いてきたつもりでした。しかし、問題が起きたということは、やってきたことが上手く伝えきれていなかったということです。一人の人間として接することを、より大事にしました」
――Jクラブのユースチームと部活動の違いは?
「Jクラブには皆、トップチーム昇格を目的に来ており、目標は同じです。(サッカーを)やっていく中で力の差が出て、(選手によっては)大学進学等方向性が変わります。違いがあってもいい、ということを大事にしていました。また、福岡でユースの監督をやった時は、何かあれば学校から電話がかかってきたり、学校へ行ったりと連携を深めました。学校にいるかいないかの違いで、情報共有はしていました。ユースの選手は、学校、家、クラブと3つの場所を動いています。そこにいる大人が同じ目線で選手を見守ることが重要です」
――高校、ユース、其々の良さや課題は?
「Jクラブでは少人数にエリート教育が施される為、手厚い指導が受けられます。しかし、やり方次第では選手の自立を妨げ、選手が狭い世界で育つ危険性があります。クラブ以外の世界を知る機会を与え、育てないといけません。高校は大人数で切磋琢磨する環境があり、サッカー以外のことも教えてもらえます。関わる大人の数が多く、沢山の学びを得られます。反対に、埋もれてしまう可能性もあります。システムとして、例えば今年は高校の部活でプレーするが、プロの試合に出られるレベルまで成長すれば、翌年はJクラブのユースに入り、トップチームの試合に出るというように、選手側がプレーする場所を選べる仕組みができればいいですね。そうなれば、指導者も努力するようになります。それくらいの改革が必要です」
――部活動の地域移行については、どう思いますか?
「物理的に地域へではなく、地域と共に子供達を育てるということが大事です。子供の頃にどれだけの大人と関わるかは、その子の将来に大きな影響を与えます。地域移行は指導を丸投げしてしまうイメージもありますが、子供達を一緒にサポートして大人にしていくことが目的としてあるべきです」
――地域移行では、教員と同じ教育的効果を求めることが難しくなります。
「地域の指導者は教員ではありませんので、どこまで介入できるかという問題は出てきます。学校側の人間も活動には必要です。日本にはクラブチームがどの地域にもあります。その指導者が上手く関われれば、指導者の働く場所が増えます。若い指導者も増えています。彼らの活動する場所が確保できるという可能性も秘めている。どう募集し、採用するか、どこまで任せるかは選ぶ側の責任。難しい問題が出てくるかもしれませんね」
――シンガポールの部活動の現状は?
「学校での部活動もありますが、体育の授業の一環のような雰囲気です。もっとやりたいと思う子はクラブに入ります。だが、“プロになりたい”という本気度は日本に比べると低い。シンガポールでは18歳から兵役義務があり、サッカーができない時期があります。一概に比較はできません」
――指導で大切にしてきたことは?
「サッカーを介して何を学ぶか、それをどう将来に繋げていくのかを心がけていました。人を扱うので、大変で当たり前です。人として尊重し、理解しながら、こちらのことも理解してもらわないといけません。僕のところで成功せずとも、その後に活躍したり、他の場所で輝いてくれたりする姿を見てよかったなと感じます」


キャプチャ  2022年6月15日付掲載

テーマ : 部活
ジャンル : 学校・教育

【気候変動のリアル】(14) 「“損失と被害”への資金支援が焦点」――田村堅太郎氏(『地球環境戦略研究機関』上席研究員)インタビュー

気候危機への対応を議論する国連の会議が今月6日、エジプトで開幕した。地球温暖化の影響が指摘される気象災害が頻発する中、対策強化は進むのか。気候変動の国際交渉に詳しい『地球環境戦略研究機関』の田村堅太郎上席研究員に、会議の注目点等について聞いた。 (聞き手/くらし科学環境部 大場あい・岡田英)

20230526 10
――今年2月にロシアによるウクライナ侵攻が始まり、エネルギーの脱ロシア化を進める中で化石燃料回帰の動きがあります。世界の温暖化対策への影響をどう見ていますか?
「ドイツが二酸化炭素(※CO2)排出量の多い石炭火力発電の稼働を増やすことを決める等、これまで世界の対策を牽引してきた欧州の動きを受けて、脱炭素の道筋は破綻した等と指摘する声もあります。だが、欧州各国の対応は、あくまでこの冬の電力不足に対する短期的な措置で、中長期的に大きな影響があるとは考えていません。ドイツのオラフ・ショルツ政権は石炭火力の全廃時期を従来の2038年から2030年へ前倒しし、ウクライナ危機後もその方針は変えていません。イギリスも“2024年全廃”の計画のままです。寧ろ再生可能エネルギーを拡大する等して脱炭素化を加速することで、ロシアへの化石燃料の依存を減らしていこうとしています。新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済活動の停滞で、2020年の世界全体のCO2排出量は2019年より減りましたが、2021年は増加に転じて過去最高になりました。世界最大の排出国である中国や3位のインドで石炭火力が増えたのが主な要因ですが、両国は今、再生エネを物凄い勢いで導入しています。中国は2030年より前に排出量を頭打ちさせる目標を掲げていますが、欧米のシンクタンクはもっと早く、2025年過ぎには減少に転じると分析しています。一時的であっても排出増加は懸念すべきことですが、世界の脱炭素化の流れは覆ってはいません」
――エジプトのシャルムエルシェイクで『国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)』が開催されています。何が焦点ですか?
「昨年、イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26では、産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑えることを事実上の世界共通目標にし、石炭火力の段階的削減で合意しました。COP27では“1.5℃”実現に向けて、実際に温室効果ガス排出削減を加速させる作業計画策定を目指します。もう一つの大きなテーマが、温暖化が影響している気象災害等によって既に生じている“損失と被害”に対する資金支援です。国連の会議ではここ数年注目されてきましたが、今回は温暖化の影響を受け易い国が多いアフリカでの開催でもあり、議長国のエジプトも力を入れています。“損失と被害”が焦点になるのは、今夏のパキスタンの大洪水、東アフリカの干魃等、大変な被害が顕在化してきているからでしょう。国際交渉の議題になるのは当然だと思います。但し、このテーマは政治的に非常に難しい問題です。途上国、特に海面上昇等の影響を受けている島国にとっては、何らかの資金支援を受ける仕組みに合意することが悲願ですが、先進国はずっと反対してきました。温室効果ガスを排出してきた“責任”と、その被害に対する“補償”という文脈の中で議論されることが多かったからです。過去の責任や補償と結び付けて議論すれば、先進国、特にアメリカは受け入れられません。“過去”の問題ではなく、“将来の被害を減らす為に頑張っていこう”という方向で妥協点を探っていくことになるのではないでしょうか」
――今年8月のG20環境・気候相会合では、ウクライナ侵攻に対する表現を巡って意見が纏まらず、共同声明の採択が見送られました。COP27でも、COP26の合意から後退する等、影響があるでしょうか?
「COP26での合意より後退することは、島国等には絶対に受け入れられません。大きく前進するのは難しいかもしれませんが、全会一致で採択した内容を覆すことは考えられません。G20は排出量の多い国の集まりですが、国連の会議には排出量が少ないのに悪影響を受け易い後発の途上国等が参加し、その声も影響力を持つ。そこが国連の会議とG20等との大きな違いです」
――世界全体での脱炭素化に向けて、日本がすべきことは?
「岸田文雄首相はCOP26で、アジアを中心にクリーンエネルギーへの移行を推進し、脱炭素社会をつくり上げるとし、化石燃料による火力発電をアンモニア、水素等のゼロエミッション火力に転換すると表明しました。一つの方法ではあるのかもしれませんが、水素やアンモニアは未だコストも高く、特に発電部門での脱炭素化に貢献するかは疑問を呈する意見があります。脱炭素実現に向け、再生エネ導入や電気自動車(※EV)への移行が進み、海外の知人から『何故日本が再生エネ技術等をリードしないのか?』と不思議がられることが多いです。残念ながら、今の標準的な再生エネ技術では中国等に価格競争で負けてしまうが、日本が強みを持つ技術はまだまだあります。ヒートポンプ等の省エネ技術は欧州等で需要が増しています。また、世界で開発競争が激化している次世代太陽電池“ペロブスカイト太陽電池”は日本発の技術です。ペロブスカイト太陽電池で世界の市場を席巻しようとするならば、今が勝負時です。これまでの再生エネ技術と同じようなことにならないよう、政府がしっかりサポートし、企業が大規模な投資を安心してできるような環境作りをしていく必要があります」


キャプチャ  2022年11月8日付掲載

テーマ : 環境・資源・エネルギー
ジャンル : 政治・経済

【WEEKEND PLUS】(360) ノルウェーがサーモン養殖に巨額課税か…世界的な価格高騰の恐れも

20230526 09
ノルウェー政府が、サケやマスの養殖業者の利益に対して35%の資源賃貸税を導入することを計画している。法人税は22%なので、合計すると57%に上る。ノルウェーは養殖サケの世界シェアの半分程度を占めており、業者が利益を確保しようとすれば価格が高騰しかねない。ヨーナス=ガール・ストーレ首相は3月28日、「我々に共通の自然資源を使用して創出された価値が社会に還元されるべきだという発想は、我が国の伝統である」と述べた。報道によると税の対象は大規模事業者で、全体の3分の2を占める中小規模事業者は課税対象から除外される方向だという。税収は、社会福祉、ウクライナ難民の受け入れ、家庭の電気料金支払い支援等に充当される見込みだ。


キャプチャ  2023年5月号掲載

テーマ : 食に関するニュース
ジャンル : ニュース

【ときめきは前触れもなく】(172) 自由あってこその“子供”

https://dot.asahi.com/wa/2023051700058.html?page=1


キャプチャ  2023年5月26日号掲載

テーマ : 生き方
ジャンル : ライフ

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George Clooney

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